小学生でも言語化が得意になれる!?「作文や日記でフリーズ…」を解決! すぐ実践できる3つのステップとは? ショートショート作家・田丸雅智さんに聞く「言語化スキル」の育て方

「子どもが考えを上手く言葉にできない」と悩んでいませんか?今回、新刊『小学生でもできる言語化』が発売4か月で6万2千部を突破しメディアでも話題沸騰中、現代ショートショートの旗手である田丸雅智さんにインタビュー!子どもにとって言語化が難しいのは当たり前、家庭でできる「待つ」接し方、AI時代だからこそ育みたい「自分の言葉」の価値までたっぷりお話を伺いました。親子の時間が増える夏休みに必見です!

著書で話題!「言語化の3つのステップ」とは?

全国各地で子どもたちに向けたショートショートの書き方講座や言語化ワークショップを開催している田丸雅智さん。

──まず、「言語化」とはどのようなことなのでしょうか。

田丸さん:簡単に言えば、考えたり感じたりしたことを言葉にすることです。おもちゃのブロックをイメージしてみてください。言語化は、言葉のブロックを組み立てて、何かの形を作り上げること、という感じです。

──田丸さんはご著書『小学生でもできる言語化』(ダイヤモンド社)で、たった3つのステップで言語化できるとおっしゃっていますね。

田丸さん:「ステップ1」は「考える・感じる」。対象に対して自分がどんなことを考えるか、感じるかをあれこれ考えます。たとえばブロックでお城を作りたいときに、「自分はどんなお城を作りたいのかな」と頭の中にイメージを思い浮かべるような感覚です。

「ステップ2」は「言葉のブロックで組み立てる」。頭の中にできたイメージをもとに、ああかな、こうかな、と試行錯誤して、言葉でお城の形を目指して組み立てていくステップです。

「ステップ3」は「完成させる」。最後に細かいところをチェックして、お城の形をしっかり完成させます。実際は、てにをはや細かい表現などをチェックする推敲のステップですね。

小学校での講座の様子。「言葉のブロック」を組み立てる感覚で、自分だけのアイデアを言葉にしていきます。

──3ステップだと簡単に見えますね。では、言語化が苦手な人は、どこでつまずいているのでしょうか?

田丸さん:それぞれのステップごとに、つまずいている方はいらっしゃいます。その中でひとつご紹介すると、そもそも段階を踏まず、いきなり「ステップ3」からやろうとしている方は少なくないと感じます。お題についていきなり原稿用紙に書き始めようとする、話し言葉でもいきなり話そうとする。それで「できない」「苦手だ」と思っている方が結構いらっしゃる印象です。

準備をせずにステップ3からやろうとしてもできないのは当たり前。なぜなら、「3」からやっているんですから! ステップ1、2、3と丁寧に段階を踏んでトレーニングを重ねていけばできるようになっていきますし、いきなり「3」ができているように見える人も、ほぼ無意識の中でステップ1と2がバッとできているだけなんです。練習次第で誰でもできるようになると思っています。

自分の考えを言葉にするのは難しい

─3つのステップを知ると、親の子どもへの向き合い方も変わりますね。そもそも、子どもにとって考えを言語化するのは難しいものなのでしょうか?

田丸さん:もちろんそうです! そもそも「言語化」は成長過程で少しずつ獲得していくスキル。特に未就学児や小学校低学年のお子さんは、まさにその獲得の初期段階にいます。最初からうまく言葉にできないということがあるのは、当たり前です。

─「できて当たり前」と思わずに、温かい目で見守ることが大切なんですね。

田丸さん:はい。言葉は周りの大人や環境から「授けてもらう」側面と、「やり取りの中で育まれていく」側面があります。大人は「なんで言えないの?」と焦るのではなく、お子さんの立場に立って一緒に伴走してあげることが何より大切になると思います。

─とはいえ、日常の忙しさの中で常に伴走するのは、親としてもなかなか大変だと感じてしまいます……。

田丸さん:そうですよね。もちろん、ずっと付き添うのは理想であって、現実には家事や仕事で時間がとれないものです。僕は理想と現実の両方をわかったうえで、「ではどうするか」をそのつど選択していくのが大事だと思っています。毎日完璧にやろうとする必要はありません。「あ、最近そういう時間を取れていなかったな」と思い出したときに、ちょっと立ち止まって取り組んでみる。それだけでも十分やりやすくなりますし、効果があるはずです。

家庭でできる! 言語化トレーニング

─家庭でできる言語化の練習にはどんなものがありますか?

