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幼児期は栄養+食感などの刺激が大事。学童期に入ると摂取エネルギーが一気に増大
子どもはとても早いスピードで成長していますので、その成長に合わせた栄養の摂り方が必要です。脳や神経系発達の9割が、6歳までにある程度完成するとも言われています。新生児の脳は約350gですが、6歳にもなると約1500gと、大人の脳の95%ほどの大きさに成長します。脳が最初に発達するんですね。ですので、幼児期は何を食べるかは重要ですし、栄養面だけでなく、食感や咀嚼することでの刺激も大切な食の役割です。
一方学童期(小学生)は活動が活発になることで、1日に必要なエネルギー量も一気に多くなり、基礎代謝も著しく上がります。体がぐんぐん大きくなっていきますので、細胞分裂に必要な鉄分や亜鉛など、なかなか普段の食事では摂りにくいようなミネラルも必要になります。
特に女の子の場合は、月経が始まると鉄分が不足しがちになっていきます。「朝起きられない」「体がだるい」という状態が続く場合、鉄不足状態であることも多いです。
また、性別によりますが12歳〜16歳くらいからは骨のピークを迎えるので、総カロリーを十分に確保するほか、タンパク質、カルシウムもしっかり摂っていきたい栄養素です。高学年は身長を伸ばすチャンス! 5 大栄養素を摂りながら、成長過程に併せた栄養素を補っていくことを意識してみてください。
高学年に必要な総エネルギー量は大人以上! 朝食からタンパク質と糖質を
活動量が多くなる学童期(小学生)は、特にタンパク質がとても大切です。筋肉を作る上で必要ですし、身長伸ばすための成長ホルモンも、実はタンパク質からできています。朝食から積極的に摂っていきましょう。
さらに1日に必要な総カロリーは6〜7歳の男子だと約1550kcal 、女子で約1450kcal。これが10〜11歳になると男子で約2250kcal、女子で約2100kcal(※すべて激しい運動をしていない子の場合)にまで増えます。HugKumのママ世代(30〜49歳)の女性は約2050kcalですので、実は子どもの方がママよりも総カロリー数は必要なんです。
改めて数字で見てみるとお分かりになるかと思いますが、朝・昼・晩きっちり食べたとしても、なかなか理想に追いつかないものなのです。ですから、朝食を抜いてしまうだけでも、必要なカロリーすらも補うことができない状態になってしまうのです。
1食にたくさんのエネルギーを摂らなくても、1日の中で必要な栄養が摂れているかを見れば良いのですが、朝食はその日を元気に過ごすためのエネルギーになる大事な食事です。筋肉を動かすタンパク質と脳が動くためのブドウ糖になる糖質を摂ることを心がけてください。
子どもが自分でできる!朝食の工夫
朝食の大事さは理解しているけど、朝からお味噌汁を作ったり、オムレツなどを作っている時間はなかなか取れませんよね。特に、子どもが「自分で準備する」ことを目標とすると、なるべく火を使わずに栄養バランスがとれた献立にしたい…。そんなわがままに応えてくれる、佐野さんおすすめの献立をご紹介します。
和食編
①手作りふりかけ
朝はやっぱりご飯!というお子さんには、「手作りふりかけ」がおすすめ。海苔、ごま、桜エビ、しらす干し、カットわかめ、鰹節、鮭フレークなどの乾物をご飯に混ぜ、ラップで包むだけでおにぎりが完成します。
市販品より塩分量も調整できるのでおすすめです。小学生ならばそのままでも食べられると思いますが、ミキサーにかけて細かくしてあげると、小さなお子さんでも食べやすくなりますよ。
②ご飯にのせるだけ!高タンパク質のおかず
鶏そぼろや鮭フレーク、しらす干し、炒りたまごなどは、事前に準備しておくことで、ご飯にのせるだけでしっかりタンパク質を摂ることができます。納豆も忘れてはいけない便利な食材。
③味噌玉
和食に欠かせないお味噌汁ですが、朝から作るのはハードルが高いですよね。味噌玉を作っておけば、お湯を注ぐだけでお味噌汁が完成します! ここで便利なのが乾燥野菜。スーパーなどでも乾物コーナーで販売しているのでチェックしてみてください。
味噌にパックに入っているダシを破り、ダシ粉と乾燥野菜、味噌を混ぜておきます。1杯分をラップで包んで冷凍庫に入れておくだけ。大人の場合、味噌:大さじ1、ダシパックの中身(塩分の入っていないものがおすすめ):小さじ1が目安ですが、この半分の量でも小学生ならOK。冷蔵保存なら1週間程度、冷凍なら1ヶ月ほど保存可能です。
洋食編
①電子レンジオムレツ
