陰山先生:『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』はひらがな・カタカナドリルではありません。『1年生のかん字運筆ドリル』は漢字ドリルではありません。
「運筆」とは筆(筆記具)の持ち方や動かし方のことですが、私が言う運筆とは「知能教育」です。2冊の運筆ドリルは、子どもの知能が向上するように設計しました。きれいな線を書ける指先にする。指先のコントロールができる人間になる。そのために作ったドリルなのです。
藤井先生:ぞうきんを絞れない子どもたちというのが以前、メディアでも話題になりましたが、小学校低学年の子どもの中には、消しゴムで字を消せない子がけっこうな割合でいます。消しゴムに圧をかけて紙をこすることができないんですね。生活の変化もあって、子どもたちの指の力、指先の器用さが急速に失われているのです。

指を自由に動かせるようになると、知能が上がる! 集中力が身につく!!
陰山先生:何歳からひらがなを覚えさせるのがいい? 字を覚えさせるのに、何歳から鉛筆を持たせたらいい? という話をよく聞きますが、そのような早期教育の考え方はよくありません。よく頭を動かせと言うけれども、幼児学習は頭を動かす前に指を動かすんです!
多くの親御さんは、ひらがな50音はむずかしい。漢字を覚えるのはむずかしい。だから早く取り組ませて時間をかけたい、と考えていらっしゃる。でもそれは逆なのです。
文字を覚えることは実は簡単。指を自在に動かせるようになると、知能が高まります。そこから文字の学習を始めれば、あっという間に覚えられるのです。
だから、文字の練習を始める前に、お手玉やあやとり、おはじき、コマ回し、たこあげなどの遊びで、指先を動かす練習をしっかりとすることが大切です。指先の巧緻性を高めることで、脳の力を高めるのです。
指先の巧緻性が高まっていないのに、文字をきれいに書かせようとすると、子どもは指先を固めてしまいます。すると指が動かないので、手首を動かして書こうとする。文字は指先で書かなければならないのです。
藤井先生:まだお子さんが鉛筆を持てない、動かせない状態なのに、すぐ字を書かせようとするのは、お子さんにとってはきついことなんですよね。
でも、親としては早く文字を覚えてほしい。ひらがなが書けるようになってほしい。そういうときは、鉛筆を使わず、指で書かせるとよいでしょう。文字が書かれたカードなどを使って、字の形を見て覚えるのもよい学習です。
指を自由に動かせる力、それが学習の素地です。素地が育ったら、子どもたちはどんどん吸収できるようになりますし、集中力も爆発的に上がります。逆に素地ができていないと、やる気にならないし、集中力もない。指先をきちんと動かす練習をしながら、音読でもしっかり頭を鍛える。それをくり返していくうちに脳の力が高まります。脳の力が高まれば、後からでも短期間で、ひらがなでもカタカナでも漢字でも、さっと覚えられるようになります。
陰山先生:私の言葉で言うと「勉強とは集中する練習。集中しない学習はバカになる練習」です。
運筆ドリルで、正しい線を引く力を身につけよう!
陰山先生:教育論『和俗童子訓』(わぞくどうじくん)を表した江戸時代の儒学者・貝原益軒(かいばら・えきけん)は、「勉強は書くことから始まる」というようなことを言っています。
私は、江戸時代の寺子屋の学習が人類最強の学習方法だと思っています。
でも、師匠が書いた線をそのままなぞるような学習方法、単調で機械的な反復練習は無意味だと、戦後、長らく言われてきました。
そうではないのです。漢字や文字を覚えるために書くのではなく、自分の思い描く線を正確に指先がトレースする力を身につけるために書く。正しい線を引く力を身につけさせるのが第一の学習であるということを、寺子屋の先生たちは知っていたのでしょう。
これは結局、「百ます計算」と同じなのです。「百ます計算」は同じ大きさの枠の中に、数字を100回も書き込んでいく。それをさっとできるようになるまで同じ問題をくり返し、何度も、高速で、丁寧に書いていく。
「百ます計算」も運筆練習も、すべては指先のコントロールなのです。
『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』は、ひらがなとカタカナを使って、運筆の練習をします。『1年生のかん字運筆ドリル』は、1年生で学習する漢字80字を使って、運筆の練習をします。そうして、知能を高めていくドリルなのです。

藤井先生:『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』では、文字を書く練習の前に、運筆の基礎練習として、生き物の体の線や模様を書くプリントを11枚設けました。
鉛筆は親指・人差し指・中指の3本で持ち、指先を動かして線や文字を書きます。大きな図形などを書かせると、指ではなく、腕や手首を動かして線を書いてしまいます。
これらのプリントでは、子どもの指で鉛筆を動かせる距離にあわせて、短い線を書く練習を反復できるように作っています。

