子供も都合よくすぐには寝ませんから、「また10時を過ぎた」「もう10時半だ……」などと、イライラしているパパ・ママも少なくないと思います。早く就寝させ、たっぷり寝させた方がいいと分かっていながら、実際はできずに悩んでいたら、まずは何から手を付ければいいのでしょうか?
そこで今回は、助産師として全国でセミナーを行い、親子に有益な情報を提供し続ける小林いづみさんに、子供の理想的な睡眠時間や、睡眠時間を伸ばすための工夫を聞いてみました。
子どもの平均睡眠時間
7歳の児童は9時台に寝ている子供が6割以上
そもそも現代の子供は何時ごろに寝ているのか、確認してみましょう。信頼できる情報源としては、日本の厚生労働省が過去に数回行っている「21世紀出生児縦断調査」があります。同調査の第7回目は平成22年出生の子供を対象としていて、7歳(調査時)の児童の登校日における平均就寝時間は以下のようになっています。
午後9時前・・・28.7%
午後9時台・・・61.1%
午後10時台・・・9.2%
午後11時以降・・・0.5%
時間が不規則・・・0.2%
9時台が最も多く、9時前に寝ている子供も3割近くはいるという結果。第6回の調査と比べると、午後10時台が大幅に減り、午後9時前と午後9時台の割合が増えています。そう考えると各家庭で早寝の動きが目立ってきていると言えます。
低年齢の幼児の就寝時間の割合
ではもっと低年齢の幼児の就寝時間はどうなのでしょうか。日本小児保健協会調べによると、午後8時前に就寝する子供の割合は以下の通りです。意外に少ない印象です。
1歳6カ月児・・17%
2歳児・・・12%
3歳児・・・16%
4歳児・・・18%
5~6歳児・・・14%
また、逆に午後10時以降に寝ている子供の割合は、以下の通りです。
1歳6カ月児・・30%
2歳児・・・35%
3歳児・・・31%
4歳児・・・26%
5~6歳児・・・25%
子供が小さいときほど、午後10時以降に寝かせている家庭が少なくないと分かります。
睡眠不足は子供にどんな害をもたらす?
睡眠が不足する結果、子供が体験不足、経験不足に
最後に、睡眠不足は子供にとって、どのような悪影響があるのか聞いてみました。もちろんマイナス面は挙げればきりがないと言いますが、1つの印象的な弊害として、
「体験不足、経験不足」
を小林さんは挙げてくれました。
集中力を欠く状態
「睡眠不足=体験不足、経験不足」とは少し意外な取り合わせですが、子供が睡眠不足に陥ると、常に眠たく、集中力を欠いている状態になってしまいます。そのため、何をしていても体験や経験が子供に残らなくなってしまうのだとか。親としてはいろいろ与えているはずなのに、伝わっていかず、体験不足、経験不足の子供に育ってしまう……。ちょっと怖い話ですよね。
子供(幼児)の理想的な睡眠時間
では、昼寝を含めて子供は、何時間の睡眠が理想的なのでしょうか。米国睡眠医学会によると、以下の通りです。
ただ、例えば1歳の子供を1日11時間、どのタイミングから寝かせてもいいという話ではないはず。深夜の0時前後は子供の成長に欠かせないゴールデンタイムだとも言われています。
子供は太陽と一緒に寝起きするのが理想的
そこで助産師として全国を飛び回り、子供と親のために各種のセミナーを行う小林いづみさんに「何時に子どもを寝かせるといいのか」と取材したところ、
「本当を言えば、太陽と共に起きて、太陽と共に寝るといったサイクルが理想的です」
と教えてくれました。
例えばこの記事を書いている8月の日の出は4時半ごろ、日没時間は夜の7時ごろになっています。これだけでたっぷり9時間。さらに午前のお昼寝、午後のお昼寝で2~4時間ほどプラスすれば、1~2歳に必要な睡眠時間は十分に確保できる計算になります。なるほど、理に適っていますよね。
子供が睡眠不足になる原因は?
