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小学生で算数をあきらめるのは早い!
――「算数の宿題になると子どもが不機嫌になる」と悩む保護者は多いですよね。
アキさん:そうですね。小学生のお子さんを持つ保護者の方なら、一度は頭を抱えたことがある悩みだと思います。算数は国語などの他教科に比べて「できる・できない」が目に見えてはっきりわかってしまう教科なんですよね。
――たしかに、算数で一度つまずくと、自信を失いやすい印象があります。
アキさん: そうなんです。「自分はできないんだ」と苦手意識を持ちやすい教科ですし、親御さん側も「このままだと中学や高校の数学でついていけなくなるのでは…」と焦りや不安を抱きがちです。でも、小学生の時点で諦めるのは早いですよ!
――アキさんは小学校教諭を務められただけでなく、ご家庭でも中学2年生の娘さんと小学6年生の息子さんのお母さんでいらっしゃるんですよね。
アキさん:はい。うちの子どもたちは2人とも理数系が好きみたいなのですが、それは私が教えこんだからではなくて(笑)。私自身もわが子の教育で泥臭く葛藤し、イライラしたり工夫したりを繰り返してきたんです。だからこそInstagramでは、教員としての経験だけでなく母としての実体験も交えながら、家庭での関わり方や具体的な解決法をお伝えしたいと思っています。
――アキさんがお子さんの幼少期から意識していた工夫はありますか?
アキさん: 私がいちばん避けたかったのは「子どもが算数を嫌いになること」でした。だから幼児期にドリルで先取り教育をするようなことはせず、日常のコミュニケーションや遊びの中で「数」と「量」を一致させる工夫をしていました。
例えば、おままごとをしながら「いちごを3つください」と言って渡してもらったり、階段を上るときに「1、2、3…」と数を唱えながら上ったり。机に向かって「勉強」としてドリルを解かせる前に、生活の中で自然に数字や量に触れる経験を重ねておくことで、小学生になって算数の授業が始まったときも抵抗なくスムーズに入っていくことができたと思います。

学年が上がるにつれて「見守る」割合を増やす
――普段どのようなペースで家庭学習を進めていらっしゃいますか?
アキさん:6年生の息子は、平日、「学校から出される宿題」+「タブレットを使った通信教材」をやっています。宿題でその日学校で習ったことを復習し、タブレットで類似問題を繰り返し解くような感じです。週末には「自主学習ノート」を。教科書の問題をノートに写して解いたり、自分で苦手な単元をインターネットで検索して、無料プリントを印刷して復習したりしています。
――息子さんが自ら苦手な単元のプリントを打ち出して復習するなんてすごすぎます! 最初から自分でできていらしたのでしょうか?
アキさん: いえいえ。息子が低学年の頃は「これやってみたら?」と私からプリントを用意して渡していました。最初は息子に好きなプリントを選ばせるところからスタートし、中学年くらいから「ここが苦手」と自分で選べるようになっていったんです。小学校で使っているChromebookと家庭の端末が同じタイプなので、高学年になると、検索キーワードを自分で入力してインターネットでプリントを出せるようになりました。

――息子さんが段階を踏んで自立できるようにアキさんが導いていったのですね。
アキさん:最初から「自分でやりなさい」と言ってもできる子はいません。低学年のうちに「嫌でも勉強するのは当たり前」というベースを作った上で、中学年で「自分でドリルを選ぶ」という選択権を与え、高学年で徐々に手を離していく。最初から一人でやらせるのではなく、親の立ち位置をグラデーションのように変化させていきました。
低学年は、宿題や音読、丸付けなど親の手がいちばんかかる時期。娘が低学年のときは、娘が「やりたくない!」と親子バトルになって私がイライラしたこともたくさんありました。それでも「低学年のうちに勉強を習慣化させる」ことだけは諦めず、子どもたちと同じ空間にいてすぐ手助けできるようにしていました。
――アキさんのお話を伺っていると、学校の授業や教科書での学びをとても大切にされている印象を受けます。
アキさん:子どもは一日の大半を学校で過ごしますよね。その45分間の授業で「先生が何を言っているかわからない」状態が毎時間続くのは、子どもにとってものすごい苦痛だと思うんです。だからこそベースとして、学校の授業を理解できることをいちばん大切に考えています。小学生の算数は積み重ねなので、学校の教科書の内容をしっかり理解し、つまずきを残さないことが何より重要なんです。
親子で楽しく学べる! おすすめのアプリ&ドリル
――具体的に、家庭で活用できるおすすめのアプリやドリルはありますか?
アキさん:楽しんで取り組める便利なツールはどんどん頼ります。 私が実際に使ったり、おすすめしたりしているアイテムを紹介しますね。