卵1個分の溶き卵に、牛乳:小さじ1、マヨネーズ:小さじ1を入れて混ぜたら、ラップを敷いた器に入れて、電子レンジ(600W)で30秒。一度取り出したらお箸やスプーンなどで混ぜて、さらに20秒。取り出して、ラップの上から布巾で形を整え、少し冷ましたら完成。火を使わずにオムレツができるので、お子さんにも安心して任せられます。
②マグカップリゾット
マグカップにご飯、牛乳、粉チーズ、溶き卵、ベーコン、冷凍ほうれん草(または冷凍ブロッコリー) を入れて、ふんわりラップをかけて、600Wの電子レンジで2分加熱するだけ!カルボナーラ風のスープご飯の完成です。
ベーコンと粉チーズの塩気だけでも美味しい!また、ご飯にトマトジュース(無塩)、顆粒コンソメ、ベジタブルミックス、ベーコン(またはソーセージ)を入れてチンすれば、ミネストローネ風リゾットに♡
③キッシュ風トースト
厚めの食パン(4枚切りか5枚切り)に、四角く切り込みを入れて真ん中を窪ませます。そこへ、溶き卵:1/2個分、牛乳:大さじ1を混ぜたものに、しらす干しや鮭フレーク(ベーコンやハムでもOK)、冷凍野菜(ブロッコリーやミックスベジタブル)、やトマト、ピザ用チーズを混ぜたものを流し込み、トースターで8〜10分焼くだけ。
冷凍野菜はたくさん収穫できる旬の間に、生のまま冷凍されているものが多く、実は栄養価がとても高い場合が多いです。上手に利用して。
朝は食欲がない…そんな子どもにできることは?
「朝は食欲ない…」そんな原因の一つには、夕食を食べ過ぎている場合が。最近の小学生は夜遅くまで塾や習い事があったりして、夕食を遅い時間に食べている子も少なくない。そうなると、朝起きてもお腹が空いていない…起きられない…という悪循環が発生しやすくなります。どうしても遅い時間に食事を摂らなければならない場合は、消化に負担がかからないものを選んで食べるようにしましょう。うどんや脂分の少ないお肉、魚など。夜遅くに食べすぎると睡眠の質にも影響してしまいますので、塊肉など消化に時間がかかるものを食べ過ぎないよに心がけてください。
受験勉強などで夕食の時間が遅くなりがちな子は、夕食を分食する(何回かに分けて食べる)などの方法も有効です。
また、朝食がなかなか食べられない子は、まずは温かい飲み物を飲む習慣をつけてみてください。水分を体に入れることで胃腸が動き出し、食欲が出やすくなりますよ。
食が細い子は「間食」を上手に利用して
朝に限らず、食が細い子の場合は間食をうまく使って、必要なエネルギーを摂れるようにフォローしてあげてください。
子どもが小さい頃は気を遣っていたけど、大きくなるにつれて間食がお菓子が多めになってしまっている…なんてご家庭も多いですよね。お子さんが保育園の頃を思い出して、おにぎりや焼き芋、肉まん、フルーツ、ヨーグルト、チーズなどをおやつに取り入れるようにしてみてください。
彩り豊かな食卓にすれば栄養満点献立!
慌ただしい朝の時間ですが、栄養価の高いメニューで、なおかつ、お子さんが自分で準備もしやすくなる献立を考えてみましたがいかがでしょう?
栄養面での不安は、赤・黄色・緑・オレンジ…など、彩りをチェックするよう心がけてみてください。多彩な食事は多様な栄養を摂れる証。「あと何色が足りないかな?」「赤ならトマトかな?」など、お子さんと一緒に献立を考えていきましょう。
つい手軽なフルーツジュースや野菜ジュースを飲んでしまいがちですが、食べるなら食物繊維も入っている生のフルーツが理想です。給食で出ない日は、朝食やおやつで補ってあげると良いと思います。
子どもと一緒に食の大切さを学ぶ機会に
佐野さんから教えていただいたレシピの数々、「うちの子はできないかも…」と思っていても、意外とやらせてみるとできるものです。筆者の家では長期休み中にやってもらうことにし、準備に慣れた頃に学校がスタート!と、とてもスムーズな流れができました。朝食を自分で準備する習慣ができると、食べるものを意識する大切さを知ることもできます。親子で確認する機会にできるといいですね。
お話を伺ったのは
大学時代に看護実習を通じて予防医学の重要性を感じ、予防医学に関する研究を開始。また、大手料理教室のヘルスケア部門の立ち上げを行い、女性のライフスタイルから考える健康や健康のための食生活等について発信を行ってきた。
食と健康に関する専門的な正しい情報をわかりやすく伝えることを得意とする。人々の食と健康に関する知識レベルを上げ、健康でありたいと思う人が当たり前に正しい食の選択ができるようになることを目指している。
2017年~2019年まで慶應義塾大学医学部特任助教を務めた。2024年より、藤田医科大学医学部臨床栄養学講座の客員講師を務める。プライベートでは2児の母。
文・構成/鬼石有紀