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子どもの個性はさまざま。学び方は?
「学校では、みんなと同じように勉強する」。
日本の学校では、同じ学年の子どもたちが同じ教室に集まり、同じ教科書を使って、同じ学年の学習内容を学ぶ――。それが、学校教育の基本的なスタイルとして長く定着してきました。
戦後の日本では、住んでいる地域や家庭の状況にかかわらず、すべての子どもが一定水準の教育を受けられるようにすることが重要な課題でした。そのため、全国共通の学習指導要領に基づき、学年ごとに学ぶ内容をそろえ、同じ教室で多くの子どもに同じ内容を教える仕組みが整えられてきました。「皆に同じ教育を保障すること」が、教育の機会を保障する一つの方法だったのです。

もちろん、皆が一緒に学ぶことには大きな意味があります。しかし、子どもは一人ひとり違います。先生の話を聞きながら学ぶのが得意な子もいれば、図や動画を見たほうが理解しやすい子、大人数の教室では落ち着かなくても、少人数なら集中できる子、障害があり、学習やコミュニケーション、学校生活の中で特別な支援を必要とする子もいます。
一方で、授業の内容をすぐに理解し、「もっと難しいことを勉強したい」と感じる子や、特定の分野で突出した才能を示す「特異な才能のある子ども」もいます。
子どものニーズに応じて学ぶ場を工夫する「特別支援教育」
一人ひとりの違いに応じた学びを支える仕組みの一つが、障害のある子どもを対象とした「特別支援教育」です。「特別支援学校」だけでなく、通常の学校の中に設けられた「特別支援学級」、必要な時間だけ別の教室に通う「通級」による指導など、さまざまなかたちで行われています。大切なのは、子どもが学校に合わせるだけでなく、子どもの教育的ニーズに応じて、学ぶ場や支援の方法を工夫するという考え方です。
また、特別支援学級の子どもが通常の学級で一緒に授業を受けたり、行事に参加したりする「交流および共同学習」も行われています。つまり、現在の学校教育は「みんな一緒」か「別々」かの二択ではありません。その子に合った環境で学びながら、必要な場面ではともに学ぶ。そうした柔軟な学び方が広がっています。
一方で、課題もあります。子どもに合った学びの場を用意することが、結果として「分離」を固定化することにならないか。通常の学級と特別支援学級の学びをどうつなぐのか。そして、「一人ひとりに合った学び」と「ともに学ぶこと」をどう両立させるのか。現在の学校は、そのバランスを模索しているところだといえるでしょう。
「教室に入れない=学校で学べない」ではない
こうした「子どもに合わせて学ぶ場を考える」という発想は、障害のある子どもに限ったものではありません。学校には来られるけれど、自分のクラスに入りづらかったり、集団で過ごすことに疲れてしまったりする子どももいます。
そうした子どもたちのために、学校内に「校内教育支援センター」を設ける学校も増えています(小・中合わせて全国約1万6000校に設置)。学校には登校できるけれど、自分のクラスには入りづらい。そんな子どもが、校内の別の場所で過ごしたり、学んだりできます。
また、学ぶ場所を変えなくても、同じ教室の中で学び方を工夫することもできます。先生の説明を聞くだけでなく動画を見る、タブレットで調べる、自分のペースで課題に取り組む、興味や理解度に応じて発展的な課題に挑戦する――。学習に困難を抱える子だけでなく、特定の分野で高い能力を発揮する子どもにとっても、こうした柔軟な学び方は重要です。一人ひとりの理解度や興味・関心、学習の進み方に応じて学び方を工夫する「個別最適な学び」という考え方にもつながります。

