考える力が身につく「思考の達人ツール」とは?大人も使ってみよう【発育のススメ】

教育と訳されるeducationの語源はeduce。「能力や可能性を引き出す」という意味です。本来の意味を知る福沢諭吉はeducationを「発育」とすべきと主張したそう。この連載では、教える側ではなく学ぶ側を主体とした発育をコンセプトに、最先端の教育事情を紹介します。

今、思考力、判断力など、主体的に考える力が重視されています。では、どうやったら自分の頭で考えられるのでしょうか?
ここでは、思考という抽象的な行為を「比較する」「分類する」など具体的なプロセスに落とし込める、画期的なツールを紹介します。

自ら考える力が身につく 「思考の達人ツール」とは !?

小学館の通信教育「まなびwith」では、思考力を育むことを目的にした「思考の達人ツール」という教材が用いられています。この教材は、下の利用例で紹介しているように、2つのものを比較するときにベン図を用いるなど、「考える」という行為をビジュアル化できるようになるツールです。学校教育では自ら考える力が重視されていますが、「どう考えるか」といったプロセスに対応するツールは多くはありません。この点に注目して教材を開発したのが、瀬戸SOLAN小学校副校長の三宅貴久子先生です。

「『ただ考えなさい』と言うだけでは、子どもは大人が何を考えてほしいのか、要求する答えを探るような考え方をしてしまいがちです。模範回答を探す、正解を探すという方法では、結局自分の頭で考えるということができません。考えるプロセスはさまざまありますが、私が注目したのは〝考える〟を細分化することでした。例えば、〝考える〟の中には、〝比較して考える〟〝分離して考える〟など具体的な行動レベルがあります。それを表や図を使って可視化することによって、今、自分は〝比較というツールを使って考えている〟のだと、子どもに認識させることができます。そこに気づくことで、自分の頭で考えるイメージが持てるようになります」

思考の達人ツールとは?

「思考の達人ツール」には、さまざまな図があります。これを使うと考え方のプロセスが可視化できます。具体的なポイントを紹介しましょう。

POINT❶ ベン図の利用

ベン図とは、比較に使う図です。複数の事象から特徴を見つけ、円が重なっているところに共通点、重なっていないところに相違点を書くことでその両方を意識することができます。比較というと、違うところに目がいきがちですが、ベン図を用いることで、一見関係ないものにも共通点があることに気づけます。

POINT❷ 何で比べるか

比較のポイントは、比べる視点を見つけることです。何に注目をして比較するかが大切。視点を見つけるためには、対象についての情報が必要なので、親子の会話の中で「何で」比べるかのヒントを教えたり、お子さんが知っていることを引き出したりして、さまざまな視点を見つけましょう。

POINT❸ さまざまなツールを使う

「思考の達人ツール」には、ベン図以外に、XYチャート、くま手図など、10種類ほどのツールがあります。低学年では、ツールに慣れることや、考える楽しさを知ることが目標です。学年が上がるにつれ、さらに複雑な図表を使った考え方を学び、それらを自分の意図や目的に応じて選択、組み合わせることができるようになります。

思考の達人ツール利用例

「思考の達人ツール」は、あくまで道具のひとつ。例えば、えんぴつは、最初はうまく書けなくても、繰り返し繰り返し使うことで、速いスピードで字が書けるようになります。ただし、えんぴつは速く書くことが目的ではなく、筆記用具という学習ツールのひとつです。それと同じように、「思考の達人ツール」は、物事を考えるときの道具のひとつであり、使いこなすことではなく、それらを使って自分の考えを持てるようになることが目的となります。

最初は、ドリルのように与えられたものをやるという感覚かもしれませんが、使い続けていくうちに、『この問題を考えるときはベン図が使えるんじゃないかな』『比較してから構造化したほうが考えをまとめやすいな』など、ツールの適切な選択や組み合わせができるようになります。考えるという行為に、自分なりの文脈をつくることができるようになるのです。小学1年生から自分で考える習慣を身につけることは、たくさんの解がある世の中で、『私はこう思う』と一人称で語れる人を育むことにつながります

この教材で大切なのは、子どもの解答をチェックする親の意識だと、三宅先生は言います。

親子で一緒に考えることが大切

「大人は子どもに〝教える〟という意識が身についています。親は丸つけをして終わりではなく、一緒にやってみることや解答をもとに会話をすることが大切です。また、親が解答したものを子どもに丸つけさせるなど、上下関係ではなく同じ目線でコミュニケーションすることで、子どもの考える力、言葉にする力が育まれていくと思います。親子の会話はなにより子どもの語彙力を増やします。子どもに『思考の達人ツール』を与えれば考える力がつくと考えるのではなく、親子で一緒に体験することで、一緒に成長する過程を楽しんでみてください

 

単に知識を増やす暗記型の勉強以外に、こういった思考のツールを使って、ゲーム感覚で思考力を鍛えることも大切です。家庭での学習法やコミュニケーションツールとして、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

【思考の達人ツール】

お話をうかがったのは…

NPO法人学習創造 フォーラムFiLC理事 教育アドバイザー 2021年愛知県瀬戸市に開校予定の瀬戸SOLAN小学校副校長
三宅 貴久子 先生

公立小学校などで勤務、関西大学初等部の開校準備に携わり、独自の思考スキル習得の学習『ミューズ学習』の指導を担当。

「発育のススメ」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2020年8月号 別冊HugKum  構成・文/山本章子

 

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