▼前編では、横井さんが妊娠した中学3年生の時のこと、当時の彼との関係について伺いました。
目次
「自分はどうしたい?」ありとあらゆるすべての選択肢をノートに書き出し…
――桃花さんは出産してご自身で育てることを決めるまで、どのようなプロセスがあったのでしょう?
横井桃花さん(以下、横井さん):妊娠が分かった時、真っ先に「親に怒られるかも」、と頭に浮かびましたが、自分がどうしたいのかきちんと考えました。
中絶、出産、里子、自分で育てる…どの道が正解かを考えたとき、リスクとかどういう未来があるかとか、すべてまず書き出して、この選択肢だったらどれを選ぶかという話を彼にしました。
でも彼は、産めばいいじゃん、一緒に育てればいいじゃん、というだけで…私はもうこれでは何も解決しないと思って諦めて、自分の命を絶つことまで浮かびました。お腹の子にも申し訳ないという気持ちもあり、自分も責任を取って…と悪い方向にばかり考えてしまったんです。
横井さん:でも、心のどこかでは自分で産んで育てたいと思っていたのかもしれません。妊娠8か月と聞いた時、ちょっとホッとした自分がいました。もっと早くに母に言っていたら、産むという選択ではなく、中絶の選択もあったと思うので。
かといって、さまざまなケースがありますし、中絶という選択肢も別に間違ってはいないとも思っています。自分の幸せはもちろん、お腹の子の幸せを願っても、たとえ産んでもちゃんと育てられなかったら申し訳ないし。
里子という選択肢も、せっかく宿った命、自分でちゃんと育てられるかもわからないから、子を望む方に幸せにしてもらうっていう、子への責任の取り方もあるなとも考えていました。
母に話す時には、すべての場合を想定して、それぞれの選択肢について一緒に考えられるように、自分の考えをメモに書き出して話す準備を整えました。
世間の厳しい意見も、応援の声も、半分半分。これが私の選択肢だから
――出産前から徐々に、母となる覚悟で強くなっていったんですね。では、メディアでご自身の体験を語ることで、社会や世間からどんな反応がありましたか?桃花さんご自身も、変化や気づきはありましたか?
横井さん:メディアに出演してからは、「自業自得だ」とか、「子どもがかわいそう」とか、心ない言葉もありましたが、なかには応援してくれる方や私のとった選択もありなんだと感じてくださった方もいます。心ない言葉であっても、それはその方のそういう考え方もあるんだな、と私の学びにもなっています。
人生の中でさまざまな選択肢が多数ある中で、その選択をするのは私自身。選択した人生を送るのは他の誰でもない自分なのだから、あまり深入りはしないようにしています。
横井さん:反対に、中学時代の友達や周囲の人々から、メディアを通して、当時の、そして今の私を知ったことで、当時そんなことがあったんだね、頑張ったね、という連絡をもらえることが増えました。温かい言葉をもらって、当時は自暴自棄のあまり無謀なことを考えて自分は一人ぼっちだとばかり思っていたのに、もしかしたら本当は仲間として話を聞いてくれたんじゃないか、相談していたら選ぶ選択肢はどうだったのか、ということを改めて考えるようにもなりました。
心が痛む悲しいニュースを、もう繰り返さないために私ができることとは
――15歳で出産したことで、メリット、デメリットがあるとすれば、それはどのようなものでしょうか?
横井さん:現状、出産してよかったと思っていますし、育児をしている今が私の楽しみ方だと思っているので、デメリットは感じていません。
でも、私の年齢で子どもがいると、同年代の人たちはたくさん遊んで、この年代ならではの楽しみを満喫している中で、同じような過ごし方ができないことは当然あります。子どもに時間を縛られたり、遊びに行けなかったりするだけでなく、世間の厳しい目ももちろんあります。
横井さん:だから迷った時には、私が今「産んで良かった」と言ったことだけを鵜呑みにせず、デメリットもよく考えて、同じように出産し育てられるかを今一度よく考えて欲しいです。途中で里子に出したり、死がよぎってしまったり…心が痛むニュースもよく聞きますし、そのような悲しい結果にならないように。
困ったら周りに助けを求めて
――14歳で妊娠した時に戻れたら、今の自分から何かアドバイスすることありますか?
