電車やお店で騒いだり走り回る子どもへの接し方は?
お母さん、お父さんから寄せられるお悩みで多いのが、電車やお店、公共の場で騒ぐ子どもへの対処法。叱ったり強く注意するだけでいいの?保育士歴が長い井桁容子先生に伺いました。
いけない理由を伝え、子どもの気持ちにも理解を
自由にふるまえない公共の場は、子供にとっては窮屈な場所です。大人の都合で連れていかれたうえ、「大声を出してはだめ」「走ってはだめ」などと言われても納得できないでしょう。まずは家を出る前に、「今日は〇〇に行くよ」「人が多いから、走ると危ないよ」などと話しておくことが大切。2歳ぐらいになっていれば、事前に聞いておくことで心の準備をしたり、「なぜいけないのか」ということを知識として身につけたりすることができるからです。
子供には「理由」もいっしょに伝える習慣を
子供に対しては、赤ちゃんの頃から「言葉に出して伝える」ことを習慣づけましょう。その際に大切なのは、単に「~しなさい」「~はだめ」ではなく、「危ないから投げないでね」のように、「理由」をセットで伝えることです。たとえまだ言葉が話せない子供でも、「大切なことをわかってもらいたい」という親の姿勢は感じとることができるからです。こうした積み重ねによって、「何かあるときはきちんと話してくれる」という親への信頼が生まれます。そして、人の言葉に耳を傾ける力(傾聴力)が育まれ、適切な状況判断をする力も育っていくのです。
とはいっても実際には、子供が騒いだりぐずったりすることもあるはずです。2、3歳くらいのお子さんであれば、周りに迷惑をかける行動を「仕方がない」と見過ごすことはできません。そんなときは頭ごなしに叱るのではなく、子供に「協力してもらう」つもりで対応しましょう。「電車の中には本を読んでいる人もいるから、大声を出してはだめ」のように理由を添えて言い聞かせ、さらに「退屈だね。ごめんね。もうすぐ終わるよ」など子供への共感も示します。それでもおさまらなければ、電車ならいったん降りるなどしてその場から離れましょう。
騒いだりぐずったりは、4歳になればおさまることも
外出や移動が予定どおりに進まないのは大変ですが、こうした時期はせいぜい3歳まで。きちんと理由を話してもらった子供は、4歳ぐらいになれば聞き分けもよくなります。それまでは子供優先で、ゆとりのあるスケジュールを組むようにしましょう。長距離の電車移動など、その場を離れることが不可能な場合は、いつもとは違うおもちゃや絵本を用意する、子供が眠くなるタイミングと移動の時間を合わせる、などの工夫も必要です。
子供との信頼関係を深めよう!
子供は気持ちをうまく言葉にできないだけで、いろいろなことを大人より敏感に感じています。騒いだり泣いたりするのは、つらい気持ちの表れです。大人の都合を押し付けるのではなく、「つらいかもしれないな」と子供の気持ちを受け入れ、できる範囲で譲ってみてください。そして、してはいけないことなどを言い聞かせるのと同時に、「人が多くて疲れちゃったね」などと子供の気持ちを言語化することも心がけましょう。そうすれば子供は、親は自分の気持ちをわかってくれるし、強引にものごとを進めることもない、という信頼感をもてるようになります。こうした思いは、相手の立場でものごとを考える姿勢にもつながります。そして、「親も周りの人も困るから、今はがまんしようかな」という気持ちが自然に生まれてくるのです。
教えてくれたのは
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子 構成/野口久美子
めばえ 2018年8月号
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。