では、学校以外の場所で学んだり、過ごしたりすることを選ぶ場合はどうでしょうか。学校外にも、子どもたちの学びや育ちを支える場があります。
教育委員会などが設置する「教育支援センター」のほか、民間のフリースクールなどもあります。「教育支援センター」(全国に約1,900か所)は、学校に行きづらさを感じている子どもが通い、相談や学習に取り組んだり、他の子どもやスタッフと過ごしたりしながら、社会的な自立に向けた支援を受けることができます。
不登校の子に「学びの多様化学校」という選択肢
さらに、学校に通うことが難しい子どものために、学びの場そのものを変える選択肢もあります。その一つが「学びの多様化学校」(全国に84校/文部科学省は全国で300校の設置を目指している)です。
以前は「不登校特例校」と呼ばれていた学校で、不登校の子どもたちの学びの場を確保するため、子どもの実態に合わせた特別な教育課程を編成して教育を行います。
通常の学校と同じように教科を学びますが、授業時間や学習内容、体験活動などを柔軟に組み立てることができます。例えば、体験活動を多く取り入れたり、学び直しの時間を設けたり、子どもの興味や関心を生かした学習を行ったりするなど、さまざまな工夫があります。
ここでも大切なのは、「学校に行けない子どもを別の場所に移す」という発想だけではありません。「これまでの学校の時間割や学び方では難しい。でも、この子に合う形なら学べるかもしれない」と考え、学び方を変えていく。まだ数は少ないですが、そうした考え方を具体的な形にした選択肢の一つです。
「普通にできるか」ではなく、「どうすれば学べるか」
ここまで見てきたように、現在の学校には、さまざまな学びの場や方法があります。
・通常の学級で学ぶ。
・通常の学級で学びながら、必要な工夫や支援を受ける。
・通級による指導を利用する。
・特別支援学級で少人数の学びを行う。
・校内教育支援センターで、自分のペースで学ぶ。
・教育支援センターなどで支援を受ける。
・学びの多様化学校で、柔軟な教育課程のもとで学ぶ。
・得意な分野や興味・関心を生かして、発展的な学習に取り組む。
すべての学校や地域にこれらの仕組みがあるわけではありません。また、これらにより、すべての問題が解決するわけでもありません。保護者として大切なのは、「どこで学ぶか」だけではなく、「この子が安心して、持っている力を発揮しながら学ぶには、何が必要なのか」という視点です。
学校には、みんなと一緒に学ぶことの良さがあります。でも、「みんなと同じ」であることが、必ずしも「学びやすい」ということではありません。障害のある子にも、学習が苦手な子にも、集団で過ごすことが苦手な子にも、学校に行きづらさを感じている子にも、そして「もっと学びたい」という子にも、それぞれに合った学び方があります。

もし、子どもが学校生活や学習に何らかのつらさを感じているように見えたら、「うちの子は、みんなと同じようにできない」と考えるのではなく、「うちの子は、どんな環境なら安心して学べるのだろう?」と考えてみる。それは、子どもを特別扱いすることではありません。
一人ひとりの違いを前提に、その子に必要な学びを保障することです。「普通の学校に通えるか」だけではなく、「わが子に合う学び方は何か」という視点から学校を見る。これからは、そんな見方も大切になっていきそうです。
そして、その答えを親御さんだけで見つける必要はありません。学校の先生やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、地域の支援窓口など、一緒に子どもの育ちを考えてくれる大人はたくさんいます。保護者自身がひとりで抱え込まず、周りを頼ってみてください。子どもはもちろん、いちばん近くにいる保護者が心穏やかにいられること。それが、子どもにとって何よりの「学びの土台」になるはずです。
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古内しんご|教育コーディネーター・小学校教諭
この記事を書いたのは
フリーライター・エディター、認定子育てアドバイザー。教育、子育て、PTAなどの分野で取材・執筆、企画編集を行う。著書に『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』(厚有出版)など。All About「子育て・PTA情報」ガイド。2025年7月、PTAを取り巻く環境をより良くすることを目的に「PTA・保護者組織を考える会」を共同代表として立ち上げ。対話の場の創出や、PTAオンライン相談窓口の運営を通じ、保護者が無理なく楽しく関われる「これからのPTA」の形を模索・発信している。