「英語は勉強するものではなく、表現するもの」。英語劇「Kids English Theatre」で“本当に使える英語力”を育める理由とは

英語を学んでいても、「話すことに自信がない」と感じている人は少なくありません。そんな中、楽しく本格的な英語表現に挑戦できる場として誕生したのが、英語・演劇・ダンス・アート・映像を融合した舞台プロジェクト「Kids English Theatre 2026」。プロジェクトを立ち上げたのは、親子向けオンライン英語コミュニティ「Eigo-A-GoGo(EAGG)」を運営する谷口藍さん。谷口さんは「英語は勉強するものではなく、自分の思いを伝える言葉」と考え、子どもたちが楽しみながら英語を使える環境づくりに取り組んでいます。今回は、谷口さんが考える英語教育や、「Kids English Theatre 2026」に込めた思い、家庭でも実践できる英語との関わり方について伺いました。

子どもたちの「使える英語力」を育む。海外経験から生まれた「Eigo-A-GoGo」

──まず、谷口さんが運営されている親子向けオンライン英語コミュニティ「Eigo-A-GoGo」を立ち上げたきっかけや、活動に込めた思いについて教えてください。

谷口さん:これまで、英語教室を開いたり、図書館や公共施設で親子向けの英語絵本の読み聞かせイベントを開催したりと、子どもたちが英語に親しめる場づくりに取り組んできました。2020年、より多くの親子が英語を身近に感じられる場所をつくりたいという思いから、「Eigo-A-GoGo」を立ち上げました。

私自身、イギリス、オランダ、オーストラリアで約5年間生活し、様々な国の人たちと働き、暮らす経験をしました。その中で強く感じたのは、英語を使って活躍するためには、英語を話せるだけでは十分ではないということです。

「Eigo-A-GoGo」レッスン風景

谷口さん:もちろん、英語を話せることは大切です。でも、それだけでは自分の思いを相手に伝えたり、信頼関係を築いたりすることはできません。必要なのは、語学力・実践力・人間力の3つです。この3つを兼ね備えた「使える英語力」を育むことが、「Eigo-A-GoGo」の理念です。

さらに子どもたちが「使える英語力」を身につけるためには、3つの要素があると考えています。それは、英語が日常にあること、英語で夢中になること、そして目的を持って英語を使うことです。この3つを大切にしながら、子どもたちが「英語を勉強する」のではなく、「英語を使って表現する」楽しさを感じられる場づくりをめざしています。

英語は「勉強」ではなく「表現するもの」

──「使える英語力」を育むために、大切にしていることを教えてください。

谷口さん:英語は教科として勉強するものではなく、コミュニケーションのための言語です。そのため、まず意識しているのは、英語が特別なものではなく、日常の中に自然とある環境をつくることです。

例えば、レッスンの中では英語であいさつをしたり、ゲームをしたり、歌を歌ったりと、子どもたちが「英語を使っている」という感覚よりも、「楽しい時間を過ごしている」という感覚を持てるように工夫しています。英語が生活の一部になることで、自然と英語に親しめるようになります。

「Eigo-A-GoGo」レッスン風景

谷口さん:さらに意識しているのが、「英語で夢中になること」です。子どもは「勉強しよう」と思っているときよりも、好きなことに夢中になっているときのほうが、驚くほど多くのことを吸収します。そのため、子どもたちの興味や好奇心を大切にしながら、「もっと伝えたい」「もっと知りたい」という気持ちを引き出すレッスンを心がけています。

そして、「目的を持って英語を使うこと」です。単語や文法を覚えることがゴールではありません。自分の考えや気持ちを伝えたり、相手と交流したりするために英語を使う経験を積み重ねることで、「英語は伝わる」「英語って楽しい」という実感につながっていきます。

だからこそ、「Eigo-A-GoGo」では、英語を学ぶだけでなく、「英語を使って表現する場」を数多く用意しています。子どもたちが自分の言葉で伝える喜びを感じられることを、何よりも大切にしています。

英語で「表現する喜び」を届けたい。「Kids English Theatre」誕生のきっかけ

──「使える英語力」を育む中で、「Kids English Theatre」はどのようにして誕生したのでしょうか。

谷口さん:演劇との出合いは大学時代までさかのぼります。当時、英語劇サークルに所属し、『オズの魔法使い』などの作品に出演していました。役になりきって英語でやり取りをする楽しさを知り、「英語は勉強するものではなく、表現するものなんだ」と実感したことが、今の活動の原点になっています。

その後、ニューヨークで立ち上げられ、日本を中心に日本語と英語の2か国語による参加型の英語劇を行っている「劇団バナナ」の活動を知りました。

物語の世界に飛び込んで遊びながら英語に触れることができるという劇のかたちにとても感動しました。「劇を通して子どもたちが英語で表現する場を作りたい」と思い、劇団バナナの代表の方に連絡したところ、私の思いに共感していただき、一緒に「Kids English Theatre」を立ち上げることになりました。

日本語と英語の2か国語による参加型の英語劇を行う「劇団バナナ」

谷口さん:現在はオンラインを中心に英語を教えていますが、子どもたちが実際に集まり、仲間と一緒に一つの作品をつくりあげる経験も大切にしたいと考えていました。オンラインで学べることに加え、同じ場所で力を合わせながら一つの舞台を完成させる経験には、また違った学びがあります。