【アプリ】
・『シンクシンク(Think!Think!)』(ワンダーファイ)対応ストア:iOS・Android・Amazon
パズル感覚で頭を使い、算数に必要なひらめきや思考力、空間認識能力を育むことができる知育アプリです。
・『九九チャレ』(HappyCode Lab)対応ストア:iOS・Android
2年生で習う九九を、順番通り・ランダム・穴埋めなどシンプルかつゲーム感覚で学べるアプリ。暗記カードを黙々とめくるのが苦手なお子さんに最適です。
【ドリル】
・『くもんの文章題総復習ドリル』(くもん出版)638円(税込)
計算は得意だけれど文章題になると途端に解けなくなる…というお子さんにおすすめ。あえて1学年下のドリルを選び、「解けた!」という成功体験と自信をつけてあげると効果的です。
・『自分のあたまで考えるドリル』(TAC出版)iML国際算数・数学能力検定協会(監修)/880円(税込)
読み解く力だけでなく、ひらめきや数の感覚も養うことができる一冊。じっくり考える習慣を身につけたいお子さんに向いています。
・『イメージ読解力ドリル』(Gakken)アキ(監修)/2026年12月17日発売/1,375円 (税込)
文字は読めるけれど、問題の情景が頭の中でイメージできず立式できない子向けに「見える化」された注目のドリルです。
――学校現場で多くのお子さんを見てこられて、小学生が算数でとくに苦戦する「つまずきポイント」はどこでしょうか?
アキさん:算数は学年が上がるにつれて実生活から離れ、抽象的な計算になっていきますよね。低学年は「時計」、中学年は長さ・水のかさ・面積(㎡・a・haなど)の単位変換、高学年は「割合」「速さ」「分数・小数の抽象的な計算」でしょうか。

――もし子どもが「わからない!」「できない!」とつまずいてしまったとき、家庭ではどうフォローすればよいですか?
アキさん:算数は「積み重ね」の教科。途中で一箇所でもつまずいてしまうと、「これもわからない、あれもわからない」と苦手意識が膨らみ、算数という教科全体に対して心を閉ざしてしまうお子さんを何人も見てきました。
そのため、「どこまでが理解できていて、どこからつまずいているのか」を親が整理してあげることが大切だと思います。例えば、2年生で「時刻と時間」がわからない場合、1年生の「時計の読み方」まで戻ってみる。前の学年や確実に解けるレベルまで戻って、「あ、ここまではちゃんとできているね!」とまずは確認し、失った自信を取り戻させてあげます。
復習をするときは「苦手な問題をいきなり10問解かせる」ようなやり方は逆効果です。「まずはこの1問だけ、全力で一緒にやってみようか」と問題の量をぐっと減らしてあげる。少し頑張れば階段を1段上れるような「スモールステップ」を用意してあげることが、苦手克服の近道です。
――高学年の算数になると、保護者自身が「教えられない…」と悩むケースも多いです。
アキさん:親が学校の先生のように完璧に教えこもうとする必要は、まったくありません! 教科書を見ても教え方がわからないときや、親の時代の解き方と違ってらちがあかないときは、学校の先生に「家庭でここが教えられなかったので、フォローをお願いできますか」と伝えて頼ってしまっていいんです。
親の最も大切な役割は、勉強を教えることではなく、わからなくて嫌になったときの子どもの気持ちを受け止めてあげることです。「高学年の算数って本当に難しいよね」「毎日頑張っててえらいよ」と寄り添ってあげるだけで、子どもは「また頑張ってみよう」と前を向くことができます。
「宿題は終わったの!?」親子バトルを回避するには
――学校から帰ってきた子どもがダラダラして宿題をやらないとき、ついつい「勉強しなさい!」と怒鳴ってしまいます…。

