「算数が苦手なら、中学受験より英検を!」「受験するなら偏差値を10下げてでも英検取得」--総合型選抜の専門家・孫 辰洋さんによる“小学生からの英語学習戦略”

中学受験の志望校偏差値を下げてでも英検がおすすめ!?
総合型選抜・学校推薦型選抜などの推薦入試対策や、英検®などの英語資格取得に特化した完全オンラインの学習塾・教育サービスを提供する、リザプロ株式会社の代表 孫 辰洋さん。『小学生が90日で英検2級に合格する!』の著者でもある孫さんに、今回は小学生のうちに英検を取得するべき理由と、どのように家庭でフォローすべきなのかについてお話を伺いました。

算数が得意なら中学受験、苦手なら英検

Q. 英検受験の低年齢化が進んでいると思うのですが、小学生でも英検取得は必要ですか?

僕は、3、4年後には小学生のほとんどが英検を取得していると思います。ですので、必要というよりは持っていて当たり前の時代になる。

小学生で英検に関するご相談を受けるのは、中学受験を検討している保護者様が多く、その際は「算数が得意なら中学受験ですが、苦手なら英検に振り切りましょう」とお話ししています。というのも、中学受験においては算数が得意な子が有利ですが、大学受験まで見てみると話が変わってくるからです。

大学受験においては、学部にもよりますが、数学よりも英語ができる方が有利に働く入試システムになっていることが多い。この矛盾が日本の教育にはあると思います。大学受験までの長い目で見た場合、苦手な算数にこだわるよりは、英語に振り切ってしまった方がメリットが大きいと言えます。

英語外部検を利用する大学が増えていくと予想

例えば立教大学では、大学側は英語の試験を作らずに、英検か共通テストでの受験になりました。こうした大学は今後増えると言われています。一発勝負の共通テストの結果と、CSEスコア2400点程度を取得すると、大学や入試方式によっては英語が満点扱いになることもあり、入試で大きな強みとなる英検のどちらにするのかと言ったら、当然、何度も受けた中でいい結果を提出できる英検の方がメリットがありますよね。

このような仕組みは、今までの大学入試(ペーパーテスト)では、2技能しか測れなかったものを、英検を導入して4技能の能力を見たいという大学側の意図があります。 

進学志望の中学校のレベルに合わせて、英検の目標を決めましょう

Q:大学受験に英検が必要になる場合もあると思うのですが、小学生から取得を目指すのは早すぎないでしょうか?

私立中高一貫校の英語の授業の進みの速さを甘くみてはいけません。とても速いペースで進んでいき、中学の段階で高校英語まで学びます。お子さんがどのような中学に進学するのかで、英検の目標を何級にするのかが変わってくると思いますが、できるならば準2級まで進めておくと後が楽です。

おすすめは、お子さんが進学する可能性のある中学で、成績上位3割に入れる程度の英語力を身につけさせておくイメージを持つことです。「自分は英語ができる方なんだ」という自信を持って中学校生活が送れるようにフォローしてあげてください。

時間に余裕のある小学生のうちに、英検対策をするのがベスト

中学生以上になると、勉強以外にも部活動や課外活動などでとにかく忙しくなります。そこに英検の勉強が加わるわけですから、勉強のスケジュール管理も難しくなります。英検の難易度も年々レベルアップしているので、3級から2級を取得するまでに1年以上かかるのが普通です。

それを踏まえれば、時間に余裕がある小学生のうちに、3級や準2級、可能なら2級取得を目指しておいた方が、中高での英語学習がとても楽になります。

中学受験の偏差値を下げてでも“英語優先”が有利!

あくまでも僕の価値観ですが、中学受験では通う中学校の偏差値を10下げてでも英検を取っておいた方がいいと考えています。理由は2つあります。

①中学~高校生活の充実度が増す

例えば偏差値50の私立中高一貫校に英検2級を持ってる子が入学した場合、かなり有利な立場になります。海外プログラム、国際探究プログラム、模擬国連やスピーチコンテスト、サマースクールなどのチャンスを掴み取りやすくなるのです。“高い英語力”という証明があることで、中高での過ごし方の充実度が大きく変わります。

②大学進学に有利

中学受験をする理由は「6年後の大学受験のため」という方がほとんどです。そう考えたとき、高偏差値の学校に無理して入学するよりも、偏差値を10下げてでも英検を取得していて、なおかつ内申点が高い方が、総合型選抜試験での大学受験には有利になります。

今、中学受験の勉強で偏差値を上げるために焦っているご家庭は、ぜひ広い視野を持っていただきたいと思います。

小学生の英検対策はヒアリングから。映画・歌を英語で

Q:では、小学生の英検対策は何から進めたらいいですか?

