最近、注目の「アクティブラーニング」とは?専門家に聞いた効果や小学校現場の状況

「アクティブ・ラーニング」という言葉を知っていますか? 直訳すると「能動的学習」などと表現されますが、近年、日本でも大きな注目を集めている教育手法です。そもそもどういうもので、子どもにはどのような影響があるのでしょうか。

専門的見地から教育機関などへのコンサルティングを行っている株式会社アクティブラーニングの社長・羽根拓也さんにお話を伺いました。

そもそも、アクティブラーニングとは何?

アクティブラーニング=子どもが主役の教育手法

自動車の「運転席」と「助手席」を思い浮かべてみてください。同じ空間にいますが、通った道をよく覚えているのはどちらの席に座っている人でしょう? 答えは、主体的に正面の景色を見ている運転者です。一方、助手席や後部座席に座っていると、すぐに眠くなってしまいますよね。これは、主体性を持って物事に取り組んでいるときは脳のスイッチがONに、受け身のときはOFFになっていることが理由です。

これを学校の教室に置き換えてみましょう。教師が一方的に教え、生徒は黙ってノートを取る、そんな従来型の授業では教師が運転者でした。アクティブ・ラーニングは、子どものほうが運転者になる学習法です。

アクティブラーニングのメリットは?

主体的に学ぶことで知識が残り、創造力も身につく

つまり、アクティブ・ラーニングの学びの場では、主役は子どもということ。自分の頭で考えて実践を重ねていくと、習得した知識が記憶に残りやすいです。また、「正解ありき」ではない課題に取り組み、やり遂げる経験を積むことで創造力も身につきます。

 

アクティブラーニングはいつから始まったの?

教育現場は既に変わってきている

米国では20年前には、既にアクティブラーニング的なものが始まっていました。それが日本にも、2000年ぐらいから大学の教授らによって導入され始めました。

そして2014年、文部科学省の新しい学習指導要領の中にもこの言葉が盛り込まれたことで、急速に広まりました。

また、大学入試のあり方も、テストで1点の差を争う知識偏重型から、思考力や判断力を重視する方向に変わりつつあります。これへの対応として、小学校〜高校でも意識が高まっていると言えるでしょう。

では、アクティブラーニングの具体的な手法は?実際どんなことをするの?

「絶対的な正解はない」ことが前提

一問一答式ではなく多答式の学習が重視されます。例えば「日本の夏が暑くなった理由」を理科の授業で取り上げるとしても、教師が1つの答えを用意して正解か、不正解かを問うことはしません。むしろ思いつく限り、自由に考えを発表してもらい、そこから対話や議論を深めていく形です。

正解が決まっている算数は?

算数は「1+1=2」といった解答があるのでアクティブラーニングに馴染まないとも誤解されがちですが、学んだ概念や数式が日常生活でどう役に立つのかということを、生徒に考えさせながら進める授業など、できることはたくさんあります。

 

内向的な性格の子どもでも、ついていける?

対話の楽しさに触れれば大丈夫

内向的と一口に言っても、「授業中は話さないけど休み時間は話す」「学校では話さないけど家では話す」などさまざまなタイプがありますね。子どもにはコミュニケーションのスイッチがあります。正解ありきの授業に慣れてしまって、「対話の楽しさ」を知らないがゆえに発言に消極的になっている場合が実際は多いと感じます。いざ、アクティブラーニングに取り組んでみると「楽しかった」と反応してくれる生徒がほとんどですよ。

話すことだけがアクティブラーニングではない

どうしても話すのが苦手な子はもちろんいますが、関心を持ったことを調べて、考えて自己学習することも立派なアクティブラーニングです。目の前のことにコツコツ取り組み、深掘りしていくことが好きな子どもに合ったアクティブラーニングもあるということです。

 

家庭でも実践可能!まずは身近な疑問のやり取りから

学校だけでなく、家庭でも実践できます。例えば、子どもが「どうして○○なの?」と聞いてきたとき、すぐに答えを与えずに一呼吸置いて、「なんでだろうね」と一緒に考えてみてください。知識の吸収率や考える力が高まり、未来を切り開いていくのに大切な自己解決能力を育てていくことにつながるはずです。

 

お話を伺ったのは、

 

羽根 拓也さん

「株式会社アクティブラーニング」社長。日本の塾・予備校での指導を経て渡米し、ハーバード大学、ペンシルバニア大学などで日本語講師として教鞭をとる傍ら、学生の「学ぶ力」を育成する教育手法を開発。帰国後、1997年に同社を設立。国内外の大手企業、公的機関、教育機関などで能動的人材の育成などに取り組む。 http://www.als.co.jp/

 

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取材・文/加藤藍子

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