「ゲームばかりする子どもにどう対応する?」「すぐ諦めてしまう我が子にガッカリ…」保護者のお悩みに井本陽久&川島 慶が生回答!

カリスマ数学教師「イモニイ」こと井本陽久先生と、大人気アプリ「シンクシンク」の開発者である川島慶さんによる特別対談の様子がオンラインで配信されました。その内容を紹介した第1弾記事に引き続き、今回は保護者から寄せられた質問に、イモニイ、川島さんのおふたりがお答えします。

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【井本陽久×川島 慶】スペシャル教育者師弟対談が実現!「子どもがどんどん自分で考えるようになる秘訣とは?」
カリスマ数学教師・井本陽久先生と「シンクシンク」の開発者・川島慶さんの師弟対談が実現! 去る3月7日、カリスマ数学教師「イモニイ」こと...

Q:井本先生は、子供を叱ることがありますか?

井本:あります。もちろん、あります。菩薩ではないので(笑)。ただ、普通の人よりは少ないかもしれません。どんなときに叱るかというと、イラっとしてそれがガマンできなかったときです(笑)。

子どもは、教師が「何をするのか」より「どう思って」いるのかを気にしますので、叱るかどうかよりも、なぜ自分がイライラするのかを焦点を当ててやってきました。

自分の嫌なところを相手に見たときに、イライラっとするんですよね。だから、イラっとしたときには、そう思わせる自分の中の価値観を手放して自由になるチャンスなんだと思うようにしています。

 

Q:子どもがわくわくすることはゲームだけのようです。勉強も必要だということを、どのように気づかせたらいいでしょうか?

井本:子供でも大人でも「やってみよう」と思う動機づけに、必要かどうかということは弱いのです。必要だからやることは、結局、要求されたところまでしかやらない。一方興味関心を持ってやることは、要求されたこと以上のことを自発的にやろうとする。これこそ学びの本質。必要だからということで勉強をやらせたとしても、うまくいかないと思います。

教員は、生徒が「やりたいとは思っていないこと」をやってもらうわけですが、「これが必要だから」と言ったところで、やるわけがないじゃないですか。ですから、「なに、これ?」とか、「不思議だな」とか、つい心を奪われてしまうような仕掛けが必要で、そこから本質的な学びが生まれると思います。

 

Q:ゲームもたくさんの種類があり、何を選んだらいいのかわかりません

井本:僕はゲームをほとんどやらないので、わからないですけれど、授業でやっていることはゲームっぽいかもしれませんね。

そうですね……、不自由さが大事だとは思います。思い通りにコントロールできたら学びにはなりません。ゲームの怖いところは、思った通りにできてしまうところではないでしょうか。子どもは本来、不自由なところを楽しみます。

川島:僕たちがシンクシンクのコンテンツを考えるとき、子供たちが「どういうこと?」「あ、こういうことか!」と思えるように心がけています。子どもたちが試行錯誤できることが大事なんです。

また、今の子どもたちの感性というものも考慮する必要があると感じていて、例えば、僕たちが子どもの頃は、マンガは「悪」と決め付けられることが多かったですが、今はそんなことありません。時代によって変わります。大人が理解できない子どもの感性という部分も見逃さないようにしたいですよね。

Q:子どもが学校の授業をつまらないと思っているとき、どうしたらいいでしょうか?

井本:保護者の皆さんも振り返ってみていただきたいのですが、学校の授業に夢中になれましたか? なれなかった方が多いのではないでしょうか(笑)。だから、そのこと自体はさほど気にすることはないと思います。

もちろん、夢中になれる授業があればそれに越したことはありませんが、子どもが授業に夢中になれなくても、おそらく何か別の面白いことを探しているはずですから。

それよりも、学校や授業に対する大人の批判や非難、不安を子どもが真似をすることの方が、怖いことだと感じます。先ほど、子どもは不自由を楽しむと言いましたが、思い通りにならないことは学びのチャンスでもあるのです。語弊があるかもしれませんが、授業がつまらないこと自体に問題の根があるわけではないと思います。

川島:僕は低学年のお子さんを持つ保護者の方と接する機会が多いのですが、この質問をよく受けます。子どもによって原因は様々で、誰にでも共通するような万能の答えはないのですが、子どもって思っているよりも逞しいものです。たとえつまらない環境でも、子どもは落書きしたりボーッとしているようで、何かを考えていたり、それなりの楽しみを見つけたりしているので、必要以上に心配しなくてもいいと思います。

 

Q:「自由にやらせること」と「放任」の最大の違いは何でしょうか?

