授業中座っていられる? 話を聞ける? 発達特性のある子の、後悔しない就学準備【「こども発達LABO.」にしむら夫妻に聞く!前編】

YouTubeでユーモアのあるかぶりものをして発信されている「こども発達LABO.」の西村ご夫妻。専門家としての豊富な知識をさまざまなアプローチで、子ども・保護者・支援者を幅広くサポートしています。
今回は、就学を前に家庭でできるフォローについてアドバイスをいただきました。あと半年で何ができますか? 西村ご夫妻、教えてください!

焦らなくても大丈夫です!まずは慣れること

就学前は、特にお子さんに関して何かと心配になることが増えるものです。自治体の相談会などもありますので、就学までの進路決定の流れや進路先の選択肢の詳細について調べておくと安心です。

また、お子さんが通う予定の学校見学の際は、支援級の雰囲気や、加配の先生方がいらっしゃるのかなど、環境面でどのようなフォローがあるのかを確認しておきましょう。

他にも「授業中座っていられるかな?」「給食は食べられるかな?」「お友達と仲良くできるのかな?」…いろいろな心配があると思いますが、まずはお子さんが安心して通えるところだと教えてあげることが大切です。入学する前から、通学路を一緒に歩いて学校まで行ってみたりするといいと思います。

お散歩がてら通学路を歩いて慣れておくと◎

可能ならば、校長先生や保健室の先生など、実際にそこにいらっしゃる先生にお会いする機会をなるべく増やしておくなども有効です。学校にお子さんのことをよく知ってくださる先生=味方がいることは、とても心強いことです。

特性を一覧表に!簡単なもので更新しやすい  がポイント

お父さん、お母さんがこれまで子育てをしてきた中で見えてきた、お子さんの特徴・特性について、学校の先生にも知ってもらえるような資料を作ってみましょう。

自治体によってはホームページからお子さんの特性をまとめることができる「サポートブック」をダウンロードできますが、場合によっては果てしなく長い資料になってしまうこともあります。お忙しい現場の先生方には、詳しく書かれた長い資料よりも、特性をまとめた一覧表のほうがありがたいというお話を伺ったことがあります。一覧表にまとめることで、お父さん、お母さん自身が、お子さんの特徴について新たな気づきも出てくることもありますので、ぜひ作ってみてください。

<例>

●耳からの情報処理が苦手で一斉指示が通りにくい
●忘れ物・なくし物が多い
●集中力が続かずボーッとしてしまいがち
●手先に不器用さが見られ、箸使いがまだ上手ではない

低学年のお子さんは、担任の先生がどう子どもと関わっているかをよく観察しています。担任の先生が特性に添ったサポートをすることで、お友達関係もスムーズになります。

この特性をまとめた一覧表は、学校だけでなく習い事や通院するときなどにも使うことができます。気合を入れて詳しい資料を作るよりも、簡単で見やすいものを最新に更新していくほうが理想です。お子さんの成長に合わせて更新していけるものを作ってみましょう。

続いて、「こども発達LABO.」に寄せられる具体的な、就学前のお悩みについてお話を伺っていきたいと思います。

「座っていられる」ことは遊びでトレーニングできます!

Q:授業中に座っていられるようになる方法はありますか?

A:座っていられない原因を探って。「座って」楽しいことを

小学校での授業はだいたい45分間。その間、「座っていられるか」は、たくさんの親御さんが心配されるお悩みです。

前の取材でもお話ししましたが、座っていられない子に関しては、まずは、なぜ座っていられないのが、その原因をみつけてあげることが最優先です。座っているよりも動いているほうが落ち着くのか、座るための持久力が低いのかよくお子さんを観察してあげてください

持久力が低い場合は、トレーニングが必要になります。おすすめは公園です。全く関係ないように思えますが、公園の遊具を満遍なく使って遊ぶのも持久力トレーニングになります。

例えば、滑り台を滑るときは姿勢を維持して滑ります。これを繰り返すことで、持久力が鍛えられていくのです。ポイントは、低負荷で長く続けること。座る=体幹のイメージがあり、体操教室で体幹トレーニングをすることが最短のように感じるかもしれませんが、公園遊びでも十分鍛えられます。できる限り、お子さんと一緒に小一時間ほど公園の遊具で遊ぶことを続けてみましょう。

遊具でたくさん遊ぶことで体幹や持久力の向上を

もちろん、室内でも持久力は鍛えられます。まずやることは、体にあった椅子とテーブルを準備すること。そこに座って、子どもができるだけ長い時間、好きな遊びを長く続けられるようにしていきます。折り紙でも塗り絵でも粘土でも、集中してできるように好きな遊びを選んであげてください。