アキさん:気持ちはわかります(笑)。でも、それをやると子どもは100%反発しますよね。大人だって疲れてソファーで休んでいるときに「早く晩ご飯作って!」「まだ作ってないの?」と言われたら強烈にイラッとするはずです。自分が言われて嫌な言葉は、子どもにとっても同じなんですよね。
そこでおすすめなのが、「何時から勉強やる予定?」と軽い感じで質問する声かけです。子どもが自ら「3時からやる」と答えたら、自分の言葉に責任を持たせる。ポイントは、3時になったら親は指示を出すのではなく、「3時過ぎたよ」とだけ伝えるタイムキーパー役に徹することです。
――それでも動かない、時間になってもテレビをやめないときはどうすればいいでしょうか?
アキさん:タイムリミットをはっきり伝えるのが効果的です。「ママは4時から夕飯の準備をするから、丸付けや音読を聞いてあげられるのは4時までね。それ以降は手伝えないよ」と伝えます。娘が低学年の頃、それでも動かないことがありました。そのときは、心を鬼にして約束通り一切手伝いませんでした。宿題のプリントを子どもがぐちゃぐちゃにやろうが親は手出しをしない。
そうした本気のやり取りを経験することで、「これは親のためではなく、自分がやらなきゃいけないことなんだ」と子どもが納得し、徐々に自分で行動できるようになっていきました。
先生向けの発信から、ママのお悩み相談へ
――そもそもアキさんがInstagramの発信を始められたきっかけは何だったのでしょうか?
アキさん:教員として、産休・育休を含めて15年ほど小学校に勤めていたのですが、退職を決意したときに「自分と同じように退職やキャリアで悩んでいる先生はいないかな」と情報を探したのがきっかけでした。最初は自分の葛藤や決断の過程をブログや記事に書くことからスタートしたんです。
ですが発信を続けていくうちに、現役の先生方以上に、小学生のお子さんを持つ保護者の方からのメッセージが増えていきました。「担任の先生にはちょっと聞きづらい学校生活トラブルの相談」や「家庭学習でここがつまずいているけれど、どう教えたらいい?」といったリアルなお悩みです。そうした質問に一つ一つお答えしていく中で、自然と今のスタイルになっていきました。
――元小学校の先生と聞くと「勉強が何でもできて、教え方も完璧だったのでは?」と思われがちですが、ご自身の子供時代はどうだったのでしょうか?
アキさん:全然そんなことないですよ! 私は体育も苦手で見本も見せられないタイプでしたし、成績も真ん中の真ん中というごく平均的な人間でした(笑)。算数も、ひらめきで解けるようなタイプではありません。
でも、だからこそ「なぜこの子はここでつまずくんだろう?」「どうしてすんなり理解できないんだろう?」と、子どもの気持ちがすごくわかるんです。自分自身も感覚で理解できないタイプだったからこそ、かみくだいてわかりやすく伝えるというサポートが得意になったのだと感じています。

――最後に、子どもの勉強法や算数で悩んでいる保護者の方へメッセージをお願いします。
アキさん: 今日お話しした全ての方法を完璧に実践しようと力まないでほしいですね。「アキのやり方を頭の片隅に置いておいて、今日試せそうな声かけを1つだけやってみる」、「イライラしそうになったのをグッと抑えて、一緒に1問だけ解いてみる」、「おすすめされたアプリを1つダウンロードしてみる」。その一歩から、親子の関係や子どもの学習環境はよい方向へ変わっていくと思います。
この記事を読んでくださっている時点で、みなさんは「子どものために何とかしてあげたい」という深い愛情を持っているすばらしい親御さん。できないことばかりに目を向けるのではなく、できている部分を認め合いながら、親子で自信を持って進んでいってくださいね。
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お話を聞いたのは
愛媛県出身。大学時代まで自然豊かな愛媛で過ごし、都内の学習塾に勤務した後、2011年よりフリーライターへ。教育分野を中心に、医療やライフスタイルなどのテーマで執筆しています。息子たちが小学生の時に大学院を受験し、2019年、お茶の水女子大学大学院修士課程修了(社会科学修士)。子育てもひと段落。最近、俳句を始めました。