子供の「片付けない」はこれで解決!専門家が指南する、かしこい子に育つ部屋づくり

幼児ママたちの家を保育環境の専門家が訪問&アドバイス

おもちゃの数を減らすだけで、子供の手の届くところに本のコーナーをつくるだけで、部屋の色を変えるだけで、子供って変わります。そう話すのは、室内の環境を変えることで、園児たちの能力を引き出してきた保育環境の専門家、高山静子先生。いつもは園を訪問してアドバイスしている先生ですが、今回は読者ママの家を見ていただきアドバイスをもらいました。子どもが賢く育つヒントがそこかしこにありました。

ヒント1 子供がよくいる場所に家族の本を収納

登ってほしくない場所に本を収納すれば、一石二鳥

小学4年生の芽流くんが宿題をやるのも、3歳になるまりこちゃんがあそぶのも、ダイニングキッチンから続くリビングです。「リビングにある棚の背が低いので、まりこがソファから棚に登り、窓を開けてしまうことがあり、どうしたものかと困っています」心配顔で話す麻生珠恵さんに、「スペースがあれば子供は登ってしまうのです」、と高山静子先生。「棚の上を本コーナーにしたらどうでしょう。まりこちゃんの絵本だけでなく、お兄ちゃんの図鑑、パパやママの読んでいる本も置きましょう。大人の文化に触れることで、子どもの知的好奇心が高まります」事故予防だけでなく、学びの場にもなる一石二鳥の空間です。

Before

ソファ→棚→窓という動線を引き出してしまう環境。

After

棚の上が本コーナーに変身。家族みんなの本を置いて、〝家庭の文化資本〟を豊かにします。

 

 

ヒント2 おもちゃの数を減らして、片づけやすく

おもちゃを使いやすく収納!片づけない子供が片づけ上手に

まりこちゃんの絵本やおもちゃは、すべて棚の中に入れていた麻生さん。なかには、もうあそばなくなってしまったおもちゃもありました。「棚の中のおもちゃを片づけ、遊びの素材と道具を使いやすいように並べてみましょう」(高山先生)「遊びの素材」とは、新聞紙や広告紙、粘土や布など、道具は、はさみ、クレヨン、テープなどのこと。空き箱に素材と道具を分類しながら納めていきます。「これならお兄ちゃんと一緒に工作遊びができるし、兄妹で創造力を発揮する環境になると思いますよ」

新聞紙、広告紙、コピー用紙の裏紙など。粘土と粘土の板、小道具もひとまとめに。テープ類や毛糸、ストローなども遊びの素材。色鉛筆、クレヨン、ちゃんと切れるはさみなど。

Before

棚が丸ごとおもちゃ箱状態に。もう遊ばなくなったおもちゃも、捨てられずそのままに。

After

遊びの素材と道具を、種類別に整理。取り出しやすいようにレイアウトを工夫します。

 

おもちゃを減らしたら、お話を自分からつくるようになりました。

「子供は遊びの素材があれば、自分で物語をつくってあそびます。おもちゃがたくさんあると、自分の頭と手を使わずに、物に〝あそばされて〟しまうことに。たとえば、テーブルの上に空き箱と数種類の人形を用意しておけば、そこが物語の舞台になり、子供の遊びが始まります」(高山先生)シンプルなものほど子供の想像力も創造力も引き出してくれると高山先生のアドバイス。表に出しておくおもちゃはできるだけ少なくして、たまに入れ替えればOK。

 

ヒント3 おもちゃ箱(袋)に詰め込むのをやめる

自作の収納ボックス種類別、大きさ別に分類がおすすめ

「大きな箱や袋におもちゃを入れることは子供にもできるので、片づけが身につくと思っていました」(麻生さん)実は、このような片づけ方は、せっかくの学びの機会をうばってしまうことになると高山先生はいいます。「種類を分けたり、大きさの違いを認識したり、数を数えたり、片づけそのものに学びの要素がたくさんあります。なので、遊びの素材やおもちゃは、質のいいものを少しだけ用意するのがベスト。子供が取り出したり分類しやすいように空き箱を用意しましょう」(高山先生)質のいいものとは、過剰な飾りやキャラクターなどがついていない、シンプルなおもちゃや素材のこと。子供の想像力と創造力が引き出され、遊びがどんどん展開していきます。

Before

おもちゃ箱 (袋)に詰め込むのをやめる
気がつけば、こんなにたくさん! 袋に入っていると扱いも乱暴になってしまいます

After

お気に入りの人形を5〜10個ほどの数に厳選。箱に並べて、飾るようにして片づけます。
種類別、大きさ別に分類。片づけそのものが学びです。

箱にきちんと並んでいるだけで、モノをていねいに扱うようになります。厳選した人形は、折を見て入れ替えるといいでしょう。

 