時間感覚を身につけることも有効です

時計を使って「長い針が12のところに来たら終わりだよ」などと、座ることの終わりを教えてあげます。1日の流れを説明し、生活のイメージがつきやすいように声をかけていくことも同じことです。

大人にとっては当たり前のことかもしれませんが、学校に行ったらずっと座っていなければならないと思っているお子さんもいるかもしれません。「休み時間になったらお外で遊んでもいいんだよ」と、座る時間とそうじゃない時間があることも教えてあげましょう。

先生を味方に!大事なことは「ここが大事」と伝える

Q:先生のお話をきちんと聞けるか心配です

A:伝え方を工夫してもらえるようお願いしてみて

担任の先生としっかりコミュニケーションを取ることが大事

繰り返しになりますが、先生にわが子の味方になってもらうことは、学校生活においてとても重要です。どんな特性があって、どのようなフォローが必要であるかを理解してもらえるよう、できるだけコミニュケーションを取っていきましょう。

学校では、「話を聞く」時間が多くなります。子どもは話が長くなればなるほど、要点を掴むことが難しくなります。そこで、大事なことは「今から大事なことを3つ言うよ」「これが大事だよ」と前置きをしてから話してもらうなど、担任の先生に工夫してもらえるよう、事前にお願いしておくとよいと思います。

ポイントは先生の話をまず聞くこと。日頃の感謝をきちんと伝え、対立軸をつくらないよう注意してください。

持ち物の管理はお子さんの性格で柔軟に!

Q:持ち物の管理ができません。学校で困らないようにするには?

A:ある程度は仕方がないと思って。文房具は使いやすい物を一緒に選ぶ

物をなくしてしまうことはある程度は仕方がないと思う心を持っておくことは大事です。それを踏まえ、お道具箱や普段使う机の引き出しの中を管理するための方法をお子さんと一緒に考えていきましょう。

例えば、仕切りを作って物をおく位置を決めると整理整頓がしやすい子もいますし、逆にそれがストレスになってしまうようなお子さんもいます。後者の場合は、ざっくりとここにはこれとこれが入っていたらO Kと、入れるものだけを決めるほうが片付けてくれることが増えてきますので、お子さんのやりやすい方法を見つけてあげてください。

便利な道具もたくさん出ているので、わが子に合うものを探して

持ち帰るお手紙やプリント類は、透明で中身が確認しやすい書類入れを準備してあげるとよいと思います。クリアファイルは透明ですが、書類が滑り落ちやすく、中にお手紙をしまいにくいお子さんもいます。管理しやすい入れ物を準備しておきましょう。

筆箱も、鉛筆を1本1本ケースに入れるものもあれば、ペンポーチのようなものもあります。文房具類はお子さんが使いやすいものを準備してあげてください。

 

後編では給食のフォローや放課後デイについて伺いました

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お話を伺ったのは

むぎちょこ(西村千織)/言語聴覚士

ことばの発達と発達障害が専門の言語聴覚士。病院勤務の後、公的療育機関に17年勤務し、ことばの遅れがある幼児や発達障害のあるお子さんに対して、のべ数万回の言語聴覚療法を実践。2020年より理学療法士西村猛の運営する株式会社ILLUMINATE取締役兼発達障害のあるお子さんのための支援事業所「発達支援ゆず」所属。子どものことばの発達にお悩みを持つ保護者の方向けのオンライン相談事業も実践。

YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、理学療法士の西村猛と2人で、ことばとからだの発達や発達障害に関する情報を発信中。著書に「「ことばが遅い子・心配な子」から「ことば」を引き出す親子あそび」(PHP研究所)がある。

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お話を伺ったのは

にしむらたけし(西村猛)/理学療法士

子どもの運動発達と発達障害が専門の理学療法士。株式会社ILLUMINATE代表取締役。公的療育機関等に20数年勤務した後、2017年に独立起業。現在は、会社代表として「発達支援ゆず」の3事業所を運営するかたわら、全国の保育園・幼稚園・こども園などで、子どもの運動発達や発達障害に関する研修会講師として活動中。

運動発達の専門家として、NHKあさイチ、テレビ朝日グッドモーニングを始めメディア出演等多数。著書に「寝る前10秒 子どもの姿勢 ピンポーズ!」(主婦の友社)がある。

文・構成/鬼石有紀

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