もちろん、夫婦共働きで帰宅が夜の7時過ぎという家庭では、物理的に日没とともに子供を家のベッドで寝かせられません。そのような家庭ではちょっとまねできないと思いますが、夫婦どちらかが専業で子育てをしていたり、育児休業を取得中の家庭などは、チャレンジしようと思えばチャレンジできるはずです。
実態はズルズルと就寝時間が後ろにずれていって、子供の就寝時刻が8時を過ぎ、9時を過ぎて、10時を過ぎてしまうといった家庭も多いと思いますが、日没(近く)に寝かせて日の出ととも(近く)に子供が起きるようなスタイルに持っていくためには、どのような工夫をすればいいのでしょうか。
早寝早起きのルーティーンを作るには?
その点を小林さんに聞いてみると、
「まずは親自身が子供を早寝早起きさせられる生活ペースになっているかを、考えるといいかもしれません」
という答えがありました。当たり前の話ですが、日没前後に子供を寝かせるためには、日没前後に自宅の寝室に親子で横になっていなければいなければいけません。親が一緒に眠るかどうかは別として、少なくとも日没前後に「あとは寝るだけ」という状況になっていなければ、寝かせようにも寝かせられませんよね。
「早寝早起きさせていない」と悩んでいる方は、まず自分自身が早寝早起きさせられる生活サイクルになっているのか、抜本的に見直してみるといいかもしれませんね。
子供を早寝早起きさせるために有効なテクニック
子供の早寝早起きのためには、親自身の生活サイクルに加えて、幾つかのテクニカルな部分にも注目したいと小林さんは語ります。
部屋の電気を消す
「まず、部屋の電気は消したいですし、スマホも子どもを寝かせ部屋に持ち込みたくはありません」
やはり照明は子供の入眠や睡眠を妨げると小林さんは指摘します。豆電球はもちろん、家電の待機を示すランプなどの細かい明かりでさえも、入眠や睡眠の邪魔になるケースもあるそう。子供の「眠りたい」という自然な欲求を邪魔しない環境づくりも、早寝早起きには重要なのですね。
スマホは持ち込まない
スマホのブルーライトはスムーズな入眠を妨げるばかりか、寝る前に子供にアプリなどを見せてしまうと、興奮してしまうという悪影響が。寝かしつけの時に親がスマホを見ていると、子供が覗き込んでくる場合も多いので、ぐっと我慢を。
体を使った「遊び」も、早寝早起きには欠かせない
他には、子供が起きているときの親子の関係も、スムーズな入眠と深い眠りにとって重要だと小林さんは語ります。
「やはり、日中に体を使って遊びきれていないと子供は眠りません。子供の生活パターンを親が知り、昼寝の前にしっかりと遊ばせ、昼寝の後もしっかりと遊ばせて、完全に遊び切れた状態で夜を迎えられるように親が配慮していければ理想的です」
親としては日々の家事・育児で心身ともにしんどくて、日中は子供と一緒に体を動かして遊ぶより、ゆっくりと横になっていたい気持ちもあるかもしれません。しかし、遊ばせなければなかなか子供は眠らない。ともすれば親子で睡眠不足になるという悪循環に陥る恐れがあるのですね。
子供の心身の健やかな成長のためにも、上質な睡眠時間の確保に取り組み、親子ともども毎日を元気に送りたいですね。
【取材協力】
※ 小林いづみ・・・助産師。昭和33年、宮崎県生まれ。3人の子供の母親。トコ企画の骨盤ケアアドバンスセミナー、新生児ケアセミナー、赤ちゃん発達応援セミナーを担当。トコ・カイロプラクティック学院では基本整体ペルビック、基本整体ベビー、まるまる育児アドバイザー養成セミナー、おとなまきアドバイザー養成セミナーなどを担当する。東京都福生市の助産院、東京都品川駅近くのサロンで、抱っこクラス、スリングレッスンクラス、発達応援クラス、個別ケアを受け持つ。
http://coubic.com/majotama
http://coubic.com/maaruikosodate
【参考】
※ 第7回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況 – 厚生労働省
取材・文/坂本正敬