自然豊かで子育てもしやすい地方に家族で移住!新しい価値観「ニュースタンダード」な暮らし方とは?

2020年、全世界に多大な影響を与えたコロナ禍。日常の活動が制限され、これまでの当たり前の暮らし方が決して当たり前ではなくなっている昨今、「ニュースタンダード」なる新しい価値観も生まれてきています。オンラインでのリモートワークスタイルにより場所にとらわれない働き方、暮らし方が普及、移住二拠点居住も選択肢の一つとして受け入れられつつあります。

特に子育て世代のHugKum読者の皆さんにとっても、自然豊かな地方での育児は魅力的なはず。

家族で金沢に移住!手島シークリンデさんの「ニュースタンダード」な暮らし方

今回、実際、既に移住を実現し、ニュースタンダードな暮らし方を先取りしている方にその実状を取材させていただきました。

お話を伺ったのは、石川県金沢市へUターン移住後、3人のお子さんの育児に従事しながらPR会社、オフィスシュナイダーを設立された手島シークリンデさん。

地元の魅力を発信するPR業務に勤しみつつ、女性の起業支援や飲食店のプロデュースなどにも携わる手島さん。2015年までは人気ファッションブランドのPR・プレスを務め、充実した東京ライフを満喫されていました。そんな手島さんが、なぜ移住を決意することになったのでしょうか?

金沢にUターン移住を決意したきっかけは?

ちょうど長男の小学校入学、次男の出産の時期が重なり、子育て環境についてより深く考えるようになって、金沢への移住を意識するようになりました。

長男の小学校の運動スペースが自由に遊び回れるほど十分じゃなかったり、近所の歩道は、交通量が激しくベビーカーを押して歩くのも一苦労だったり。東京の生活は効率的で何でもあってとても便利ですが、自然に恵まれ山や海で自由に駆け回っていた自分の子ども時代とのギャップを感じ、子育てという観点からするとこれは何か違うなと。

ただ、東京から離れることでファッションや情報の感度が鈍るのではという不安もあり、なかなか移住にふみきれずにいたのですが、東京から長野の茅野市に移住した先輩から田舎に行くほど、感度が上がることはないんだよ!とぴしゃりと言われて、背中を押されました。

すぐに移住というわけにはいかないので、最初は夏休みや冬休みを利用して長期滞在を試みました。そうしたら、子ども達の目の色がすっかり変わって!長男は「芝生の香りを感じる」とか「海の風の香りがミントみたい」とか言うようになって。小学一年生でも感じるものがあったのでしょうね。正に先輩が言っていた通り、五感が鋭くなったのかなと感心しました。

実際、移住してみて良かったと感じるのはどんな点ですか?

都会では遠慮がちだった子ども達の様子に明らかに変化が現れました。

大自然の中で日々過ごすことで、とてものびのびできるようで。学校の授業にも自然環境を活かした内容のものがあって、季節ごとに近所に生息する草花を採取して6年間かけて標本を作る「四季の草花」という授業があるのです。ポケモンの名前を覚えるかのようにいつの間にか植物の名前をたくさん覚えてしまっていたり(笑)。

校庭の畑で野菜を育てる農的体験学習もあります。自分達が一生懸命育てたサツマイモをイノシシに食べられてしまうなんてこともありました。

自然から学ぶことって、いっぱいあると思いうんです。東京は物事が効率よくスムーズに運んでいってとても便利なように感じます。でも、ちょっとくらい不便だったり、自然の厳しさを体験してこそ、本質的な生きる力を身につけ成長できるのではないかと思います。そんな子どもの時にしかできない貴重な体験を思う存分してもらうには最適な場所です。

東京から離れることで、子どもの学力低下の心配は?

地方に行くことで学力が低下するのではないかと心配される方もいるようですが

実は石川県は小学6年生と中学3年生を対象に毎月4月に行われる学力調査テストで4科目No.1の県に輝いたんです。冬は寒くてあまり外出できず家の中で勉強に集中するしかなくて、オンとオフがきっちりしちゃうのが理由かもしれませんけれど(笑)。

それから、学校の先生と保護者の壁がないように感じますね。

東京では先生にいろいろ聞きづらく感じていたのですが、金沢は先生が積極的に関わってきてくれるんです。校長先生ですら、どんどん表に出てきて、各クラスを見て回ってくれたりするんです。自然の豊かさ、のびのびとした教育事情もさることながら、歴史と伝統が息づく文化的な環境も魅力です。ちょっと街を歩けば、老舗がたくさん軒を連ねています。