横井さん:周りにもっと助けを求めてもいいんだよ、と伝えたいですね。一人で抱えなければ、ほかの未来もあったかもしれないと思うので。実際に今の中・高校生の女の子でも、無理やり関係を迫られた子もたくさんいるし、恥ずかしいことだからと周囲に話せない子も多いと、この活動を始めてから実感しています。
私自身がそうだったように、一人で抱えちゃうんですよね。だからまず、当事者の私がそういう環境を少しずつ変えるために、今悩んでいる、今後悩むかもしれない方の力になれればと思うんです。
そんな気持ちもあって、最近はメディアで声をあげることだけではなく、「暗闇ヘッドスパ(株式会社純度100)」の社長として、困っている方々が遠慮なく悩みを話せる居場所をつくりたいと思っています。過去の自分も、きっと誰かに話を聞いて欲しかったから。
横井さん:ヘッドスパを通してリラックスしてもらいながら、悩みを聞いて、たくさんの方の支えになりたいです。
私と息子の幸せのために、お金も労力も時間も費やしたい
――今現在、ご家族は、桃花さんや息子さんとどんな関係なのでしょう?
横井さん:母に初めて打ち明けたときには驚かれましたが、産んで育てる決断をしてからはずっと応援してくれています。頑張れるところまで頑張りなさい、そう決めたのはあなたなんだから、貫き通しなさいと。息子の成長のイベントや誕生日には、お祝いもしてくれます。
横井さん:今は、私と息子は実家から出て独立してますが、手のかかる頃は同居して、いろいろと支えてくれました。私は親として息子に怒らないといけない時もあるため、息子はおばあちゃんに甘えています(笑)。
――シングルマザーで育てる、さらには子の認知や養育費問題など、想定していたことはありますか?
横井さん:私自身もシングルマザー家庭で育っているので、大変なことは十分に分かっていました。子どもの時はパパが欲しいと思ったこともあるし、公園で家族で遊んでるのを見ると心苦しく感じる時もありました。でも今の時代、シングルの方や未婚の方、周囲にたくさんいるし、ネガティブなイメージも徐々になくなってきています。
横井さん:当初は、「認知をしてほしい」「養育費をもらいたい」という気持ちも確かにありました。「なんで私だけが育てるのか」「彼も息子の人生に責任を取るべきだ」と思って。
そういう問題に詳しい弁護士に相談しに行きましたが、無理やり性交があったことに証拠がないことや、当事者しかわかりえないことだから、この方向で戦うのは難しいと。では別の方向からアプローチすると、手続きや裁判など、まず認知の手続きの裁判をしてから、養育費の裁判をする、2回裁判をしなきゃいけなくて。養育費については強制執行の制度はあるものの、支払われないケースもたくさんあります。
膨大な時間や労力、金銭面での負担がこちら側にかかる割には、確実性がほとんどないんです。
だから、そこに私の時間や労力、お金を割くのではなく、私と息子の幸せのために費やしたいと思って、割り切りました。
子育ては本当に大変。悩んだ時は周りに相談して
――子育てしてみて、想像と大きく違った点や新たな発見などはありましたか?
横井さん:元々イメージはしていましたが、産むのは簡単だけど、やはり育てるのは本当に大変。あらためて理解できました。
横井さん:子育て本のマニュアル通りにうまくいかないし、子ども一人一人が性格も状況も違う中で、正解・不正解、間違いなんてなくて。我が子の見えない未来に向かって、その将来を託されているという感じです。
――最後に、HugKum読者世代や、中高生や小学校の高学年のお子さんに向けてメッセージをいただけましたら…。
横井さん:1つめは、若いお子さんたちには、自分は一人じゃないっていうこと、誰にでも相談していいんだよ、と伝えたいです。2つめは、私はこのように出産して育てていますが、あなたにはあなたの、さまざまな選択肢があるんだ、ということを知ってもらいたいです。そのことで悩むのは、女の子側だけじゃなくて、男の子側も同じ、ちゃんと考えて欲しいです。
女の子が妊娠や出産でどういう状況になるかということ、未来まで視野を広く考えて、あらゆる選択肢をどれがいいのか見極めてほしいですね。それで、自分の選んだ選択肢で幸せを掴める方のゴールに向かって、その都度また、別の選択もしながら進めばいいんだと思います。
14歳、妊娠当時のお話はこちらから
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取材・文/羽生田由香