令和の今も私たち親世代の頃のギモンが残り…。身近な場面で感じる性の問題をそのままにしてはダメ
――現状の性教育の、なんだかおかしいな?とか違和感を、どういう時にお感じになりますか?
鈴木さん:学校や地域差もあるでしょうが、そもそも小学校で性教育をほとんどしないんですよね。私自身、例えば生理の話をするのが恥ずかしいという感覚はあまりなくて、ジェンダーギャップなども元々すごく気になるタイプ。男の人は こうあるべき、女の人はこうあるべき、っていう根強く残る固定観念などもとっても関心があります。
娘にも、女性の体に当然起こりうることをオープンに話すようにしています。例えば生理前や生理中であること、その際にPMSという症状が出て、お腹が重くてキツイとか眠いことがあるとか…。
「今、生理中なんだよね」みたいな話を、例えば男性がいる場で言ったりすると、一瞬空気が凍るような空気になることがありますよね。慣れない話だから今は当然かもしれませんが、これからはもっとフラットに捉えられるようになるといいな、と個人的には思っています。
娘が小学校入学後すぐ、一番最初にギモンに思ったことは、体育の授業の着替え。小1で、男女一緒に同じ教室で着替えていたんですね。令和も未だにそうなんだと思って…。
男の子はバッとひと脱ぎしてあとは元気に遊んでいて、一方で女の子は見えないように工夫しながらもぞもぞ脱いで、この差ってなんだろうなと。学校に問い合わせもしたのですが、高学年になったら、着替えの部屋があるけど、低学年のうちは男女一緒だと返答がありました。
――私たちの子ども時代も、そしてうちの子も低学年は同室での着替えでした。未だに変わってないんですよね。他に気づいたことは?
鈴木さん:宿泊学習の時、全員で決められた大浴場に入ることにも配慮が必要です。発育の差が顕著で、自分の体がみんなとちょっと違うことを、高学年では恥ずかしい子も一定数いるそうです 。気にならない子はそれでもいいし、気になる子は個別で入浴できるなど、両方の選択肢があってもいい、とも思っています。教育機関や社会の中にある問題は、保護者1人が声をあげただけではとっても小さく、いい方に変わっていかないので、性教育に関するイベントなどでみなさんにおかしいと思うことに気づく視点を共有し、種をまくことが大事だと思っています。
娘への性教育は簡単な絵本から。親が言いにくいことは絵本の力を頼っていい
――娘さんへの性教育は、どんなことから始めましたか?
鈴木さん:日頃の生活、会話の中で。例えば、入浴中に体の話をするとか、生理は何のためにあるのかっていうところは、すごく小さい時から話してきました。よくお子さんの質問で親が困ってしまう「赤ちゃんはどこから来るの?」に、その行為についてどう話そうか迷った時に、私自身も絵本に頼りたいと思って、ちょうどいい絵本を探し、最初は淡々と読んで聞かせました。
さらに、読み聞かせでは娘がわからないところや、自分が補足したい箇所は付け足して、それも定期的に読み聞かせる機会を作っていました。自分の身にまだ起きてないことだから、すぐ忘れちゃうんですよ。定期的に、その成長レベルに合わせて、もうちょっと詳しくても理解できそうだなとか反応見つつ、知識を濃くしていきました。時にはお友達も招いて、その親御さんの了承を経て一緒にやると、1人で聞くのと空気感が違うので、お友達と一緒に学ぶこともおすすめですね。
――何歳ごろから始めましたか?
鈴木さん:ある日突然「今日から性教育をします」っていうわけではなく、言葉が通じるようになってから、他の絵本と同じように読みました。あとは、子どもがなかなかおっぱい離れできないとき、「ママのおっぱいだから勝手には触らないでね。ママも嫌な時もあるよ」というのも性教育だと思うんです。お母さんも子どもから触られるのがイヤな時は断っていいっていう、その姿勢も全部がお手本になると思ってるので、理解できる、伝わるように言い方を工夫していました。
――娘さんにこういう風に育ってほしいとか、性教育に関する旦那さんやご家族のコンセンサスとか、そういう共通の認識などはご家族の中にありますか?
