子どもの貧困の切実さ! 親を殺す計画を立てた娘と友人の未来には何があるのか。湊かなえ原作の映画『未来』が問う大人の役割

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

人気ベストセラー作家の湊かなえが、デビュー10周年に発表した同名ミステリー小説を映画化した『未来』が5月8日(金)より公開されます。「湊かなえ史上、もっとも過酷で、もっとも切ないミステリー」とされている本作。観終わったあと、改めて感じたのはエンタメの力です。原作者だけではなく、映像化に携わったチームの方々の覚悟と気概を感じました!

湊かなえが『未来』というタイトルに込めた意味とは?

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

湊かなえの集大成的小説を、『ラーゲリより愛を込めて』(2022)や『護られなかった者たちへ』(2021)の瀬々敬久監督が映画化した『未来』。主演は黒島結菜で、『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015)以来、11年ぶりのタッグとなりましたが、黒島さんは今回、一筋縄ではいかない難役に挑みました。

“イヤミスの女王”湊先生の原作が初めて実写映画化されたのは、松たか子主演、中島哲也監督作『告白』(2010)でしたが、あの衝撃は今でも忘れられません。映画やドラマなど、多数の映像化作品がありますが、近作では、戸田恵梨香主演、廣木隆一監督作『母性』(2022)も記憶に新しいところかと。今回は、これまで以上にヘビーな物語ですが、観終わったあと、タイトルの『未来』に込められた一筋の希望をかみしめることになります。

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

複雑な家庭で育つ1人の少女のもとに届いたのは、「20年後のわたし」からの手紙。設定だけを見ると、よくあるタイムスリップものや、近未来のSFを想像しがちですが、そこは観てのお楽しみ。1つ、声高に言いたいのは、本作が、子どもの貧困や虐待という、令和の時代も続く社会の闇にとことん斬りこんでいる点です。だからこそ、現在子育て中のママやパパを含め、すべての大人の方々に観てほしい映画だと思いました。

壮絶な物語の末に見出される希望!

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

黒島さんが演じる主人公は、親に捨てられ、祖母に育てられながら、教師になるという夢を叶えた真唯子。本作では、真唯子の視点だけではなく、壮絶な家庭環境に置かれた様々な少女の目線から見た物語も併走して描かれていきます。

ある日、彼女の教え子・章子(山崎七海)のもとに届いたのが、「20年後のわたし」からの手紙。最愛の父(松坂桃李)を亡くした上に、頼りにしたい母(北川景子)は心を閉ざした状態に。章子は半信半疑のまま、まるで救いを求めるかのように、手紙に返事を書いていきます。

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

母の新しい恋人からの暴力や、学校での壮絶ないじめを受け、どんどん絶望の縁へと追い込まれていく章子。彼女が唯一、心のよりどころとしているのが、友人・亜里沙(野澤しおり)ですが、彼女自身もかなりハードな家庭環境で育っています。そんな中、2人は「親を殺す」という禁断の計画を立てることに!

真唯子は、何かと章子を気にかけていきますが、彼女自身も理不尽な差別や身内からの容赦ない仕打ちに心が折れそうになっていきます。果たして真唯子は、章子を救えるのでしょうか……!?

とにかく主要登場人物が、それぞれに目を背けたくなるような痛々しい体験をしていくのですが、湊先生が「レアケースを一堂に会して、自分が目立つために、インパクト的に強い物語を作ったわけでもありません」と宣言されているように、これらの惨状は、実は現実で起こっている1コマです。そう、ただ、目に入っていないだけ。

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

子どもの貧困問題は、親による虐待問題につながるケースも多く、さらに、虐待された子どもがその後も、暴力の被害者になりやすいという負のループも近年は、よく取り沙汰されています。そこを断ち切るには、どうすればいいのか? そこを、湊先生が“文章”を使って、いろんなメッセージを投げかけています。

劇中で特に「言葉には、人を慰める力がある」というフレーズが心に残っています。真唯子と章子は、なぜ手紙をやり取りすることになったのか? その真相を知ったとき、「やられました!」と思わずうなりました。切なくも温かい仕掛け。本作で描かれる一縷(いちる)の希望が深い余韻を残します。

子どもなら迷うことなくSOSの声をあげてほしい

Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社

黒島さんはじめ、北川景子、松坂桃李、坂東龍汰、細田佳央太ら実力派俳優陣はもちろん、山崎七海や近藤華、野澤しおりら“未来”を担う新進女優たちの熱演も秀逸。それぞれのパートが、子どもたちの“未来”のための物語をしっかりと紡ぎあげています。

観終わったあと、一番に思ったことは、子どもがもし、窮地に立たされたなら、ぜひ「助けてほしい」と声をあげてほしいということ。そして、大人たちもその声を聞き取ってほしい。口で言うのは簡単なことですが、見てみぬふりをする人が多いというのも現実です。だから、耳を傾けねば。

そういうことを、エンターテインメントを通して訴えかけられることの意義も、今回改めて実感しました。何度でも言います。本作は、多くの大人たちに観ていただきたい映画です。

『未来』は5月8日(金)より公開
監督:瀬々敬久 脚本:加藤良太
出演:黒島結菜、山崎七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、松坂桃李、北川景子…ほか
公式HP:mirai-movie.jp

※山崎七海の「崎」は、正式には「たつさき」

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