小学校の先生にもいろいろなキャラクターの方がいます。先生も人間ですから、タイプによって保護者もかしこく対応し、よい関係を築きたいですね。30年以上の現場経験を経て、全国で教員育成&保護者相談にあたる多賀一郎先生に、先生を10のタイプに分類していただき、現代の小学生保護者が幸せな子育てをするために必要な知恵を伝授していただきました!
目次
小学校の先生のキャラクター、典型的な10タイプとは?
わたしは30年以上の学級担任の経験を経て、現在は、保護者のための子育て塾『親塾』を主宰しています。ながらく小学校現場にいた経験から培った先生とのつきあい方の心得をお教えしましょう。
小学校の先生にもいろいろなキャラクターの方がいます。次のように10のタイプに分類してみました。そのタイプに応じた保護者の考え方を示します。ただし、単純に一つのタイプだけの先生などは存在しませんので、いくつかのタイプを併せ持っていると考える方がいいでしょう。
1完璧主義タイプ
努力は惜しみませんが、自分に厳しい分、他人にも厳しいところがあります。そのため、子どもにも要求が強すぎてやりすぎてしまうことがあります。
【対応策】こういうタイプの先生には「お任せします」と一任するほうがいいでしょう。ちゃんとしてくれることは間違いありませんが、子どもが追い込まれる可能性があるので、子どものメンタルケアに気をつけましょう。
2理論的学者タイプ
知識に貪欲で、よく学んでいます。子どもと言い合いしても納得させられるだけの理論を持っていますが、少し自己中心的なところがあります。
【対応策】論理的に学びを積み重ねる先生は、実は頑固な人間ではありません。きちんと筋道立てて話せば、必ず子どもにとって良い話し合いができるでしょう。
3指揮官タイプ
リーダーシップを持っていて、正義感の強いタイプです。意志も強いのが特徴的です。頼りになります。
【対応策】正義感が強いので、いじめや意地悪の相談はしやすいです。ただ、実行力があるので、あまり細かいことまで相談しないようにしないと、すぐに行動してしまって、あとで困ることにもなります。
4堅実タイプ
ルールを守り、決まりを守ることは徹底していますが、融通の利かないタイプです。ルール重視のため、子どもによって合わせることが苦手です。
【対応策】こういう先生に当たったら、「この1年はルールを守ることの大切さを学ぶ1年だ」と考えればよいのです。融通を利かせてもらおうとするよりも、そのほうが我が子にとってプラスになりますよ。
5楽天家タイプ
なにごとにもポジティブで明るいので、子どもたちも楽しい学校生活を送れます。一方、どこか抜けていることも多いので、全面的に頼ることはしにくいタイプです。
【対応策】先生の抜けている部分を家庭で補わないといけないことがあります。特に学習面では、このタイプは細かいことの苦手な先生が多いので、おうちでのフォローを考えましょう。
6のんびりタイプ
なにごとにも寛大で、協調性のあるタイプです。マイペースですが、穏やかなので子どもは楽ですが、頼りなくも見えます。
【対応策】直接に「こうしてください」とお願いしたほうがいいでしょう。雰囲気だけでは「まあいいか」となってしまうので、おうちの方からのプッシュは必要です。
7面倒見タイプ
親切で人助けの精神にあふれています。学校では自分のことよりも他の先生の仕事を手伝います。気を使いすぎるので疲れやすいタイプです。
【対応策】情に訴えると、よく相談に乗ってくれます。「困っています。助けてください」とか「こんな気持ちになっています。どうしたらいいですか?」と、頼っていくことです。
8成功追及タイプ
上昇志向が強くて効率を重視します。子どもよりもまず、自分のことを考えるタイプです。
【対応策】こういうタイプには責任を追及するほうがいいと思います。自分の評価を下げないためになら、動きます。言うべきことはきちんと言うべき相手です。
9鬱タイプ
最近、先生にも鬱が増えてきました。このタイプの先生はネガティブ思考で、親からの追及に弱く、ちょっとしたことが原因で崩れやすいのですが、正直で真面目なのがよいところです。
【対応策】あまり責め立てると落ち込んでしまうので、暗い感じになって子どもたちにも悪影響が出ます。暗い先生の下では子どもは健全に育ちにくいでしょう。真面目で正直なのだから、その点をうまくほめて支えてあげるといいでしょう。
10熱血タイプ
情熱的ではありますが、ときにはいきすぎて子どもを追い詰めてしまうこともあります。同調圧力(全員で同じことをするようにするプレッシャー)をかけてしまうタイプです。
【対応策】実は、一番扱いにくいタイプです。変な信念に固まっていて、融通が利きません。感情を逆なでしないようにしましょう。また、うかつに相談すると、安易に精神論で解決しようとするので要注意です。
先生だって、ふつうの人。悩んだりもします
学校の先生は決して特別な人間ではありません。みなさんと同じように生活があり、家庭があり、悩みも苦しみもあります。ぼくは全国の先生方から相談を受けることも多いのですが、先生たちの悩みや生活というものも少し知っていただけると、保護者のみなさんも先生と協力しやすくなるかと思います。
先生は、保護者からの一言がつらいこともある
先生に直接言われたことが心にぐさりときたり、先生の何気ない言葉に傷ついたりされた方は、少なからずいらっしゃるでしょう。実は、先生のほうも保護者のみなさんに言われたことが、心に強く残ってしまう場合があるのです。
若い女の先生が、保護者から、「もっとびしっとしてください。先生は甘すぎる」と言われて落ち込みました。「びしっとしろ」という言葉は、先輩の男性教師からも言われます。よけいに落ち込んでしまいました。「びしっと」とは、怒鳴りつけることでしょうか?
