学習指導要領の改訂にともない、2020年度から小学生の学習内容が変わります。そこでこの記事では、どのように変わるのか、小学校の学習指導要領の改定ポイントを解説。また、体育、国語、算数、社会、理科、道徳、外国語のそれぞれの学習指導要領の改訂ポイントもご紹介します。
目次
小学校の学習指導要領の改定ポイントを解説
小学校の学習指導要領の改訂が行われます。それにより「外国語」や「道徳」が教科化されて完全実施され、プログラミング教育やアクティブ・ラーニングなどが授業に取り入れられます。ここでは、その学習指導要領について解説します。
小学校の学習指導要領とは?
「学習指導要領」とは、日本全国どこの学校でも一定の水準が保てるように、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準のことを言います。なお、小学校で使われる教科書や時間割は、これを基にしてつくられています。
「学習指導要領」が、現在のような形で定められるようになったのは昭和33年から。それ以来、ほぼ10年ごとに改訂が行われています。
昨今では、主に下記のような改訂がありました。
・1989(平成元)年改訂時には、小学校1・2年で「生活科」を導入。
・1998・1999(平成10・11)年改訂では、「総合的な学習の時間」を導入。
・2008・2009(平成20・21)年改訂時には、小学校5・6年で「外国語活動」を導入。
・2015(平成27)年一部改正時には、「道徳」が「特別の教科」化。
改定はいつ?
学習指導要領が改訂されるのは、小学校は2020年度からです。ちなみに、2018年より移行措置を開始し、先行実施されている授業などもあります。
改定のポイントは?
今回の学習指導要領の改訂ポイントは、大きく3つあります。
【1】主体的・対話的で深い学び
主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点から「どのように学ぶか」も重視して、授業が展開されます。例えば、見通しをもって、粘り強く取り組む力が身につく授業や、自分の学びを振り返り、次の学びや生活に生かす力を育む授業などです。
【2】「カリキュラム・マネジメント」の確立
「カリキュラム・マネジメント」の確立により、教育活動の質を向上させ、学習効果の最大化を図ります。具体的には、学校教育の効果を常に検証して改善したり、教師同士が連携して複数の教科の連携を図りながら授業をつくったり、地域と連携してより良い学校教育を目指します。
【3】社会に出た後も活かされる教育
子ども達が社会に出てからも学校で学んだことを活かせるよう、「学びに向かう力、人間性」、「知識及び技能」、「思考力・判断力・表現力」の3つの力をバランスよく育みます。
教育内容の改訂としては、「外国語」の教科化、「道徳」教科化、「プログラミング教育」の導入などが実施されます。
「体育」の小学校の学習指導要領
2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。そのことも踏まえ、体育の授業では、いくつかのことが改訂されます。改訂のポイントとその内容を見ていきましょう。
改定のポイント
「体育」の運動領域の改訂ポイントは、全ての児童が楽しく安心して運動に取り組むこと、オリンピック・パラリンピックに関する指導が行われます。「保健」領域では、生活における健康・安全についての基礎を学び、心の健康、けがの防止の内容が改善されます。さらに、「体づくり運動」の学習を通して、体力向上を図ります。
改定の目標・内容(考え方)
「体育」の教科目標は、心と体を一体として捉えて、生涯にわたり心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成することです。
運動領域の内容構成は、
①知識及び技能(「体つくり運動系」は知識及び運動)
② 思考力、判断力、表現力等
③ 学びに向かう力、人間性等
に変更されます。
保健領域の内容は、健康に関する『知識・技能』、健康課題の発見・解決のための『思考力・判断力・表現力等』、主体的に健康の保持増進や回復に取り組む態度等の『学びに向かう力・人間性等』に対応した内容に改善されます。
「国語」の小学校の学習指導要領
「国語」は、学習指導要領改訂によって、どう変わるのでしょうか。改訂のポイントと目標・内容を解説します。
改定のポイント
今回の改訂では、自分の語彙を量と質の両面から充実させる「語彙を豊かにすること」、話や文章に含まれている情報を取り出して整理したり、正確に理解したりする「情報の扱い方」が重視されます。
