陰山先生:実は、私の知人のお子さんに『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』を使ってもらったところ、劇的な変化があったんですよ。その子は小学6年生なのですが、ほとんど文字が書けませんでした。文字の読み書きに限定された学習障害、いわゆるディスレクシアと思われていたのですが、その子がひらがなを書けるようになったのです。
すごいのはそれからです。その子が6年生の理科のテストで90点を取ったのです! 元が70~80点だったのならまだわかりますよ。20点、30点、40点だった子が、ひらがなが書けるようになると、90点取れた!
これはあくまでひとつの例ですが、やはり運筆練習は脳を高める。そして学習能力を上げるのです。ただ、テストの解答はすべてひらがなで書かれていたそうです。これを漢字で書けるようにしてあげたい。
今回『1年生のかん字運筆ドリル』ができたので、このドリルを使って練習してもらおうと思っているのです。

整った字を書くための「漢字のきまり」を発見しよう!
陰山先生:漢字は、点や画の組み合わせでできています。ですので、文字を書く練習をする前に、基本の点画、横画・縦画・折れ・左払い・右払い・曲がり・反り・点をしっかり反復練習することが効果的です。
『1年生のかん字運筆ドリル』では、漢字の練習プリントの前に、基本点画の練習プリントを入れてあります。『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』にも、同じプリントをカタカナの練習の前に入れてあります。


藤井先生:『1年生のかん字運筆ドリル』の最大の特徴は、運筆+字形ドリルであるということです。このドリルの漢字練習は7つのステップで構成してありますが、ステップ1~5でひとつずつ、整った字を書くための「漢字のきまり」を学習していきます。
「漢字のきまり」は、小学1・2年生の書写で学習する内容です。それを、各ステップのトビラでひとつずつ解説しています。

藤井先生:解説には、子どもたちが自発的に学習できるように、いろいろな工夫を凝らしました。
最初の「◆くらべてみよう!」では、整った字とそうではない字を並べています。どちらが整って見えるのか、子どもたちが選び、丸で囲みます。これはぜひ親子でクイズを解くように話し合ってください。
この時点では、子どもたちは直感で選びますが、親から教えこまれるのではなく、自分で発見することで思考力が高まります。字形への意識も高まります。なによりもやる気が高まるのです。
次は「漢字のきまり」の音読です。子どもたちは字形の違いに直感で気づいても、それを言語化するのはむずかしい。「漢字のきまり」は子どもの気づきを言語化したものです。これを目で見て、声に出して、耳で聞くことで、記憶が定着していきます。
さらに「■見つけよう!」で「漢字のきまり」を自分で確かめます。注意して書くポイントを自分で見つけ、なぞり書きすることで、「漢字のきまり」を指で覚えるのです。

注意すべきポイントを意識して書くことで、思考力が上がる!
陰山先生:漢字の練習プリントは『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』と同じ仕組みです。1日目は24mmますで練習し、2日目は20mmと18mmのますで、小さく書く練習をする。そうすることで、指先を器用に動かす力が身につけられます。
藤井先生:『1年生のかん字運筆ドリル』の漢字練習プリントでは、各ステップで学習する「漢字のきまり」に連動して、なぞり書きをする文字に、注意して書くポイントを点線で示しました。ただお手本を見て書き写すのではなく、ポイントを意識して線(画)を書くことで、脳が活性化され、漢字の覚えが速くなります。

藤井先生:ステップが進むごとに、子どもたちが使える「漢字のきまり」が増えていきます。このドリルでは、学習した「漢字のきまり」を次のステップでも積み重ねて使えるように工夫しました。
あとのステップのトビラには、「漢字のきまり●も使おう!」という注記を施しました。漢字練習プリントには、既習の「漢字のきまり」による注意すべきポイントにも印をつけています。
前のステップの内容を、次のステップで復習することで、知識の定着が高まるとともに、最後にはすべての「漢字のきまり」を使って運筆する能力が身につくようになっています。