田丸さん:おすすめなのは、「言葉で世界を分かち合う」ことです。

「世界」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、日常の身近な風景のことです。夏休みはお出かけの機会も増えると思うので、目についたものや感じたことを一緒に言葉にしてみるのがぴったりですね。

「道端に白い花が咲いているね」「なんだか金魚みたいな形をしているね」というように、保護者の方が言葉のサンプルを、押し付けない程度に言ってみる。そのうえでお子さんに「どう思う?」と問いかけ、お子さんからの言葉を「待つ」。そうやって感じたことを分かち合っていくと、子どもにとっても言葉にすることが自然な習慣になっていくのではないでしょうか。

─大人が見本を見せながら、一緒に感じていくんですね。大人側に求められるマインドはありますか?

田丸さん:僕がワークショップなどでもずっと大事にしているのが「待つ」ことです。
大人はどうしても時間がなかったり先が読めたりするので、子どもがしゃべっていると「要するに〇〇でしょ?」と話を引き取ったり、さえぎったりしてしまいがち。気持ちはすごくわかりますし、やっぱり常にとはいきませんが、なるべくそこをぐっとこらえて、子どもが自分の言葉で最後まで出し切るのを「待つ」ことが重要です。

子どもが手元で思考をめぐらせている間は、焦らず「待つ」ことが大切。

─つい先回りして言ってしまいます…。では、子どもが黙り込んでしまったときは、どう対応すればいいのでしょうか?

田丸さん:お子さんが黙っているときは、「わからない」と思考停止になっている場合と、頭の中で必死に言葉をつむごうとしている場合があります。後者の場合、子どもが考えているときに大人が矢継ぎ早に質問を重ねると、せっかくの思考の邪魔をしてしまいます。

たとえ返事がなくても、感覚としては、自分が待てたと思ったところから、さらにワンテンポ・ツーテンポ待つ。それでも返事がないときに、ようやく声をかけたり質問を変えたりするイメージです。大人が先回りして子どもから言葉を「奪わない」姿勢を持つことが、子どもの言葉の力、ひいては考える力を育てていくのではないかと思っています。

「料理をしている母に向かってずっと話してました(笑)」

子どもの頃のお母さまとの対話が、田丸さんの言葉の原点のひとつになっていたそう。

─ところで、田丸さんはお話がとてもお上手な印象があります。子どもの頃から「話すこと」が得意だったのでしょうか?

田丸さん:実はここ最近、改めて振り返って言語化できたことなのですが、僕はもともと「話し言葉」が得意で、幼少期は「書き言葉」との接続がうまくできていなかったタイプなんだなと感じているんです。

親や周りの人から聞くと、僕は小さい頃からとにかくずっとしゃべり続けている子どもだったらしく(笑)。自分でも覚えているのですが、楽しかったことや嫌だったことなど、料理をしている母親の横の壁にもたれかかって、ずっと話しかけ続けていた記憶があります。

それに、昔話や絵本の朗読テープなどをよく聴いていたので、子ども時代のインプットとしても「話し言葉」の割合がすごく多かったんです。だから「考えること」や自分の状態を整理することを、まずは「話し言葉」の中で自然とやっていたんだと思います。

─お母さまが田丸さんのお話をしっかり受け止めてくださった体験が、言葉の土台になっていたのですね。 一方で、現在はショートショート作家としてご活躍されていますが、昔から「書くこと」も得意だったのですか?

田丸さん:それがまったくそんなことなくて……、僕は大学・大学院も工学部出身の理系なんですが、小学生の頃は読書も作文も国語も、全部苦手でした(笑)。

高学年のときに親に勧められてショートショートと出会い、もともと好きだった工作と通じるアイデア重視の物語に魅せられました。そこから少しずつ本を読むことが好きになって、やがては書くことや国語も好きになっていって。その中で、得意だった「話し言葉」が「書き言葉」へと徐々に接続されていった感じでした。

だからこそ、いま文章を書くのが苦手なお子さんの気持ちはすごくよくわかるつもりですし、自分が実際に通ってきた道なので、練習次第で誰でも上達できるんじゃないかと考えています。

AI時代だからこそ、「自分の言葉」を持つことが未来を拓く

年齢を問わず「自分の言葉で表現する楽しさ」を届ける活動を続けている田丸さん。

──最近は生成 AI が普及し、誰でも簡単に綺麗で整った文章が作れる時代になりました。そんな時代において、「言語化する力」を育てる意味を田丸さんはどうお考えですか?