英語の4技能の中でも、特に時間がかかるのが「ヒアリング」です。

最近は、お子さんを幼稚園からインターナショナルスクールや英会話に通わせてる方も増えていると思いますが、中学受験で断絶されてしまうと、中学に入って「あれ? 何も聞き取れなくなっている」という現象が起こります。そういうご家庭を見ていて思うことは、“英語を聞き取る耳”を維持するため、日常の中で英語に触れる時間を確保しておく必要があるということです。

今まで英語教育に関して何のアプローチもしてこなかったお子さんに対しては、突然英検を取得しようと焦らずに、好きな映画を英語で見たり、英語の歌を聴いたりするなど、エンタメから英語に触れる機会を増やしてみてください。突然英検対策をさせると、英語嫌いになってしまう可能性が高まるので注意が必要です。

高度な単語力・文法力は不要! ヒアリング+ライティングで合格できる

Q:まさに、小学生から英検取得の勉強をさせると英語嫌いにならないか心配です。どのような手順で学ばせたらいいのでしょうか?

多くの大人が勘違いしているのが、英語学習は単語と文法からだと思っているところです。ですが、子どもがいちばん嫌いな英語の勉強は単語を覚えることです。逆に、単語を楽しく覚えられる子は適性があるとも言えます。

もちろん、単語を楽しく覚えられる子はそのまま覚えてください。ですが、(僕もそうでしたが)ほとんどの子どもが単語を覚えることをつらく感じます。

ですから、ライティングやリーディングを通して、新しく出てきた単語を覚えさせていくというアプローチを取ります。僕の塾でも、アウトプットからインプットさせる方法で対策をしていきます。

ライティングが飛び抜けていれば合格できる

まずライティングからです。内容、構成、文法、語彙の4つのセクターで、それぞれ4点で16点。エッセイライティングで、「あなたはこれについてどう思う」と聞かれて書く問題と、もう一つが英語の文章を英語で要約するライティングです。エッセイと要約で合計32点になります。

ライティングがほぼ満点でリーディングで点数が取れていない英検の合格スコア例 ※現在は配点が変更になっています

向かって右側のシート2級の子は、リーディング39%、リスニング37%、ライティング94%。これで合格です。 左の子に比べて、平均点でどちらもリーディングもリスニングも相当下回っていても、ライティングが飛び抜けるだけで合格できるのです。

英検の専門家としてはっきり申し上げると、小学生の英検取得には難しい文法用語を最初からすべて理解しておく必要はありません。少なくとも2級突破まではほとんど必要ありません。

特に小学生の英語学習は完璧主義で進めてはいけません。なんとなく英語が読めているけど、なぜ読めているのかわからない。そんなふわっとした状態でいいんです。後からつながっていきますので、このふわっとしている状態がベストだと思ってください。

ライティングのコツは、日本語でロジカルに考えること

Q:ライティングからスタートするのが良いとのことですが、どのような手順で進めるのでしょうか?

ライティングで点数を取るコツは、問われていることに対しての答えがロジカルかどうかです。

例えば「これから海外に旅行に行く人は増えると思いますか?」という質問に対して、多くの小学生は「増えると思います。なぜなら私も海外旅行が好きだからです」と答えます。ですが、これでは問題に対しての答えにはなっていませんよね。まずトピックを日本語できちんと考えさせる訓練をした上で、ライティングに入りましょう。

ロジカルに考えたら、次は英語の型を覚えるのが近道

英語のライティングはストラクチャー(構成)が決まっているんです。第一に(ファーストリー)、なぜなら、第二に(セカンドリー)、なぜなら、そしてオーバーオールとして最後にコンクルージョン(結論)…という流れがあります。このように決まった文章の型を使うことで、ライティングで満点を取ることができるのです。

小学生のうちは、こういう英語の型を覚えさせることがとても大事です。英語のルールを理解して書き慣れておくと、将来のビジネスメールにおいての英語にも活きてきます。

英語塾は不要、過去問が最適解。AIの活用もおすすめ

Q:英語塾に通わずに英検対策をしたい場合、どのような方法がありますか?