5つの「漢字のきまり」を、意識せずに使えるようになろう!
陰山先生:『1年生のかん字運筆ドリル』の7つのステップ、5つの「漢字のきまり」は、大人でもあまり意識できていないポイントだと思います。
ステップ1:文字の中心をそろえよう!→「山」「小」など、長い縦画が、ますの中心にくるように練習します。
ステップ2:長い横画は、丸みをつけよう!→「十」「上」など、長い横画に少し丸みをつけることで、横画が長く、伸びやかに見えるように練習します。
ステップ3:画の間を同じ大きさにしよう!→「山」の縦画の間、「王」の横画の間が同じ大きさになるように練習します。
ステップ4:いくつかある画は、一つだけ長くしよう!→「王」にある3本の横画は、いちばん下の横画だけを長くし、ほかの2本は同じ長さにします。「林」にある2本の縦画は、右の縦画を長くします。
ステップ5:四角の形で、縦画の向きを変えよう!→「田」のように横長の四角や真四角は、縦画を斜めに書きます。「目」のように縦長の四角は、縦画をまっすぐに書きます。
ステップ6:むずかしい漢字の中心を見つけよう!→「空」のように点と縦画がまん中にくる字、「文」のように点と画の交わりがまん中にくる字などを練習します。
ステップ7:2年生の漢字にチャレンジ!→ステップ1~6で学習したすべての「漢字のきまり」を使って、小学2年生の漢字16文字を練習します。
親御さんもきっと発見があるはずです。よい脳トレにも、美文字トレーニングにもなるので、ぜひ親子でいっしょに取り組んでほしいですね。

藤井先生:5つの「漢字のきまり」は大人の方にとっても役立つ知識です。親子でいっしょに頭の中に入れ、意識し、考えながら書く練習をくり返してください。徹底反復することで、やがて考えなくても手が自由に動くようになります。そうなるとお子さんはどんどん自分で文字が書けるようになっていきます。
陰山先生:『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』も『1年生のかん字運筆ドリル』も、表紙に「入学準備」「小学校低学年」と書いてありますが、本当は全学年で取り組んでほしいんですよね。
藤井先生:小学校低学年のうちはまだ、担任の先生が丁寧に文字を教えてくれます。それが中学年・高学年になると学習する漢字も増えて、そのような時間が取れなくなってしまう。そのままにしておくと、字が変形したまま、くせがついてしまいます。
特にひらがなの線は独特ですし、大人でもきれいに書くのがむずかしい文字なので、『ひらがな・カタカナ運筆ドリル』は全学年どころか、大人の方にもぜひ取り組んでいただきたいと思います。
前編では、指先コントロールの大切さについて読むことができます。
ひらがなとカタカナ、小学1年生で学習する漢字80字の中の24文字を使って、指先で鉛筆を自在に動かす力、きれいに文字を書く力を養うドリル。1日目に24mmますで練習し、2日目に同じ文字を20mmます、18mmますでより小さく書く練習をすることで、指先を器用に動かす力が身につけられます。
小学1年生で学習する漢字80字を使って、整った字を書くための「漢字のきまり」を学びながら、指先で鉛筆を自在に動かす力、きれいに文字を書く力を養うドリル。2日続けて同じ文字を練習するのは『ひらがな・カタカナ』編と同じ。最後に小学2年生で学習する漢字にチャレンジします。
『百ます計算 新装版』に取り組むための準備をするドリル。最初に「十ますかけ算」を練習します。次に「あなあきかけ算」「十ますわり算」で、わり切れるわり算を練習。さらに「あまりのあるわり算」の「くり下がりなし」、もっとむずかしい「くり下がりあり」に取り組み、わり算の完全習得をめざします。
累計発行部数320万超の大ヒットドリル『陰山メソッド 徹底反復 百ます計算』の「新装版」(2026年3月発売)。「百ます計算」のたし算・ひき算・かけ算各14日分と、あまりのあるわり算「百わり」を14日分収録。同じ問題をくり返すことで、必ずタイムが速くなるので、「やればできる!」という自信がつきます。
お話を伺ったのは
かげやま・ひでお 1958年兵庫県生まれ。陰山ラボ代表、「考える子どもを育てる塾」陰山式スコーラ監修。「早寝・早起き・朝ごはん」による子どもたちの心身の健全化、「読み書き計算」の徹底的な反復指導による学力向上を提唱。独自の指導法「隂山メソッド」は常に進化を続け、全国各地の小学校に導入され、大きな成果をあげている。
お話を伺ったのは
ふじい・こうじ 1961年広島県生まれ。比治山大学・安田女子大学非常勤講師、広島大学客員講師。広島県尾道市立土堂小学校勤務時代、当時の陰山英男校長を教務主任として支え、学校の改革に取り組んで、数々の成果をあげる。
取材・文/細川達司(小学館) 撮影/橋本 玲 写真提供/藤井浩治・四井 寧