鈴木さん:子どもの教育まわりは私に一任されていますが、今日はこういうことを話したとか、最近ちょっと思春期モードでイライラしやすいよ、といったことは共有しています。
娘のそのイライラに巻き込まれて、私もイライラしてしまうこともあります。でも、それでいいと思います。家族であれ、怒りをぶつけたら相手はどうなるのか、と体験した方が、自分のコントロールの仕方だったり、自分の機嫌の取り方だったりを学んでいくので。「今は思春期だから、ホルモンのバランスが不安定で気分の起伏が激しくなってるんだ」ということは積極的に教えてあげるようにしています。
――えみさん自身、中学生くらいの頃に知っておいた方がよかったな、と今になって思うようなことは? 子どもの性教育が早期から大事だというのを実感するのはどういうときですか?
鈴木さん:性教育に関するいい本も絵本も全く選択肢がなくて。ドラマのラブシーンなどの際も、親がチャンネルを変えたりするから、ダメなことなんだ、触れてはいけないことなんだ、とは思っていましたが、それだけでは本質は伝えられていませんよね。その本質やリアルな性教育を思春期に入って突然教え始めたら、一瞬で拒絶されるのがオチです。受け入れにくい年頃に入ってしまう前に、直接的な話はしなくても、そういう話を相談できる雰囲気を親子間で持ち続けた方が、双方にとっても幸せだと思います。
――確かに。性教育の話は、何かあった時、困った時に、親が受け入れたり相談に乗ってくれるという環境・関係づくりから耕しておかねばいけませんね。
鈴木さん:うちの親は否定や拒否はされなさそうだな、みたいな空気感、関係性、すごく大事です。そういう意味で、イベントの対象を3歳から8歳に設定してます。8歳以上では、また学習内容がガラッと変わったりもするので。なるべく早いうちに、親の意識に種まきをしておきたいなっていうのがあります。被災地に届ける物資に関するニュースで、生理用ナプキンを1日1個しか使わないと思ってた人がいたことが話題になりましたが、それが現実です。種まきを急がないといけませんね。
――親世代も令和の性教育にアップデートすべく、おすすめ本をご紹介ください。
「親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育」¥1,540/講談社
世界基準の「ユネスコ国際セクシュアリティ教育ガイダンス」という性教育の目的や内容を示すガイドラインをもとに、世界各国で「包括的セクシュアリティ教育」が行われていますが、それがどんなものか親子ともに詳しく知るのにおすすめです。
『みんなのいろいろ』/リンク先にて無料で閲覧可
友人でクリエイターの清水文太くんが書いた、Nikeと一緒に作った絵本。誰もが自分らしく、自分の色で輝ける未来を目指したいという思いを感じ取れる、とてもカラフルで生き生きとした絵本。性の知識にも触れながら、お子さんと一緒に自分だけの色を探して。
「性の絵本 みんながもってるたからものってなーんだ?」¥1,650/KADOKAWA
たきれいさんの絵本もおすすめです。先日のイベントに登壇した産婦人科医・坂本愛子先生も、ご自身のお子さんにも読んでいるとおすすめされてました。小さなお子さんでもわかりやすい言葉と絵でかいてあるので、手に取ってみては?
こちらの記事では性教育のイベント活動について伺っています。
お話を伺ったのは
モデル / クリエイター / デザイナー
1985年生まれ。1999年に雑誌「SEVENTEEN」の専属モデルとしてデビュー後、数多くのメディアで活躍し、同世代のアイコンとして人気を博す。デザインプロジェクト「Lautashi Design」のディレクター、クリエイターとしての活動も多岐に渡る。
プライベートでは一児の母。子育ての経験から幼少期における教育の大切さを実感し、「いのちの授業『Family Heart Talks』」を発足させ、性教育の重要性を発信。
公式インスタグラム ⇒ https://www.instagram.com/emisuzuki_official/
いのちの授業「Family Heart Talks」、詳しくは ⇒ https://www.instagram.com/family_heart_talks/
【服クレジット】
ドレス¥90,200(シーエフシーエル/シーエフシーエル オモテサンドウ)、左耳上¥81,400 、下¥275,000(ヒロタカ/ヒロタカ 表参道ヒルズ)、右耳¥20,900(ヒロタカ/ビームス 六本木ヒルズ)
【問い合わせ先】
シーエフシーエル オモテサンドウ 03-6421-0555
ビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623
ヒロタカ 表参道ヒルズ 03-3478-1830
撮影/田中麻以 ヘア&メイク/kyoko スタイリスト/鈴木美智恵 取材・文/羽生田由香