「子どものやけど」応急処置や受診目安は? 症状の見分け方や治療法と防ぎ方【小児科医監修】

子どものやけどの危険性は、家のなかの思わぬところに潜んでいます。もし、子どもがやけどをしてしまったら、どのような対処をすればよいのでしょうか。北浜こどもクリニック院長・北浜直先生に、やけどの治療法や気を付けたいシチュエーション、症状などを解説していただきましょう。さらに、水ぶくれになったときの処置や、子どものやけどの治療についてご紹介します。

子どもがやけどをしたときの処置と治療法

ここでは、万が一、お子さんがやけどをした場合の治療法です。

すぐに水で冷やす

やけどしたら、すぐに流水で冷やしてください。痛みや熱さを感じなくなるまでしっかり冷やします。時間の目安としては、15分以上がよいでしょう。やけどした部分を冷やすことで、熱傷による皮膚の症状の進行をくい止めることができます。

水をかけにくい部分であれば、ビニール袋に氷を入れたもので冷やします。

衣服の上からやけどをした場合は、衣服を脱がさず、すぐに冷やしましょう。無理に脱がすと、皮膚が着衣についてはがれてしまう可能性もあります。

広範囲のやけどのときには、シャワーをかけたり、水を入れた浴槽などに体ごと浸かったりしてください。直接水をかけて痛がる場合は、清潔なタオルなどで患部を覆い、その上から水をかけるようにしてください。

経過を観察する

病院で受診すると、重症度が判断してもらえ、適切な処置を行ってもらえます。ですが、中くらいのⅡ度のやけどでも浅達性なのか深達性なのかといった詳細の分類の場合には、治療を継続しながらの経過観察が必要となります。

保湿をしながら治療する

やけどのケアには、保湿が重要です。やけどした部分は、皮膚ができて傷がふさがろうとするときに、水分を保つことができず、乾燥しがちです。病院で処方された薬などで、しっかり保湿しましょう。

やけどの症状と病院に行く目安

やけどの症状と病院に行く目安をお伝えします。

やけどの深さ

やけどの症状は3つに分類されています。それぞれの症状を解説します。

・浅いやけど(Ⅰ度熱傷):皮膚が赤くなる

Ⅰ度熱傷は、浅いやけどのことです。やけどした部分は、皮膚が赤くなって、ヒリヒリと痛みます。水ぶくれはなく、適切な処置を行うことで数日で治ります。

・中くらいのやけど(Ⅱ度熱傷):水ぶくれができる

Ⅱ度熱傷は中くらいのやけどのことです。このⅡ度熱傷は、中程度のやけどのなかでも浅いやけどと深いやけどに分けられます。

浅達性II度熱傷は、やけどした部分が赤くなり、水ぶくれができるのが特徴です。痛みもありますが、治療することで1~2週間で治ります。痕が残ることは少ないです。

深達性II度熱傷は、やけどした部分が赤、紫、白色になります。水ぶくれができますが、ほとんどの場合痛みは伴いません。治るまでに2~3週間かかり、痕が残る可能性があります。

・深いやけど(Ⅲ度熱傷):皮膚が白くなる・黒くなる

Ⅲ度熱傷は、深いやけどです。やけどした部分の皮膚が白っぽくなります。皮膚が壊死した状態になるので、水ぶくれもできませんし、痛みも感じません。

跡が残るのは?

I度熱傷程度の浅いやけど以外は跡が残る可能性があります。また、浅いやけどの場合には赤みが残ったり、茶色く色素沈着が起こる場合もあります。色素沈着は、紫外線に当たることが原因となるため、紫外線対策をすることをおすすめします。

深達性II度熱傷やIII度熱傷では、傷跡が盛り上がるような状態の「ケロイド」や皮膚がひきつる「ひきつれ(瘢痕拘縮)」になる可能性があります。また、皮膚の機能に問題が発生することもあります。

病院を受診する場合

やけどは初期の対応と治療が肝心です。程度が軽そうなやけどの場合でも不安であれば、病院へ行きましょう。

広範囲の場合

広範囲の場合は、すぐに救急車を呼んでください。そして、やけどした部分を冷やしながら救急車を待つようにしましょう。やけどをした範囲が、体全体の皮膚の30%を超える場合には、命にかかわることもあります。

目や顔の場合

顔や目、口や外陰部などをやけどした場合は、すみやかに病院へ行って受診しましょう。病院へ行く最中も、患部を冷やすようにします。その際は、ビニール袋に氷を入れたものなどをやけどした部分にあてて冷やしてください。

化学的やけどの場合

漂白剤や消毒剤、洗剤などでやけどをすることがあります。それらの薬品には強酸がふくまれていて、皮膚にかかると、ただれたような状態になってしまいます。この場合も、早急に病院で受診する必要があります。

小児科?皮膚科?何科を受診すればいい?

