子どものウイルス性胃腸炎の原因や対処法、予防法などを小児科医の金井正樹先生にお聞きしました。
同じ園に通う子が、「ウイルス性胃腸炎」にかかりました。症状や対処法、予防に役立つことを教えてください。
目次
ウイルス性胃腸炎ってどんな病気?
下痢やおう吐が見られますが、数日で回復します
「ウイルス性胃腸炎」とは、ウイルス感染によって胃や腸に炎症が起こる病気の総称です。冬に多く見られるのは、ノロウイルスやロタウイルスによるものです。
症状は?
おもな症状は、急なおう吐や下痢。発熱や腹痛が起こることもあり、感染したウイルスの種類によっては、便が白っぽくなることもあります。
病院ではどんな治療をする?
ウイルスが原因の病気に特効薬はないので、ウイルスの種類を調べる検査は行わないことがほとんどです。治療の基本は、自宅で水分補給をしながら安静にし、回復を待つこと。通常、症状は数日で治まります。
家庭で気をつけることは?
おう吐や下痢によって水分が失われるので、少量ずつこまめに水分補給を。食事がとれない場合は、市販の「経口補水液」を利用します。経口補水液は、水分を効率よく吸収できるように成分が調整されたもので、スポーツドリンクとは塩分や糖分の濃度が異なります。
食欲があるなら、食事は消化のよいものを。食べものから塩分や糖分をとることができるので、水分補給は湯冷ましや麦茶などで行いましょう。
排泄物などの処理はどうする?
ウイルス性胃腸炎は排泄物や吐いたものからもうつるので、家族への感染を防ぐために正しく処理しましょう。
①使い捨ての手袋とマスクをつけ、エプロンなどで服を覆う。
②水1リットルに台所用の塩素系除菌・漂白剤20ミリリットルを加える。
③ ペーパータオルで、汚物を外側から内側へ集めるようにして取り除く。
④別のペーパータオルを②に浸し、汚れた部分とその周りを拭く。
⑤使ったペーパータオルとマスク、手袋はポリ袋に入れ、密封して捨てる。 処理をすませたら、流水と石けんでていねいに手を洗いましょう。エプロン(汚れがついていない場合)は、他のものと分けて洗濯します。
汚れた衣類の洗濯はどうする?
衣類に排泄物などがついた場合は、次のどちらかの方法で消毒してから、他の衣類と分けて洗濯します。
①耐熱性の高いポリ袋に入れて85度以上のお湯を注いで1分ほどおく。
②薄めた塩素系漂白剤に浸す(色落ちすることがあるので注意する)。
ワクチンで予防できるって本当?
ロタウイルスにはワクチンがありますが、初回の接種を生後14週6日までに受ける必要があり、この時期を逃すと接種することはできません。ロタウイルスのワクチンは任意接種のため、原則として費用は自己負担です。また、ロタウイルスにはいくつかの「型」があります。そのため、ワクチンを受けていても感染する可能性があります。
予防のために気をつけることは?
原因となるウイルスは、食べもののほか、「手」を介して体内に入ります。
そのため、予防にはこまめな手洗いが有効。外から帰ったときや食事の前には、必ず流水と石けんで手を洗います。胃腸炎の原因となるウイルスには、アルコール消毒は効果がありません。
記事監修
金井正樹先生
(「国立小児病院」、米国の小児病院などで小児外科の臨床・研究を行い、2008年より現職。診療科目は内科、小児科、小児外科、外科。保育園の園医、小・中学校の校医も務める。)
『めばえ』2019年12月号 イラスト/小泉直子 構成/野口久美子
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。