まず英検の過去問集から、ライティングとリーディングをたくさん抽出してやっていくことです。さらに、短い文章をAIにたくさん作らせて、それを読んでみたり、文章を書いてみたり、知らない単語を調べていくのもおすすめです。

要は、アウトプットしながらインプットさせる順番で対策を進めてください。

英検の過去問の参考書を出版している旺文社さんは、デジタル版の英検過去問集でライティングのテキストプロンプトを提供しています。お子さんが書いた文章をそのまま入力すれば採点してくれる仕組みがあるので、それをご家庭で解いていくだけで合格できると思います。

僕の塾は、短期間で英検取得できるように指導していますが、目前の受験で英語を利用しようと考えているご家庭以外は、高額な塾代を払ってまで英検を取得する必要はないと思います。市販の過去問を解いてお子さんのペースに合わせて対策を取るのがいちばんです。

子どもの24時間のうち何を優先するか。適性を見極めながら、お子さんのペースで英検を

小学生のうちに英検準2級や2級レベルの取得を目標にすると、必ず何かを捨てなければいけません。英検の対策をしながら、塾も習い事も全部をこなすことはほぼ不可能です。ご自身のお子さんの24時間を、何を優先してどの程度ストレッチをかけていくのか、保護者様がコントロールしてあげなければいけません。

準2級以上の資格取得を目指すのであれば毎日ライティングすることは必須です。まずは日本語で考え、それから英語に直していく方法はとてもシンプルですが、楽ではないのがおわかりいただけるかと思います。

日頃、ニュースや新聞などをよく見ているお子さんや、国語が得意なお子さんはライティングの上達がとても速いです。準1級の問題になると社会問題に対しても問われますので、英語力だけでなく他の知識も必要になってきます。焦らずに学習を進めてください。

僕は、全員が小学生のうちに準2級や2級を目指した方がいいと言いたいわけではありません。それぞれのお子さんのペース・適性を見極めつつ、小学生の余裕があるときに英検取得に時間を割いておくことが、後に有利になるということをお伝えしておきたいのです。

英語などの語学の勉強は、時間と労力、お金を投資してリワードが返ってきやすい教科です。ですから、限られたお子さんの時間、教育にかけるお金の中で、それぞれのご家庭に合った英検対策を見つけてほしいと思います。

孫さんの記事はこちらもおすすめ

「中学受験=いい大学に入るため」は時代遅れ! 総合型選抜の専門家・孫 辰洋さんに訊く、12歳までに親がやるべき本当のこと。キーワードは“気質”と“観察”
なぜ総合型選抜(旧AO入試)が増えているの? まずは、僕の専門としている大学入試の部分からご説明していきたいと思います。 国内...

お話を伺ったのは

孫 辰洋 リザプロ株式会社 代表取締役

2000年、埼玉県生まれ。2023年、早稲田大学政治経済学部卒業。日系華僑の両親のもとに生まれ、何度か日本とアメリカ・ニュージーランド・中国を行き来しつつ、中学校の途中から本格的に日本に拠点を移す。受験生時代、中国の名門・清華大学と早稲田大学に総合型選抜(AO入試)で合格。このとき中国で出会った現地の受験生と日本の同世代の人たちの大学や勉強に対する考えかたの違いに直面し、日本の教育産業に携わることを決意する。
2019年、早稲田大学政治経済学部に入学、同時に起業。自身の総合型選抜での経験を活かしてオンライン家庭教師サービスを開始し、人気を博す。2020年6月にリザプロ株式会社を設立し代表取締役に就任。総合型選抜(AO入試)に特化した塾として、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学など、多くの名門大学への合格者を輩出。2025年6月から、大学の推薦入試情報を掲載する「推薦入試データベース」を同社の推薦入試専門メディア「未来図」にて公開。志願条件や日程などの入試情報、過去の合格者の志望理由書が無料で閲覧できるサービスとして話題を呼ぶ。

著書に『小学生が90日で英検2級に合格する!』(新流舎)、『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』(ダイヤモンド社)がある。

この記事を書いたのは

鬼石有紀 ライター

教育学部を卒業し、幼稚園・小学校教諭免許を取得するも、教師は母の希望だったため教師にはならず。自分自身の経験から、子どもは矯正せずにありのまま育てるのが一番だと思っている。勉強は嫌いだけと、学ぶことは楽しいと大人になって気づく。趣味は腸活と音楽を聴くこと。最近は子どもの影響で城・神社、世界遺産巡りにハマっている。

編集部おすすめ

関連記事