藤井先生:文字の練習プリントには、すべてのますの左側にお手本を入れました。お手本には筆順と、とめ・はね・はらいなど、注意する部分を記号で示しました。文字を書く練習をする前に、お手本の字を、指で1、2、3となぞりながら、筆順を確かめましょう。あわせて、どこが「はね」で、どこが「はらい」なのかも確かめる。
そうしてから書くことで、ただ書くだけではなくて、ものすごく頭をつかう練習になります。
このような意味でも、運筆は脳のトレーニングになります。もちろん、大人にとってもよい脳トレになりますよ。


陰山先生:文字の練習プリントでは、同じ4文字を2日続けて練習します。1日目のプリントは24mmますです。2日目のプリントでは20mmと18mmのますになります。
24mmますは小学1年生でよく使われる大きさ、20mmますは2年生、18mmますは3年生で使われる大きさです。
こうして同じ文字を小さく書く練習をすることで、指先を器用に動かす力が身につけられるように設計しました。

藤井先生:幼稚園の年長や小学1年生にとって、18mmますで文字を書くのはむずかしいことなので、ここは「チャレンジ!」としました。20mmますでの練習のあとすぐに取り組んでもよいですが、ドリルを最後のページまで学習してから、あらためてチャレンジしてもよいでしょう。
最初の筆記具は三角軸、芯は濃くてやわらかい2B以上がおすすめ
陰山先生:文字の練習においては、筆記具選びも重要です。鉛筆の持ち方は学力の向上に大きな影響があるからです。正しい持ち方をすると、鉛筆の可動域が広がり、とめ・はね・はらいがきれいに書けるようになります。力まずに書けるので、手が疲れにくくなり、書くことに集中できるようになります。
正しい持ち方を身につけるために、最初は三角軸の鉛筆で練習しましょう。ただ、鉛筆は子どもには軸が細すぎて、強く握ってしまいがちになります。ですので、私は三角形で太い軸のシャープペン、コクヨの『鉛筆シャープ』をおすすめしています。

陰山先生:鉛筆でも『鉛筆シャープ』でも、運筆のストレスを軽減するために、濃くてやわらかい2B以上の芯を使いましょう。薄くて硬い芯でしっかり書こうとすると、筆圧が高まり、指先が固まって自由がきかなくなります。
持ちやすい筆記具とやわらかい芯、そしてこのドリルを使って、力まずに文字が書けるように練習してください。
◎『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』を学習し終えたら、次は『1年生のかん字運筆ドリル』です。後編では、『1年生のかん字運筆ドリル』の特徴と効果的な使い方について詳しく語っていただきます。
後編はこちら
ひらがなとカタカナ、小学1年生で学習する漢字80字の中の24文字を使って、指先で鉛筆を自在に動かす力、きれいに文字を書く力を養うドリル。1日目に24mmますで練習し、2日目に同じ文字を20mmます、18mmますでより小さく書く練習をすることで、指先を器用に動かす力が身につけられます。
小学1年生で学習する漢字80字を使って、整った字を書くための「漢字のきまり」を学びながら、指先で鉛筆を自在に動かす力、きれいに文字を書く力を養うドリル。2日続けて同じ文字を練習するのは『ひらがな・カタカナ』編と同じ。最後に小学2年生で学習する漢字にチャレンジします。
『百ます計算 新装版』に取り組むための準備をするドリル。最初に「十ますかけ算」を練習します。次に「あなあきかけ算」「十ますわり算」で、わり切れるわり算を練習。さらに「あまりのあるわり算」の「くり下がりなし」、もっとむずかしい「くり下がりあり」に取り組み、わり算の完全習得をめざします。
累計発行部数320万超の大ヒットドリル『陰山メソッド 徹底反復 百ます計算』の「新装版」(2026年3月発売)。「百ます計算」のたし算・ひき算・かけ算各14日分と、あまりのあるわり算「百わり」を14日分収録。同じ問題をくり返すことで、必ずタイムが速くなるので、「やればできる!」という自信がつきます。
お話を伺ったのは
かげやま・ひでお 1958年兵庫県生まれ。陰山ラボ代表、「考える子どもを育てる塾」陰山式スコーラ監修。「早寝・早起き・朝ごはん」による子どもたちの心身の健全化、「読み書き計算」の徹底的な反復指導による学力向上を提唱。独自の指導法「隂山メソッド」は常に進化を続け、全国各地の小学校に導入され、大きな成果をあげている。
お話を伺ったのは
ふじい・こうじ 1961年広島県生まれ。比治山大学・安田女子大学非常勤講師、広島大学客員講師。広島県尾道市立土堂小学校勤務時代、当時の陰山英男校長を教務主任として支え、学校の改革に取り組んで、数々の成果をあげる。
取材・文/細川達司(小学館) 撮影/橋本 玲 写真提供/藤井浩治