ヒント4 あそぶゾーンをつくる

一定のスペースで遊ぶことで、ママのイライラも解消

小さなラグでマイコーナーづくり

M・Kさんのお宅は、この冬3番目の男の子が生まれたばかり。「上の子たちは寂しいのか、おもちゃを布団にまで持ち込んで散らかし放題です」とママ。高山先生は「姉妹それぞれのコーナーをつくりましょう」とアドバイス。子供は自分の居場所ができると、落ち着いてあそぶようになり、散らかすことも減るそうです。また「3番目のお子さんがハイハイを始めたら、誤嚥も心配。その前に大量のおもちゃも分別しましょう」と高山先生。まずは使わないおもちゃを整理し、1階茶の間のモノがあふれた3段チェスト。お絵描きや工作道具(上段)、音の出る道具(中段)、パズルとアルバム(下段)に分けて収納しました。2階寝室の隣には、姉妹があそべるスペースをつくりました。

Before

1階ダイニングと一続きになった茶の間。あそぶ場所が定まっていないため、雑然としがち。

After

姉妹の遊びスペースを2階に。半畳のラグを2枚敷き、おままごとセットを入れた棚で仕切った、独立したコーナーです。

 

ゾーニング意識も芽生えました

その後、1階茶の間では工作やパズルなど親も一諸に楽しむ遊びをし、2階では姉妹がおままごとに熱中する時間が多くなりました。うれしいことに、それまでママの化粧道具もおもちゃとして持ち出していたのが、「キレイにするところはここ」と、化粧道具コーナーで自分たちの髪もとかすようになったそう。遊びのコーナーをつくったことで、家の中のゾーニングの意識も芽生えたようです。

 

Before

茶の間の一角がおもちゃコーナー。量も種類もたくさん。「これ以上散らかさないよう、引き出しもわざと詰めて出しにくくしていました」(ママ)。

After

姉妹の遊びスペースを2階に。半畳のラグを2枚敷き、おままごとセットを入れた棚で仕切った、独立したコーナーです。

 

 

ヒント5 自然の色や素材をベースにする

子供の心が安定する色や素材で、落ち着きを感じます

色と素材を「自然のもの」で揃えると、子供の心が安定します。特にベージュ(壁、ソファ)+グリーン(カーペット、クッション)はベストの組み合わせ。木の家具も温かみがあり、子供たちが落ち着いて生活しているのを感じます。子供の絵がアクセントになり、ママの愛情も伝わってきますね。

 

ヒント6 「子供目線」の収納が考える力をつける

「自分で選択」できるように導き出してあげましょう

おもちゃ箱の高さがちょうどいいですね。子供目線の収納は出し入れがしやすく、「あそびたいもの」を見つけやすい。靴箱が引き出し式なのもポイント。開けたときにパッと中身がわかると、「履きたいもの」が選べます。この「自分で選択する」ことが、考える力につながっていくんですよ。

 

高山先生から幼児ママへ 子供に与えるのは、モノではなく環境です。

遊びは学びそのもの

幼児期の遊びは学習そのもの。空間、人、自然、時間、情報などはすべて「環境」ですが、この環境とかかわりながら、発達に必要な行動を遊びとしてくり返し、さまざまな能力を獲得していきます。子供が見るもの、聞くもの、さわるもの、感じるもの、味わうものなど、子供を取り巻くすべての環境が、子どもの育ちを支えているのです。

刺激の少ない環境を

子供が長い時間を過ごす生活空間(環境)には、子供を刺激するおもちゃなどをなるべく置かないようにしたいものです。たとえば、派手な色の玩具やキャラクターがたくさんついているようなものなど。テレビやDVD、ゲームなどのメディアもしかり。これらの刺激を与え過ぎてしまうと、子供は受動的に〝あそばれる〟ことに慣れてしまい、自発的に自分からあそぶこと(学ぶこと)がおろそかになってしまいます。刺激の強いおもちゃはお母さんが夕食の支度など手が離せないときなど、一時的に与えるものと考えておきましょう。

片づけは学習能力の土台です

子供の想像力をかき立て、集中力を高めるために必要なのは、遊びの素材です。紙、布、毛糸、木の実など、できるだけ自然物の延長線上に位置するシンプルで落ち着いた色合いのものをチョイス。子供はすぐに、ごっこ遊びや造形遊びを始めるでしょう。また、これらの素材を、色、数、量、大きさなどに分類して片づければ、片づけそのものが学びになります。シンプルな素材で遊びを自分でつくり出し、片づけをしながら学ぶ。そんな環境が、子供の学習能力の土台になるのです。

 

高山静子 (たかやま・しずこ)

子育て中に保育士の資格を取得し保育園に勤務後、子育て支援にかかわる。浜松学院大学准教授を経て、東洋大学ライフデザイン学部准教授。教育学(博士)。著書に『環境構成の理論と実践—保育の専門性に基づいて』(エイデル研究所)などがある。

 

写真/五十嵐 公、奥田珠貴、岡本尚樹 取材・文/神崎典子、栗田京子 構成/平野佳代子 出典/『edu』

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