また、学年別漢字配当に変更があります。4年生で都道府県名に用いる漢字25字を学習します。これに伴い、これまで4年生で習っていた漢字のうち21字(囲、紀、喜、救、型、航、告、殺、士、史、象、賞、貯、停、堂、得、毒、費、粉、脈、歴)を5年生で、2字(胃、腸)を6年生に移行。さらに、これまで5年生に配当されていた漢字のうち9字(恩、券、承、舌、銭、退、敵、俵、預)を6年生に移行します。
改定の目標・内容(考え方)
「国語」では、国語の特質を理解し、適切に使うこと、人との関わりの中で伝え合う力を高めて思考力や想像力を養うこと、国語の大切さを自覚し、国語を尊重してその能力の向上を図ることが目標とされています。
これまでの「国語」の内容は、〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕で構成されていましたが、改訂によって〔知識及び技能〕、〔思考力,判断力,表現力等〕の2つに区分構成されます。
〔知識及び技能〕は、
①言葉の特徴や使い方に関する事項
②情報の扱い方に関する事項
③我が国の言語文化に関する事項
〔思考力,判断力,表現力等〕は、
A 話すこと・聞くこと
B 書くこと
C 読むこと
です。
「算数」の小学校の学習指導要領
改訂により「算数」では、グラフやデータを読む力を養うことが重要となります。
改定のポイント
「算数」の改訂のポイントは、データの収集、分析によって、その傾向を踏まえて課題を解決したり、意思決定をしたりする力を育成することが重視されます。
また、授業内容の変更には、3年生で「メートル法の単位の仕組み(k、mなど)」を、4年生で「メートル法の単位の仕組み(長さと面積の単位の関係について)」。5年生で「メートル法の単位の仕組み(長さと体積の単位の関係について)」、「速さ」を。6年生で「分数 × 整数、分数 ÷ 整数」、「平均値、中央値、最頻値、階級」を学習することに改められました。
さらに、プログラミング教育が導入されます。単元で実施されるものとしては、5年生の「図形」において、プログラミングを通して、正多角形の意味を基に正多角形をかく場面で用いられます。
改定の目標・内容(考え方)
「算数」の目標は、数量や図形などの基礎的・基本的な概念や性質などを理解すること、日常の事象を数理的に捉えて、考察する力・数学的な表現を用いて表したりする力を養うことです。それに加え、数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き、生活や学習に活用することを養います。
今回の改訂では、教育課程の編成が行われ、1年生、2年生と3年生、4年生と5年生、6年生の4つの段階を設定し、小学校算数科と中学校数学科における教育課程の接続を図ります。
内容としては、主に8つあり、
①数概念の形成とその表現の理解、計算の構成と習得
②図形概念の形成と基本的な図形の性質の理解
③量の把握とその測定の方法の理解
④事象の変化と数量の関係の把握
⑤不確定な事象の考察
⑥筋道を立てて考えること
⑦数学的に表現すること
⑧数学的に伝え合うこと
です。
このうち、①〜⑤は、主として算数科の学習において考察対象となるものとその考察の方法に関する項目です。⑥〜⑧は、算数科の学習全体を支える数学的な方法などに関する項目となります。
「社会」の小学校の学習指導要領
「社会」では、主に社会との関わりを意識し、課題を追究したり解決したりする活動を重視した授業が展開されます。
改定のポイント
改訂のポイントとしては、世界の国々との関わりや政治の働きへの関心、自然災害時における地方公共団体の働きや地域の人々の工夫・努力などに関する指導が充実します。また、少子高齢化等による地域社会の変化や、情報化に伴う生活や産業の変化に関する教育も行われます。
それぞれの学年の学習対象は、3年生で、自分たちの住む市、4年生では自分たちの住む県を中心とした地域が学習対象となります。5年生では我が国の国土や産業を、6年生では、我が国の政治の働きや歴史上の主な事象、グローバル化する世界と日本の役割を学習します。
なお、3年生から「教科用図書地図(地図帳)」の活用が示されました。
改定の目標・内容(考え方)
「社会」では、課題を追究したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会を主体的に生きる、資質・能力の基礎を育成することが目標です。
各学年の内容を、
①地理的環境と人々の生活
②歴史と人々の生活
③現代社会の仕組みや働きと人々の生活
に区分して学習していきます。
「理科」の小学校の学習指導要領
「理科」では、主に観察や実験などが重視されるようになります。
改定のポイント
改訂では、観察、実験が重視されるのが大きなポイントです。また、日常生活や社会との関連も重視されるようになります。
