春ドラマの半数以上が新型コロナ感染拡大の影響でスタート日を延期しています。各局ともゴールデンタイムのドラマ枠では過去の名作を再放送。続編が始まるはずだった「ハケンの品格」(日本テレビ系)も2007年制作の第1シリーズを総集編で放送中です。ハイスペックな派遣社員・大前春子(篠原涼子)が活躍する「春子の物語 ハケンの品格2007特別編」の見どころをチェックしておきましょう。
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2007年に派遣社員のリアルを描いてヒットした傑作ドラマが総集編で放送中
篠原涼子さんが演じる大前春子は、3ヶ月ごとに会社を渡り歩く派遣社員。といっても、時給は3000円と破格で、オフィスでパソコンを使っての作業はもちろん、助産師からマグロ解体師までたくさんのスキルを持ち、できないことはないというぐらい“最強のハケン”です。朝9時から夕方6時までの勤務時間を秒単位できっちり守り、残業はしない。派遣先の会社の社員や派遣仲間と馴れ合うことをせず、歓迎会にも出席しないという徹底ぶり。それでも同僚たちからはいろんな質問をされますが、答えは「それが何か?」という冷たくあしらいます。同じ会社から派遣されている美雪(加藤あい)にも容赦しません。その忖度しない態度が痛快だと、13年前の放送時も評判になりました。
春子はその気になれば正社員にもなれるハイスペックなハケンですが、最初に就職した銀行からリストラされた過去を持ち、会社という組織とそこにあぐらをかいている正社員たちを信用していません。「社員は使えないのでいりません」とお荷物扱いします。
「社員でもリストラされたら終わり。不景気が100年続こうと、日本中の会社が潰れようと私は大丈夫。ハケンが信じるのは自分と時給だけ」
と言う春子。だからと言って、派遣社員の制度に問題がないと思っているわけではなく、正社員には「あなたたちはハケンを人だと思っていますか」と問いかけます。労働人口の2~3%、現在130万人ほどいるという派遣社員ですが、ボーナスが支給されない、交通費が出ない、3ヶ月ごとに契約が更新されるか見直しがあるなど、弱い立場であることは確か。このドラマはそんな問題点も描いています。2007年の制作時、脚本の中園ミホさんが実際の派遣社員たちに聞き取り取材をして書いた物語だけに、リアリティがあります。スキルが低く、就職先が見つからないために仕方なく派遣社員になった美雪が春子に出会って成長していく姿も共感を呼びました。
まるで漫才コンビ! 篠原涼子と大泉洋のハイレベルなセリフの応酬が見もの。
このドラマの見どころは、なんと言っても篠原涼子さんと大泉洋さんの共演。媚びない派遣社員である春子と、そんな春子を許せない正社員・東海林の対決が、笑いを誘います。春子は東海林のくせっ毛をからかって「くるくるパーマ」と呼び、東海林は春子がいつもタートルネックの服を着ているので「とっくり」と呼び捨てにします。その言葉の応酬がテンポ良くてみごと。決め言葉の「それが何か?」などセリフの切れがいい篠原さんと、やり込められてキーっと悔しがる演技が絶妙な大泉洋さん。まるで漫才のボケとツッコミのようなやり取りを見せてくれます。2007年の放送当時、北海道の大スターである大泉さんは、まだ全国では現在ほどの知名度はなかったのですが、このドラマで一躍、注目を集めました。
2人は犬猿の仲かと思いきや、いつの間にか、お互いが気になる存在となり、東海林はいきなり春子にキスをしました。それを「口にハエが止まっただけ」と辛辣に言ってのけた春子ですが、5/6(水曜)放送の第4回ではなんと東海林がプロポーズを! さすがにプロポーズはスルーできないと思うのですが、春子はどうするのでしょうか。
2020年版の新シリーズでは、春子がS&Fに舞い戻り、東海林や里中と再会する!
近日スタート予定の続編では、春子が13年ぶりに食品商社のS&Fに派遣されることに。かつて春子と共に立ち上げた「ハケン弁当」が当たったおかげで営業企画課長に出世した里中(小泉孝太郎)に乞われ、復帰したわけですが、春子の実力を知らない社員たちは無愛想な春子に反感を持ちます。そんな中、同じ派遣社員である亜紀(吉谷彩子)が社員からセクハラを受け、それを告発した派遣の小夏(山本舞香)もピンチに。そして、出世街道から外れ旭川支社にいる東海林が東京に駆けつけ、春子と再会します。
予告編では、春子が東海林を「くるくるパーマ」と呼び、東海林が「来たよ、この感じ」と懐かしがる場面も。この13年の間に東海林は一度結婚して離婚しているということで、春子への思いが再燃するのかも気になります。また、里中も昔は春子に好意を抱いていましたが、その思いを完全に振り切っているのでしょうか。そんな恋愛面も楽しみです。
奇しくも2020年、パンデミックで景気の悪化が予想され、既に“派遣切り”も起こってニュースになっている中、始まる新シリーズ。“(立場の)強いハケン”である春子が、“弱いハケン”である亜紀や小夏の意識を変えていく物語になりそうです。できることなら、弱いハケンでも職を失わないで済むような社会状況になりますように!
文/小田慶子