田丸さん:僕は、AI はパートナーのようなものだと考えています。

ただ気を付けなければならないのは、ある程度自力で組み立てるトレーニングを積んだ大人が使うのと、言葉の獲得期にある子ども時代に使うのとでは意味合いが違うということです。生成 AI はキーワードを入れるだけでそれなりの文章を作ってくれますが、AI に代わりに言葉をつくってもらうことに頼りすぎると、「自分は本当はどう思っているんだろう?」と自分自身の考えや気持ちが見えなくなってしまう可能性がある。これは自分の存在意義にも関わってくる大きな問題だと思っています。

自分の言葉で語る経験がないまま AI に頼ってしまうと、AIという他人がいきなり「ステップ3」を代わりにやってくれるわけなので、「言語化の3つのステップ」のほとんどすべてのトレーニングができません。算数で言えば、足し算や引き算のドリルを一度も解いたことがないまま電卓を使って成長していくようなもの。いざ AI が使えない場面に直面したとき、自分で考える勘所すら掴めなくなってしまいます。

言葉と思考は密接に関わっています。AI に任せて自分で言葉をつむげなくなると、思考も失ってしまい得ます。その結果、無気力感や虚しさに繋がってしまうのではないか、さらには自分という存在が揺らぐことにも繋がってしまうのではないかと危惧しています。

──AIの言葉に頼りきるのではなく、まずは「自分の中から言葉を出す」という経験が大切なのですね。

田丸さん:そうなんです。自分の中から出てきた言葉が、最初はたとえ平均的なものであっても、大勢の人と同じような意見であっても全く構いません。結果的に AI が出してきた答えと同じになったとしてもいいんです。大切なのは、人と同じでもいいから「自分の中から出てきた言葉」をまずしっかりと見つめること。最初はAIにヒントを「授けてもらう」ような使い方ならよいと思うのですが、代わりに書いてもらう・話してもらう方向に行き過ぎてしまうと、自分の言葉を育てるのが難しくなってしまいます。

──「自分の言葉」を持てるようになると、子どもたちにはどのような変化が生まれるのでしょうか?

田丸さん:たとえば、コミュニケーションがスムーズになったり、自分の考えや気持ちを整理できたりするようになると思います。ほかに、自分で未来をつくれるようにもなっていきます。というのも、言語化が上達すると、自分の「好きなこと」や「幸せだと感じること」など、自身のコアを言葉にして理解できるようになります。すると、それをもとに自分に合った生き方を能動的に選択していけるようになる、つまりは未来をつくっていけるようになるんです。

僕自身も、「アイデアでつくるのが好き」「小さいものが好き」「短い時間で終えられるのが好き」などといった自分のコアを言語化して突き詰めた結果、ショートショート作家という天職にたどり着くことができました。

──最後に、保護者の方へメッセージをお願いします。

田丸さん:まずは「スリーステップ」の「ステップ1:考える・感じる」から言葉にしてみてください。完璧ではなくても構いません。親子の時間がたっぷりあるこの夏休みに、まずは日常の何気ない会話の中で「どう思う?」と問いかけてみることから始めてみませんか? そのやり取りの積み重ねがきっと、お子さんの言語化の土台になっていくはずです。

お話を聞いたのは

田丸雅智 ショートショート作家

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、2013年から全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど幅広く活動している。書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品「桜蝶」が掲載。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』シリーズなど多数。メディア出演に「情熱大陸」「SWITCHインタビュー達人達」など多数。

田丸雅智 ダイヤモンド社 1760円(税込)

「自分の考えをうまく言葉にできない…」。そんな悩みをマルッと解決!小学校・中学校・少年院で教えてきた小説家による、世界一やさしい「言語化」の授業。これを読めば、自分の気持ちも考えも、誰でもなんでも「言語化」できるようになれてしまう!(ダイヤモンド社公式HPより)

この記事を書いたのは

黒澤真紀 ライター

愛媛県出身。大学時代まで自然豊かな愛媛で過ごし、都内の学習塾に勤務した後、2011年よりフリーライターへ。教育分野を中心に、医療やライフスタイルなどのテーマで執筆しています。息子たちが小学生の時に大学院を受験し、2019年、お茶の水女子大学大学院修士課程修了(社会科学修士)。子育てもひと段落。最近、俳句を始めました。

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