さらに、プログラミング教育が導入されます。単元で実施されるものとしては、6年生の「物質・エネルギー」で、身の回りには電気の性質や働きを利用した道具があること等をプログラミングを通して学習します。
学習内容の変更には、3年生で「音の伝わり方と大小」、4年生で「雨水の行方と地面の様子」、6年生で「人と環境」を学ぶことが、新たに追加されました。また、4年生で学んでいた「光電池の働き」、5年生で学んでいた「水中の小さな生物」は、6年生で学ぶことに変更されました。
改定の目標・内容(考え方)
小学校理科の教科の目標は、理科の学習を通して、自然の事物・現象についての理解を図り、観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けること。そして、問題解決の力や自然を愛する心情、主体的に問題解決しようとする態度を養うことです。
内容は、
「物質・エネルギー」
「生命・地球」
の2つの区分に分け、それぞれを学習していきます。
「道徳」の小学校の学習指導要領
「道徳」は、平成30年度から一部を移行措置として先行して実施されています。
改定のポイント
2020年度の学習指導要領改訂により「特別の教科 道徳」として、全面的に実施。このことにより、週1時間「道徳」の授業が行われ、教科書が導入されることになります。なお、評価は数値ではなく、児童生徒の道徳性に係る成長の様子を認め、励ます評価(記述式)がされます。
今までの授業では、授業の構成やねらいが分かりにくいことに問題がありました。しかし、この改訂によって、いじめの問題への対応の充実や発達の段階を、より一層踏まえた体系的なものに改善。問題解決的な学習や体験的な学習などが授業に取り入れられます。内容項目としては、「個性の伸長」「相互理解、寛容」「公正、公平、社会正義」「国際理解、国際親善」「よりよく生きる喜び」が、追加されました。
改定の目標・内容(考え方)
「道徳」の目標は、「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」ことです。
内容としては、
「A 主として自分自身に関すること」
「B 主として人との関わりに関すること」
「C 主として集団や社会との関わりに関すること」
「D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」
の4つの視点で構成され、AからDの順序で構成されます。
「英語」の小学校の学習指導要領
「外国語活動」と「外国語」は、2020年から新たに導入される科目です。2018年より移行措置をスタートし、先行実施されています。
改定のポイント
小学校において、3、4年生で「外国語活動」というカリキュラムが、5、6年生で「外国語科」という教科として導入されます。
改定の目標・内容(考え方)
「外国語活動」では、外国語で「聞くこと」、「話すこと」を学び、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を育成することが目標です。例えば、
・外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむ
・外国語で聞いたり、話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う
・外国語を主体的に用いて、コミュニケーションを図る態度を養う
などです。
「外国語」では、外国語で「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと」、「書く」ことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を養います。
内容としては、
・外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについての知識を理解し、「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと」、「書く」による実際のコミュニケーションに活用できる基礎技能を身に付ける
・外国語で聞いたり、話したりすることに加え、語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり、語順を意識しながら書いたりして、自分の考えや気持ちなどを伝え合う
・外国語を主体的に用いて、コミュニケーションを図る態度を養う
などが授業で行われます。
2020年、日本の教育は大きく変わる
「外国語」がはじまったり、「プログラミング教育」が必修化されたりと、大きく変わる2020年の教育改革。新たな学習内容に親子ともども不安にならないためにも、家庭で事前に準備しておくといいかもしれませんね。
関連サイト
文・構成/HugKum編集部