例えば、寛永二年(1625年)に創業され伝統の職人技を受け継ぎ、酒造りに勤しんできた福光屋さんや、

福光屋の専務取締役の福光太一郎さん(左)は日本酒の発酵を活かした化粧品開発など、若い世代への日本酒の訴求に意欲的。

1875年の創業以来、金沢の伝統発酵食品を今に伝える四十萬谷本舗さん。この土地で代々受け継がれていた酒蔵、お醤油屋さん、漬け物屋さん、加賀友禅などなど。挙げだしたらきりがないくらい日常の生活の中に溢れています。私が子どもの頃から変わらない金沢らしさにいつもホッと心癒やされます。伝統と歴史を感じられる場所が身近に当たり前にあるのはとても贅沢に感じますし。

四十萬屋本店、四十万谷ご夫婦の発酵ワークショップは親子にも人気です。

また、金沢21世紀美術館が有名ですが、国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)が、この秋に移転されてきます。文化的な施設も充実しています。

子ども達も大きくなったら、いつかこの環境で育った恩恵を感じてくれるのではないかと思います。

オフィスシュナイダーのWEBサイト。

実際に移住を考えたとき、仕事はどうする?

移住がきっかけで起業されたとのことですが、働くことに関してはいかがですか?

PRやデザインなどの仕事は、この土地ではあまりなじみがなく、特に行政の方になかなか理解されず、当初はとても苦労しました。

タレントのMEGUMIさんの手がけるカフェ「caféたもん」が東茶屋街に出店するお手伝いをさせていただいたのをきっかけに、認知も信頼度もあがり、いただくお仕事が増えました。

前述のように伝統と文化が息づき、都会的な洗練された文化を受け入れる土壌がある場所。まだここにはない都会的なセンスが必要される部分がたくさんあり、可能性の溢れている街だと感じています。

また、金沢は県民性からか、あまり前に出ない、遠慮がち、控えめという人が多い。女性はもっと活躍していいんだというコンセプトで女性の起業を応援するセミナーを開催したら、あっという間に30人の定員が埋まりました。「女性起業家セミナー」、や「パーソナルブランディングセミナー」といったものの需要が、地方こそあるということを改めて感じました。参加者同士がつながる機会をつくることで、異業種のコラボレーションが増え、ひいては金沢の活性化にもつながるとも思います。とてもやり甲斐を感じています。

手島さんのこのインタビューをご覧になって、移住先、多拠点居住先として金沢が気になった方もいるかと思うのですが

滞在の施設も充実しています。金沢らしい古民家に暮らすように滞在できる旅音という施設があります。

オーナーがUターン移住者で、コワーキングスペースも併設されている場所もあります。初めて金沢にいらっしゃる方でも地元の人とのつながりを持つことができますし、単なる観光旅行でなく、生活者としての目線で滞在することができるはずです。

金沢への移住が気になった方は是非、まずは、旅音さんなどの趣ある快適滞在施設を利用し、住まうようなロングステイを体験してみることをオススメします。

都会とは違う魅力に溢れた“地方で暮らす”という選択肢

江戸時代、百万石以上の領地を誇った加賀藩の城下町であり、江戸、大阪、京都に次ぐ都市として高度な文化を築き上げてきた金沢。戦災に遭わず、昭和な開発もまぬがれ、豊かな自然と美しい町並み、伝統と文化を今に伝える素敵な街には、都会の便利さや物資的な豊かさとは違った魅力で溢れています。

これからの時代、ゆったりとした四季の移ろいの共に伝統や文化を感じる日常の中ですくすく育つことこそ、どんな英才教育にも勝るとも劣らない学びになるのでは?なんて手島さんのお話から感じました。

もちろん、金沢以外にも日本にはそういった地方がまだまだたくさんありそうです。

“地方で暮らすという、ニュースタンダードな暮らしの選択肢、一度、検討してみる価値がありそうです。

 

プロフィール

手島シークリンデさん
金沢市出身。ドイツ人の父と日本人の母との間に生まれる。20歳の頃、ミス東京グランプリを受賞しドイツと日本を繋ぐ友好親善大使となる。香港・オーストラリアへ留学後、アパレル業界で数々のブランド立ち上げに携わった後、ディーゼルジャパン株式会社にPR/PRESSとして入社。在職中に結婚・出産を経て、仕事と育児の両立をこなすママプレスとして注目され数多くのメディアに取り上げられる。20154月、自身の求めるライフスタイルを実現するため東京から金沢へ移住。20164月、大好きな故郷金沢を拠点に食・人・コト・モノをコンテンツにローカルからグローバルへをコンセプトに地方活性・地方創生に根ざしたPR オフィス()オフィスシュナイダーを立ち上げる。202010月よりYouTubeりんちゃんのDanke TV」をスタート。

文・構成/小学一年生編集部

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