怒鳴ることによって、他の子どもたちが萎縮してしまうことだってあるのです。その先生は、そう言われてから、1年生に対して厳しくなりました。笑わないように努力しました。その結果、教室はかえってぎすぎすした雰囲気になっていきました。ぼくは、「笑っていいんだよ。笑顔がないと、子どもたちだってしんどいよ」と、アドバイスしましたが、今の若い先生は極端に反応しがちです。
子育て中の先生が、もっと活躍できる社会に
小学校の先生の流産率は、高いと言われます。小学校現場というのは、けっこう体力勝負のところがあって、ぼくは肉体労働者だと思っています。ですから、そういう結果になるのだと思っています。
学校によっては、妊婦さんに対して協力的なところもありますが、ぼくの知っているある学校では、「つわりぐらいで学校を休むな!」と、管理職に注意された人もいます。完全なマタハラですよね。小学校の先生は女性のほうがずっと多いのに、実は男性中心の社会なのです。だからそういう言葉も出てきます。いまだにそういうレベルの方がいらっしゃるのは、悲しいことです。
子育てをしながら仕事をしている先生はたくさんいます。保育所のお迎えに行くために、仕事が残っていても時間を切り上げて学校を出ます。そのことで、残っている先生方に申し訳ないという思いを抱いている先生はたくさんいます。学校の先生の仕事は、男女とも同じで、最も平等な仕事だと言えます。しかし、子育てには女性教師の負担が強くかかることは、まだまだあります。子育て真っ最中の先生に電話するときは、勤務時間内(学校にもよりますが、16時ぐらいまで)にしてあげてくださいね。ぼくは、教師をしながら自分の子どもを育てている先生を尊敬しています。
クレームが付きやすい世の中で、先生たちは苦悩も
ぼくが教師になったときには、保護者のみなさんが教師の権威というものを大切にしてくださっていました。女性の先生だって、ときには子どもにビンタくらいするのは当たり前でした。
今の先生方は、もちろん体罰厳禁です。大声で怒鳴りつけることすら、「子どもが怖がっています」と、クレームがついて、担任が交代したところもあります。つまり、今の先生方は厳しい指導をしにくい状況にあるということです。一部の保護者が「もっと厳しくしてほしい」と思っても、厳しくしたとたんに「厳しすぎる」と文句が出てくることもあるのです。戦う武器を奪われた中で、先生たちは苦悩しているという感じなのです。
30年以上の現場経験を経て、全国で教員育成&保護者相談にあたる著者が、現代の小学生保護者が幸せな子育てをするために必要な知恵を伝授。読めば読むほど、子育ては「学校と一緒にできる」ということに気がつき、子育てに閉塞感を感じている人はそこから解放されていきます。一年生の保護者はもちろん、どの学年であっても、いま心の中にある不安を解消する手立てが見つかる本です。
著/多賀一郎
本体1100円+税(小学館)
多賀一郎(たがいちろう)
追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。『親塾』を各地で開いて保護者の相談にのったり、公私立小学校での指導助言や全国のセミナーをしたりして教師を育てることにも力を注いでいる。