山形県庄内「スイデンテラス」。田んぼに浮かぶホテルを、家族で訪れたい理由。

見渡す限り水田。その豊かさに気付く人々に愛されるホテル

出羽三山に囲まれた庄内平野。見渡す限り水田が並ぶ、典型的な田舎町に、2018年に誕生したホテル「スイデンテラス」は、閑静だったこの地方に、人の流れを生み出しました。多くのメディアに取り上げられ、首都圏をはじめとする遠方からもお客さんが絶えないホテルの魅力とは。HugKumでは、乳幼児、小学生のお子さんをお持ちのファミリーにお勧めしたいポイントを数多く発見しました。併設する児童施設「キッズドームソライ」とともにレポートします。

どこにいてもホッとできる、ぬくもりを感じる空間

スイデンテラスが建設されたのは、元々田園風景だった場所。運営会社であるヤマガタデザイン代表の山中大介さんは、ここにホテルを作りたいと思い描いた当初「こんなところでホテルを運営して成功するはずがない!」と、周囲から大反対にあったと言います。

そんななか、ホテルのどこにいても田んぼを感じ、田んぼに溶け込むような木の温もりを大事にしたデザインに徹底的にこだわることで、まずはメディアで話題になり、そしてお客さんに愛されるホテルになりました。

もう一点、山中さんが大事にしているのが「地域の魅力を世界に発信する」こと。特に、地元の主軸産業である農業について自ら学び、地元の農家を巻き込んだ有機農業の仕組みを作ったそうです。

周りは水田、夏はカエルが大合唱し、冬は一面の雪景色に。庄内地方の四季を感じられ、山・海や川を生かしたフィールドワークや地元工芸作家のワークショップなど、滞在中に豊かな自然と、地方ならではの体験ができる。幼少期の子供にとって幸せで、強烈な体験となるはずです。

本に囲まれる贅沢。2000冊のライブラリー

スイデンテラスの魅力のひとつに、2箇所のライブラリがあります。その蔵書は約2000冊! 中には絵本や図鑑といった、子供向けの本も数多く並びます。

ここにある本にはすべてコンセプトである「オトナもコドモ コドモもオトナ」のオリジナル蔵書票が貼ってあり、「自然や生き物」「世界を見渡す」「日本と山形」「未来について考える」「My Favorite things」「こどもたち」など、多様なテーマに分けられ、並べられています。

本のセレクトを手がけたのは、ブックコーディネーターの幅 允孝さん。「未知なるものに手を伸ばす好奇心のタネをこの場所で思い出していただきたい」という言葉の通り、インスピレーションにあふれ、滞在中の楽しみを膨らませてくれます。

実際に筆者も、自分用に買いたい本、子供に買ってあげたい本に何冊か出会うことができました。

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子どもたちが狂喜して遊ぶ、併設の児童施設「キッズドームソライ」

そしてスイデンテラスと並んで建つ、インパクトの高い建築施設が「キッズドームソライ」。これからの時代に生きる子どもたちに必要なチカラはすべて「遊び」によって育まれるという考えのもと、建てられました。地元の小学生は、学童としても利用しています。

キッズドームソライを利用できるのは0歳〜小学6年生の子どもと、その保護者。一回あたりの利用料金(0歳無料、1歳500円、2歳700円、3歳以上1500円。保護者は一律500円。※詳細は公式ホームページをご確認ください)を支払えば、開館時間はいつでも楽しむことができます。

走って、登って、すべって…無限に遊べる場所

まず圧巻なのが、高さ6mの巨大ネットジャングルやボルダリング遊具がある「アソビバ」エリア。裸足で駆け回り、登ったり降りたり。様々な運動を促す仕掛けが施されていて、子どもたちは目を輝かせ、思い切り体を動かして遊びます。

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ひらめいたことを形にできる最高の環境

「アソビバ」とはうって変わって集中する場となっている「ツクルバ」には様々な素材が並び、工作やアクセサリー、3Dプリンターを使用した本格的な物作りまで体験できます。子どもの頭の中にあるアイデアをうまく物作りに反映できるようスタッフが声をかけ、自分のオリジナル作品を作る達成感を味わえるよう、寄り添ってくれるのもうれしいポイント。

これは、ツクルバで時々開催されるワークショップで作成されたレーザーカッターによる「ギアギアっとまわります」と名付けられた作品。歯車で回る仕組みを理解でき、ものの動きの裏側に興味を持つきっかけになりそうです。

ツクルバでは物作りをする前に、子どもたちが「せっけいず」を描くのも特徴。これを描くことで、自分のアイデアを人に説明したり、自分の作品を参考にしてもらえたりと、遊びの広がりにつながります。

そしてここでも、多くの本がすぐ近くに

そしてこのソライにも、スイデンテラス同様「オトナもコドモ コドモもオトナ」というコンセプトに基づき、幅 允孝さんが子どもたちのために選書した約800冊の本が並び、思い思いの場所で読書に没頭することができます。通称「どかん」と呼ばれる上記の場所はいつも順番待ちになるほど、子どもたちにも大人気だそう。

ソライ内には0−2歳の乳児だけが利用できる専用エリアもあり、赤ちゃんでも安心して遊ばせることができます。

様々な楽しみ方ができ、多くの発見をくれる場所。家族がそれぞれの視点でインスパイアされる場所。そんな滞在場所がスイデンテラスとキッズドームソライです。自然が失われていく時代を生きていく子どもたちに、小さい頃からいろいろな価値観に触れさせることは、サステナブルな未来を築くヒントになるかもしれません。

スイデンテラス

キッズドームソライ

取材・文/HugKum編集部

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