セックスを習わない子どもたち「男の子と裸で抱き合ったけど妊娠しますか?」親がきちんと教えるべき?【性の赤裸々相談室】

高校や小学校の保健室の先生を経て、現在はフリーランスの性教育講師、思春期保健相談士として各地の学校や講演会で活動しているにじいろさん。小学生ママたちの打ち明けにくい性に関するお悩みや疑問にお答えいただきました。
前回も大反響だった【性の赤裸々相談室】シリーズの続編。今回も親が知っておきたい性教育のたいせつなことをお届けします。

学校では教えてくれない「性教育」の実態

Q.おうち性教育の重要性が話題となっていますが、セックスについて、親が子どもに説明する必要はあるんでしょうか?

にじいろさん(以下:にじいろ) 必要あると思います。というのも、学校の授業では、小学4年生の時に「思春期の身体の変化」5年生の時に「人のたんじょう」についてを学習します。その中では、月経や射精、卵子や精子というワードは出て来ますが、「セックス」いわゆる「挿入」の部分は習いません。女性の体には卵子があり、男性の体には精子がある。そこまでは理解していても、それがどうやったら出会うことができるのかは、わかっていないのです。私が養護教諭をやっていた頃や、最近だとTwitterのダイレクトメッセージで、中高生からこのような相談をされることがあります。

実際ににじいろさんの元に届いたお悩みの内容

  • ・男の子と裸で抱き合ってしまったけど妊娠する可能性はありますか?
  • ・お互いの性器を触り合ったので、妊娠したかもしれない。
  • ・彼氏の我慢汁がついた手で性器を触られました。妊娠しますか?
  • ・マスターベーションをして射精するところを見ました。それだけで妊娠しますか?

にじいろ  これらの相談をしてきた子たちは、セックスはしておらず、どうやったら妊娠をするのかはわかっていません。「裸」「性器」など、なんとなくの知識は持ち、アダルト用語はネットで情報を拾い、それを寄せ集めてなんとなく「セックス」としているのです。そして、こう思っている子は意外と多いんです。

−そうなんですね。高学年になれば、なんとなく意味は理解しているものかと思っていました。

にじいろ そうなんです。断片的な知識を持った子が多いので、きちんと教えてあげる必要があります私に妊娠の相談をしてくる子は、妊娠をしていない子の方が割合としては多いです。現に、厚生労働省のデータを見ても10代の妊娠や中絶の件数は2000年代前半をピークに下降しています。しかし、中には実際に妊娠しているケースもあります。誰にも相談できない子に向けて、全国妊娠SOSネットワークという相談窓口もあるので、知識として持っていると良いと思います。

エッチな意味合いではなく、体の仕組みとして話をしよう

Q.子どもにセックスの話をするのは、ハードルが高いです。どのように話すのがいいのでしょうか?

にじいろ 突然「セックスの意味、知ってる?」と切り出すのはなかなか難しいと思います。普段の会話の中でこのようなキーワードが出てきたときはチャンス!と思ってください。あくまでも、エッチな意味合いではなく、体の仕組み、命の始まりとして話すことがポイントです。

 おうちで性教育をする際のきっかけ

  • ・「赤ちゃんってどうやってできるの?」と聞かれた時
  • ・動物や虫の交尾について話す、その場面を見かけた時
  • ・学校の保健授業で性についてを学んだ前後
  • ・生理になったり、話題に上がったりした時
  • ・身近な人が妊娠をして、その話題が出た時

−なるほど! それなら自然に「性」の話に触れられそうですね。でも、高学年になると、なかなかそんな会話も出ないこともあるのですが……。

にじいろ そうですよね。もし、こういうキーワードが出ても、親の方が違和感を感じて話すことが難しい場合、「最近、この本が売れているんだって。買ってみたから読んでみて」と言って、性教育についての本を子どもに手渡すのもいいと思います。その際は、子どもの年齢によって、読みやすいものを選ぶようにしましょう。

にじいろさんがおすすめ! セックスについてもわかる性教育の本

低年齢でもわかりやすい絵本「あかちゃんがうまれるまで」(童心社)

イラストでわかりやすく誤解なく性を説明できる絵本「あっ!そうなんだ!性と生」(エイデル研究所)

マンガでわかりやすく解説「わたしの心と体を守る本」(KADOKAWA)

マンガ“ちゃお”でおなじみ「みいこセレクション~きゅんきゅん女の子のないしょ話編~」(小学館)

 にじいろ 子どもがスマホを持っていたり、タブレットでネット記事を読んだりできる環境であれば、親が信頼できる記事を精査して、読ませるのもひとつの方法です。

まずはどんなことでも話をする関係性を作ることが大事!

Q.今まで親子で「性」の話をしてこなかったので、正直、少し違和感があります。それでも親が伝える必要がありますか?

にじいろ そうですよね。私たちも自分の親とそういう話をしてこなかったので、初めは違和感を感じると思います。しかし、今はインターネットやSNSでさまざまな情報に触れる機会があります。デタラメな情報や間違った情報に惑わされることがないよう、子どもにきちんと知って欲しいことは、私たち親が伝えていく必要がありますよね。

−たしかに! 少しずつでも伝えていくことが大切ですね。

にじいろ 初めからいきなり「性」について話をしなくても、子どもとの会話を増やすところから始めてみましょう。そうすることで、「性」について話すきっかけが増えてくると思います。「今日はどんな授業をしたの?」「お母さんが小学生の時、保健でこんなことを習ったけど、今はどう?」こんな何気ない会話をすることから、おうちでの性教育を進めていきたいですよね。

 初めは多少の違和感を感じていても、少しずつ慣れていき、親子間の風通しが良くなるといいですね。

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記事監修

にじいろ|性教育講師・思春期保健相談士
元保健室の先生であるにじいろさんが性教育を行う対象は子どもだけではなく、保護者や教員など様々。現場の声と知識を活かして、多岐にわたる活動をしている。昨年出版した著書「10代の妊娠」(合同出版)では、10代の子どもの妊娠や出産、中絶など、リアルな性の悩みを紹介し話題となっている。

 取材/本間綾

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