「Kids English Theatre」でも、英語を学ぶことをゴールにするのではなく、英語を使って自分の気持ちや物語を表現することを大切にしています

英語劇を通して育まれる3つの力

──演劇を通して、子どもたちにはどのような力が育つと感じていますか。

谷口さん:私が演劇を通して育んでほしいと考えているのは、「伝える力」「つくる力」「やりきる力」の3つです。

まず大切なのが、「伝える力」です。英語を話せるだけではなく、自分の思いや気持ちを相手に届けることが、コミュニケーションでは何より大切だと考えています。演劇では、せりふを話すだけではなく、「どうすれば相手に伝わるだろう」と考えながら表情や声の大きさ、動きまで工夫します。その積み重ねが、自分の考えを相手に伝える力につながっていきます

次に、「つくる力」です。舞台は一人では完成しません。仲間とアイデアを出し合い、お互いを認め合いながら、一つの作品をつくり上げていきます。自分とは違う意見に触れたり、協力して一つの目標に向かったりする経験は、学校生活や将来にも生かせる力になると思っています。

そして、「やりきる力」です。発表会という一つの目標に向かって練習を重ね、本番を迎えるまでには、楽しいことだけではなく、大変なこともあります。それでも仲間と励まし合いながら最後までやり遂げた経験は、「自分にもできた」という大きな自信になります。

私は、英語を学ぶことだけではなく、こうした経験を通して子どもたちが大きく成長してくれることを願っています。

「Kids English Theatre 2026」オンライン稽古の様子

英語が「伝わった」経験が、子どもを大きく成長させる

──これまでの活動で、印象に残っている子どもたちの変化はありますか。

谷口さん:印象に残っているのは、海外から日本を訪れている方に英語でインタビューをする活動です。子どもたちは事前に質問を練習し、「どこから来ましたか」「日本でどこへ行きましたか」などを英語で聞いたり、日本の文化を紹介したりします。

最初は「英語が伝わるかな」と緊張していた子も、実際に会話ができて相手が笑顔で答えてくれると、「英語って伝わるんだ」という実感を持つようになります。その経験が大きな自信につながり、「もっと話してみたい」という気持ちも生まれていきます。

また、親子で一緒に参加することも大切にしています。保護者も子どもと一緒に英語で話しかけることで、「親子で挑戦する時間」になり、家庭でも英語を楽しむきっかけになっています。

過去に実施されたプロジェクションマッピング活用イベントの様子

家庭でできる「英語を好きになる」環境づくり

──ご家庭でも、子どもが英語を身近に感じるために、保護者ができることはありますか。

谷口さん:いちばん大切なのは、「英語を勉強にしないこと」だと思っています。

小さな子どもは、勉強だからではなく、「楽しいから」「好きだから」という気持ちで夢中になります。歌を歌ったり、絵本を読んだり、ごっこ遊びをしたりと、遊びの中に英語を取り入れるだけでも十分です。

また、お子さんが好きなことと英語を組み合わせるのもおすすめです。電車や恐竜、動物、ダンスなど、興味のあることを英語で楽しむことで、「もっと知りたい」という気持ちが自然と生まれます

保護者の方が英語を話せる必要はありません。「一緒にやってみよう」「楽しそうだね」と寄り添う姿勢が、お子さんにとっては何より心強い応援になります。英語は、できる・できないではなく、「楽しい」「伝わった」という経験を積み重ねることが大切です。

『MOMOTARO』に込めた平和への願い

──今回の「Kids English Theatre」の演目に『MOMOTARO』を選んだ理由を教えてください。

谷口さん:桃太郎は日本を代表する昔話ですが、今回上演する「MOMOTARO」は、劇団バナナ代表の七瀬さんが、昔話「桃太郎」をベースに、世界平和への願いを込めてつくられたオリジナル作品です。単に鬼を退治する物語としてではなく、「違いを認め合い、ともに生きること」の大切さが込められています。

今回の「Kids English Theatre」では、子どもたち自身が登場人物の気持ちを考えながら演じます。役になりきることで、「相手はどう感じているのだろう」「自分だったらどうするだろう」と自然に考える機会にもなります。

英語劇は、英語を話すことだけが目的ではありません。物語を通して様々な価値観に触れ、人の気持ちを想像し、自分の考えを表現することも大切な学びだと思っています。

子どもたちには、この作品を通して英語の楽しさだけでなく、人と協力することや、お互いを思いやる気持ちも感じてもらえたらうれしいですね。

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8月23日(日)に調布市文化会館にて行われる「Kids English Theatre 2026」。今回限りではなく、毎年継続して開催することを視野に入れたプロジェクトだそう。今後の活動に興味がある方は、まず谷口さんのインスタグラムをのぞいてみてはいかがでしょうか。

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お話を聞いたのは

谷口 藍 合同会社Logicca代表 Eigo-A-GoGo(EAGG)主宰

この記事を書いたのは

やまさきけいこ ライター

美容師として働いた後、子育てをきっかけにWEBライターとして活動をスタート。現在は親子向けWEBメディアを中心に、子育て・教育・ライフスタイル分野の記事を執筆している。親子イベントや商品レビュー、専門家インタビューのほか、映画や配信作品のレビュー記事も手がける。

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