【調査概要】調査期間:2026年4月27日~5月16日 回答者数:0~12歳の子どもがいる保護者 677人
目次
「非認知能力」はこれからの時代の子どもにとって、大事な力だと思いますか?

まず、非認知能力の重要性について。「思う」が393人、「まあ思う」が252人と、9割近くが大事な力だと答えました。ここから、非認知能力の専門家・中山芳一先生に設問への回答を聞きつつ、進めていきます。

――ここまで「非認知能力」が大切な力だと認識されるようになったのはどうしてでしょうか?
中山先生:きっかけの一つは、AIの開発が急速に進んだことです。AIは認知能力と言われる、知識の理解・記憶・言語・計算・論理的思考・課題解決など、情報処理に関わる能力全般が得意。認知能力に関しては、AIはあっというまに人間を超えてしまいました。そこで、AIが苦手とされる分野の非認知能力に注目されるようになったのです。
「非認知能力」という言葉を聞いたことはあるけど、なんとなくしかわからない
塾や習い事などの広告で「非認知能力を伸ばします!」というようなキャッチコピーを目にすることがありますよね。非認知能力が大事な力だと思ってはいても、多くのママ・パパはどのような力だと認識しているのでしょうか。

圧倒的に多かったのは、「なんとなく知っている」(423人)。続いて「よく知らない」(141人)、「きちんと知っている」(113人)という結果に。なんとなくはイメージしているけど、それがはっきりと言語化できるかどうかについてはあいまい、という人が多いようです。中山先生に、改めて定義を聞いてみました。
――非認知能力とはどんな力を指すのですか?
中山先生:非認知能力は感情を伴うため、感情を持たないAIは獲得できないと言われています。私は講演会などで説明する場合は、非認知能力は“心の力”と表現しています。具体的にいうと、大きく以下の3つに分類しています。
①自分と向き合う力(自制心、忍耐、レジリエンスなど)
②自分を高める力(やる気、自信、探究心、目標への持続力など)
③他者とつながる力(協調性、共感、コミュニケーションなど)
非認知能力の中には、目標を立て長期的に努力をし続ける力=グリット(GRIT)や、自分や他者の感情を正確に認識・理解し適切にコントロールして活用する能力=EQ、困難や逆境に直面した際に立ち直る力やストレスに適応して回復する力=レジリエンスなども含まれます。つまり、認知能力以外は非認知能力と言え、とても広い範囲を指しているのです。
大事な力だとは思うけど…。「非認知能力」について抱いている感想は?
AI時代において大事な力だとは理解している「非認知能力」。では、この言葉に抱いている感想について、聞いてみました。

「大事な力だと思うけど、能力の実態や高め方が具体的にはわからない」(286人)が最多。そもそもどのような力なのか、ぼんやりとしかわからないという回答がもっとも多かったことを考えると、高め方もわからないというご家庭が多いのも納得です。
一方、次点には「大事な力だと思うし、積極的に情報収集して家庭教育に取り入れたい(取り入れている)」(209人)。子どもの非認知能力を高める重要性の高まりを感じます。
ただ「大事な力だと思うけど、家庭教育に取り入れるのは難しい(やり方、時間、金銭面など)」(157人)という声もあり、また、少ないですが「結局、《読み書き計算》などの《認知能力》の方が大事だと思う」(15人)という回答もありました。
「非認知能力」と聞いて、パッと思い浮かぶものは? 協調性、好奇心 etc.
では、より具体的にママ・パパたちが考える非認知能力とは、どのような力でしょうか。いちばん多く挙がったのが「協調性・コミュニケーション能力」(388人)、次いで「物事に対する意欲・好奇心」(350人)と続きました。周囲の人や社会とうまく付き合いながらも、自分の好きなことを見つけて突き進んでほしい、という願いを感じます。

「自制心、感情のコントロール能力」(252人)、「目標や計画を立てて進める力」(232人)、「忍耐力、我慢強く取り組む姿勢」(228人)、「自己肯定感・自己有用感」(228人)と、どの選択肢にも大差はつかない結果に。これらはすべて「読み書き計算」などの認知能力に比べて、目に見えづらい力です。
――非認知能力を測るのは、どのようにすればいいのでしょうか。
中山先生:まず、上記すべての選択肢が非認知能力です。これらの行動(姿勢)を評価する際は、“一時的ではなく習慣化しているか”、“子ども本人も自分ができているのかを把握し、見守る親御さんも同様に把握できているか”、“学校と家庭など状況が違っても同じ行動が取れているか”…などをチェックすることで評価できます。
とはいえ、非認知能力は他者比較ではなく、絶対評価が基本です。今の状態から、どう考え方が変わり、それが行動に表れるかを観察する必要があります。同じくらいの年齢の子と比較して評価できるものではありませんので、比べて不安になったりしないでくださいね。
わが子の「非認知能力」について。 どう伸ばせばいい? 有効な親の関わり方は

実際に家庭内で実践していることや、意識していることがあるかについては、「ない」(473人)が半数以上を占める結果となりました。「能力の実態や高め方が具体的にはわからない」という人が多く見られたことによるものと思われます。
では、具体的にはわからないし、実践もしていないけれど、「非認知能力を高めるために有効なこと」と感じていることは?