井本:基本的には、子どもが何かをやっている時には、手を出さないほうがいいと思います。なぜなら、大人の手出しのほとんどが子どものジャマをする、という結果になるからです。子どもが試行錯誤をしているときに手を出すと、子どもは試行錯誤を止めてしまいます。

では、家庭ではどうすればいいのか。子どもって、イタズラでも何でも、自分の考えでパッとやってしまったとすると、必ず大人の顔を見ますよね。その時、ニコッと笑うというのは、とてもいい反応だと思います。自分でやったことを面白がってくれたという安心が生まれ、それが次の試行錯誤につながるからです。自分のやり方でやったということが尊いことを伝えるのが大切です。

Q:できた、できないは問題ではないですか?

井本:そこは問題ではありません。できた、できないという評価をされたら、子どもは評価を得たいと思うので、「できよう」とし始めます。すると自分のやり方で試行錯誤することはしなくなります。なぜなら試行錯誤は失敗すると、つまり間違えることを前提にしているので、当然自分のやり方でやるのは反んだ、と思ってしまうからです。

川島:イモニイの言う通りだと思います。キーワードとしては、子どもへの「まなざし」でしょうか。周りの大人の「まなざし」を、直接的でなくても感じて安心することが大切なのではないでしょうか。

Q:「どうしたらいい?」「教えて」と、親に頼ってくる場合はどうしたらいいですか?

井本:自分で考えることが大事だからと言って、子どもが親に許可を求めてきた時に「自分でやりなさい」と言うのも、少し変な話ですよね。大事なのは、今のその子を受け止める、ということ。あ、何か不安があるのかな、と思ってあげることが必要なのでは。

ありのままを受け止めるというのは、今のその子のそのままを受け止めて、面白がってあげること。愛しく思うこと。

「幼児期に愛されて育つのが大事」だとよく言われます。もちろん、その通りですが、僕は中学生の子どもたちを見てきて、愛されて育った子とそうでない子がいるんですね。じゃあ、そうでない子はもうダメなのかというと、そんなことはないんですよ。

子育てに失敗した、という方がいらっしゃいますけれど、子育てに失敗なんてないんです。今のその子との関わりでこうなったということ、その縁を受け入れて、それを「よし」とする。たとえネガティブに思える縁であっても、それを受け入れ、そこに意味を見出すことで、逆にその子がかけがえのない魅力、輝きに変わるのだと信じています。

 

Q:不自由な中で自由にさせるという、日常生活での具体例があったら教えてください。

イモニイ:基本的に人生って思い通りにはいかないですよね? だから、それをニコニコ見ているということなのではないでしょうか。

整っていると試行錯誤する要素がないのです。子どもは水たまりで飽きずに遊びますが、これは、環境が整ってないから面白いんですよね。水槽に水を入れてさあ遊びなさいと言われても面白くない。

水たまりに手を突っ込んで土がぐちゃっとしている感覚など、自発的に遊んで五感で捉えていること、経験はすべてが学びなのです。

結局は、遊びに尽きると思うのです。子どもは、環境に依らずどんなところでも楽しめるのです。遊びとは何かと言えば、自発なのです。その場において、自分がそれをやろうと思った「自発」。自然と、自分の考え、自分のやり方を繰り返すことになります。この自発と繰り返しから学んでいきます。

川島:ある高名な学者の方が、2歳児くらいの子どもと一緒に露天風呂に入っているときに、ずっと自然現象に関することをその子に話しているという場面に出くわしたことがあります。お子さんは何を言っているのか理解はしていないのでしょうけれど、お父さんが楽しそうに話しているので、自然と子どもも楽しそうにしていました。

これをやらないといけないとか、こうしないといけないということではなく、大人が好きなことをお子さんに伝える、ということだけでもいいのではないかなと思います。

 

Q:子どもの自己肯定感が低く、問題や課題に対してすぐに諦めてしまいます。

また思い込みが強く、始めれば10分でできる宿題も「こんなにたくさんは無理」だと止めてしまいます。こんな時に、どんな声かけをしたらいいでしょうか?