素人判断でやけどの程度が軽いと思っていても、実際には重症であるケースもあります。そうなると、跡やひきつれを残す可能性もあります。お子さんがやけどをしたことで、不安があるようなら、小児科を受診するようにしてください。

水ぶくれになったときの処置

やけどをしたあとに、水ぶくれができたときには、どのように対処すればよいのでしょうか。入浴の可否や、つぶれたときなどの処置方法をご紹介します。

水ぶくれはつぶさない

水ぶくれ(水泡)は、つぶさないようにしてください。水ぶくれをつぶしてしまうと細菌感染しやすくなってしまいます。お子さんだと、気にして触ってしまうかもしれませんが、「つぶさないようにしてね」と、伝えましょう。

水ぶくれがあっても基本的に入浴できる

やけどをしたときの入浴は、基本的には問題ありません。しかし、水ぶくれが破れているときは注意が必要です。水疱の中に水がたまらないようにしてください。

水ぶくれがやぶれたときの処置

意図せず水ぶくれが破れてしまったら、水と石鹸できれいにします。その後、破れた皮を取り除き、殺菌消毒薬や軟こうなどを塗るとよいでしょう。

子どものやけど、気を付けたいシチュエーション

子どもの皮膚は大人の皮膚にくらべて薄くなっています。そのことから、大人と比較するとやけどの症状が重くなることもあるのです。ここでは、どんなときに子どもがどこをやけどをしやすいか、気を付けるべきポイントなどを解説しましょう。

キッチンはやけどの危険性が高い

キッチンは、やけどの危険性が非常に高い場所です。たとえば、炊飯器や電気ケトル、電気ポットなどの高温蒸気、使用中のグリルの扉などには注意が必要です。とくに小さいお子さんは、そういったものに触れようとし、指や手のひらをやけどしてしまいます。

それらの電化製品やグリルなどを使用中は、なるべく、子どもを近づけないようにしたり、電気コードがひっかからないように気をつけましょう。

体験談

「年少のころ、リビングのテーブルでホットプレートを使用して何かを作っているときに、ホットプレートのふちに触れてしまって軽くやけどをした。」(30代・神奈川県・子ども1人)
「炊飯器から出ている煙に手をあててやけどしていた。冷やしたらおさまったのでひどいやけどではなかった。」(30代・千葉県・子ども3人)

火気や暖房器具の使用に注意

夏には、手持ち花火で遊んだり、火をつけて使用するタイプの蚊取り線香を焚くこともあるでしょう。花火や蚊取り線香では、火種が落ちて足にやけどを負うこともあります。

また、冬の時期に活用する暖房器具も気をつけなければなりません。ストーブの暖かい空気が出る吹き出し口に肌が触れてしまうと、やけどをすることもあります。

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花火の火種が落ちてやけどすることも

体験談

「手持ち花火の最中に火花で火傷をした。 その場では水道でしばらく冷やして、帰宅後に塗り薬を毎日塗って治療した。」(40代・東京都・子ども1人)
「冬にファンヒーターの前に長く居たため足に軽い火傷をした」(30代・福島県・子ども1人)

食事中もやけどに注意

食事中もやけどに気をつけてください。たとえば、子どもがテーブルクロスを引っ張った拍子に、電気ポットや熱い飲み物が倒れ、熱湯が顔にかかってやけどすることもあります。

そのほか、熱過ぎる食べ物は気管をやけどしてしまう可能性も。気をつけたい食べ物は、たこ焼きや鍋料理のねぎ、高温の飲み物です。少し冷まして食べるようにしてください。

体験談

「5歳くらいのときにステーキ皿についてた熱された石を触ってしまった。すぐに冷やしたので大事には至らなかった。」(40代・東京都・子ども3人)
「6ヶ月の時に、年越しそばを作っていて、机の上に器につゆを作ろうと熱湯を入れてたら、それをひっくり返してしまい、腕全体にかかり病院へ連れていきました。跡が残ってます。」(40代・愛知県・子ども2人)

やけどの要因となるものに気をつけて

夏は花火や蚊取り線香、冬は暖房器具、毎日の生活ではキッチン周りなど、やけどはいつ、どんなところでも起こる可能性があります。やけどの要因となるものの扱いには十分気をつけ、小さなお子さんのいるご家庭は、手の届かないところに置くようにしましょう。

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記事監修

北浜 直|小児科医

神奈川県川崎市・北浜こどもクリニック院長。
1976年生まれ、埼玉県出身。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。2006年からは山王病院の新生児科医長務める。2010年に北浜こどもクリニックを開院。2012年医療法人社団ペルセウス設立。The Japan Times誌の「アジアのリーダー100人」に、2015年から3年連続選出されている

文・構成/HugKum編集部

 

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