1位は「保護者や身近な人との探究的な会話」(480人)で、かなりの差をつけました。そこから「旅行・デイキャンプなど自然体験」(295人)、「博物館・科学館・美術館などに行く」(201人)と体験ものが続きます。
中山先生に、家庭で実践できることを聞いてみました。
――家庭でも非認知能力は伸ばすことはできるのでしょうか?
中山先生:非認知能力を伸ばすために、塾に通わせるなど特別なことをする必要はありません。日常生活の中で十分伸ばすことが可能です。私はよく「歯を磨いているだけでも伸びます!」とお伝えするほどです。
非認知能力は、望ましい行動が習慣化すれば、「力がついた」と評価できます。たとえば「あいさつ」などの基本的なコミュニケーションもそうですね。
そして、この力は誰かが教えるというよりも、環境を設計して、子ども自身が気づき、行動で表すものです。ですから、保護者がお子さんに指示をする前に、自らがお手本となることがいちばん大切であり、基本なのです。「環境は第三の先生」とも言われます。まずは親御さん自身が非認知能力について考え、そして行動するようにしてください。

――特に有効だと思うことという設問では、「保護者や身近な人との探究的な会話」が多数でした。
中山先生:上記の選択肢にある、すべてのことが有効と言えます。ご自身のお子さんの好きなこと(趣味)や熱中していること(習い事など)でしたらどれでもOK! 「好きなことだからつらい状況も耐えられる」「やりたいことだから我慢ができる」など、環境を日常の中で作ってあげてください。
そして、みなさんが有効と感じているように、親子の会話で行動を振り返ることがいちばん効果的です。親御さんはその姿勢(行動)を「よく頑張ってるね」「続けられるなんてすごい」「こんなこともできるようになったの?」と認め、そして励ましてあげるとさらに高まっていきます。
しかし、毎日仕事に家事に忙しい親御さんにとっては、改めて会話の時間を設けるのも難しい場合もありますよね。そういうときは、保育園や幼稚園、学童などの先生を頼っていいんです。親御さんだけしかできないことでもありません。

また、小さい頃から家庭以外の場所で親以外の人の中で生活をすることは、非認知能力を伸ばす上ではとても大切な経験になります。社会の中のコミュニティをうまく使って、親御さんだけで育児を抱え込まないようにしてください。
特別なことをしないと非認知能力は伸びないと思っている人も多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。そして、旅行などの非日常だけが非認知を伸ばすわけでもないので心配しないでください。日常生活の中で親子の会話を少しだけ意識して、お子さんが好きでやっていることの中での振り返りや、頑張っている姿を認めて、お子さんの行動を言葉で評価してあげていれば大丈夫です。
会話のポイント
①やったことにどういう意味があったのか
②行動したことでどんな感情を抱いたのか、何を思ったのか
③次はどうしたいのか
このポイントを踏まえることでリフレクション(内省)を誘っていくと、実はそこに何らかの非認知能力が見えてきます。自分で振り返ったことは「次に同じような状況になっても諦めずにやっていこう」「あのときできたのだから今回もできるはず」という次の行動につながっていくんです。
とはいえ、頑張ってお子さんに毎日質問し倒さなくても大丈夫です。力を抜いて、子どもと接してくださいね。
親から子どもへ、一方的に何かをやらせることは避けたい
最後に、「非認知能力」について知りたいことをリサーチ。「高める方法」(464人)が最も多い回答でしたが、あまり差をつけずに「やらない方がいいこと(保護者の行動・言動)」(381人)も挙がりました。

――「よくない関わり方」「NG行動」などがあれば教えてください。
中山先生:非認知能力を高めるための逆をすることがNG行動です。つまり、親から一方的に何かを「やらせる」行為です。
ただし、生きていく中で子どもがやりたいことだけをやらせていくことは不可能ですし、やるべきことをやらないことまで容認する…というのはダメですよね。そういうときは、子ども自身が“その気になる”ような働きかけを工夫してあげてください。
「子どもの困りごとのご質問」取材の際にもお話ししたように、褒められるから我慢しよう→みんなも我慢しているから我慢しよう→やりたいから我慢しよう→やりたくないけど我慢しよう…と発達の段階によってお子さんがうまくその気になれるような声かけの工夫をしてあげることが重要です。
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今回の調査からは、多くの親にとって「非認知能力とはどういう力なのか」という定義があいまいで、具体的に何をしたらいいのか、何をしてあげるべきなのか、不安を抱えていることがわかりました。
「お金をかけないと伸びない力なのでは?」「非日常を経験しないと得られない力?」などと勘違いされている方も多く、日常生活の中でも育むことができる力だと認識している方は少なかったようです。
続編では、中山芳一先生への具体的な質問と、その回答をご紹介していきたいと思います。ぜひ併せてご覧ください。
続編・中山先生のQ&Aはこちら
お話を伺ったのは
1976年1月、岡山県岡山市生まれ、All HEROs合同会社代表社員、IPU環太平洋大学特命教授。日本の教育者、著作家、学者。
・All HEROs合同会社 代表
・日本子ども若者学会 理事長
・岡山県子ども・若者未来会議 会長
・文部科学省進路指導審査会 委員
・日本非認知能力協会 会長
・子ども學びデザイン研究所 所長
・日本放課後児童指導員協会 理事長 ……など
- 【主な著書】
・『非認知能力の強化書』(2025年、東京書籍)
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・『教師のための「非認知能力」の育て方』(2023年、
明治図書)
・『「やってはいけない」子育て―非認知能力を育む6歳からの接し方』(2023年、 日本能率協会マネジメントセンター)
・『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(2020年、東京書籍)
・『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(2018年、東京書籍) -
……など多数
この記事を書いたのは
教育学部を卒業し、幼稚園・小学校教諭免許を取得するも、教師は母の希望だったため教師にはならず。自分自身の経験から、子どもは矯正せずにありのまま育てるのが一番だと思っている。勉強は嫌いだけと、学ぶことは楽しいと大人になって気づく。趣味は腸活と音楽を聴くこと。最近は子どもの影響で城・神社、世界遺産巡りにハマっている。