イモニイ:声かけと表現されていますが、まさに声かけはとても大事。僕が授業でやっていることも声かけです。養護施設での学習支援の時に学んだのですが、初めてクラスに来た子どもにマンツーマンで教えると、その子は二度とその教員のところには来なくなります。なぜなら、教えるということはその子にとって「できないことを思い知らされる」ことだからです。

大事なのは、身についていないことに焦点を置かないことです。今、難なくできていることを言ってあげるだけでいい。例えば「お、名前を書いたね」だけでもいいのです。できていることをどんどん言ってあげる。褒めることとは違います。褒めるのは叱るのと同じで、次も「そうしなければいけない」と思わせるだけです。

川島:その子のできることを、「できて当たり前」とするのではなく、認めて肯定してあげることでしょうか。褒めるのではなく、背中をポンと叩く感じ。そうすると、少し前まで「できなーい!」と言っていたことを余裕で越えていったりします。

Q:子どもたちに対してどうしたらいいのか、分かっているけれどできない。そんな親はどうしたらいいのでしょうか?

イモニイ:1人でやろうとするから、分かっていながらも止められない状態になってしまうんですよ。ですから、コミュニティや繋がりが大切です。みんなうまくやってないことがわかりますから。講演会に来て話を聞いて、その日は「ありのままを受け止めよう」と子どもを抱きしめても、翌日に「あんた、何やってるの!」ってなってしまう。その繰り返しが面白いのではないでしょうか。みんなが菩薩になる必要はないと思います。お母さんはお母さんでいい。それが面白いし、それでいいんじゃないかな。

川島:計算ドリルや文章題など、答えがあり間違いが気になりやすいものだと、「なんで、できないの?」ってつい思ってしまうでしょうから、パズルとか迷路などのコンテンツをお勧めします。迷路やパズルなら、子どもが「できたよ!」って持ってきた時に、仮に間違っていても、計算問題よりはそれを機にかけなくても良いし、取り組んだこと自体を認めてニッコリしやすいですからね。

それから、子どもについ小言を言ってしまった時など、周りの人に「昨日、こんなこと言っちゃったんですよ」って、コントや喜劇のように話すのも手だと思います。

 

おふたりの対談を総括して

「自分で考えて、自分のやり方でやっている時の子どもは、キラキラ感が溢れ出している」と話すイモニイ。そして、そんなイモニイの遺伝子(?)を受け継いだ川島さんも「子どもが本来、持っている“知的ワクワク=感じる楽しさ、考える楽しさ、作る楽しさ“を引き出したい」と、デジタルを駆使した新しい教育アプリを開発されています。
 

今、大きな時代の変わり目に入りました。これまでの価値観や常識が通用しなくなる社会になるかも知れません。子どもたちの未来はどうなるのか? みなさん心配と悩みのたねは尽きないと思いますが、教育界のイノベーター(革新者)であるイモニイや川島さんが伝えてくれた、「子どもたちのキラキラやワクワクを引き出し、認め、受け入れることの大切さ」が、未来を切り開く鍵になると感じました。

HugKumではこれからもお二人の活動に注目をし、イモニイや川島さんから受け取った大切なメッセージをお伝えしていきたいと思っています!

 

イモニイ(井本陽久先生)

教員免許取得後、自身の母校である栄光学園の数学教師に。現在は栄光学園の講師を務める傍ら、自ら「いもいも」という塾を主宰し、小学生から中学生に授業を行う。その他子育てや子どもの学びを語る講演への出演多数。

川島慶さん

花まる学習会でなぞぺー制作に関わり、講師も務めた後、株式会社ワンダーラボ(旧花まるラボ)代表に就任し、思考力育成教材アプリ「シンクシンク」を開発。翌年シンクシンク教室の運営もスタート。今春より新しいSTEAM教育の通信教材「ワンダーボックス」もサービスを開始。

文/神崎典子 写真/黒石あみ 構成/HugKum編集部

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