「境」の確かな決まりはありません
先に答えを言ってしまいます。ここが境だという確かな決まりはないのです。
たとえば、各地のお天気をいうときは、「東日本」は、関東甲信、北陸、東海のことで、「西日本」は、近畿、中国、四国、九州北部、九州南部のことです。これ以外のところをいう、北海道と東北地方に当たる「北日本」があります。
地質構造の分かれ目は、フォッサマグナ
地質学では、その境目は糸魚川―静岡構造線だとしています。糸魚川―静岡構造線は、新潟県の糸魚川市から松本盆地・甲府盆地の西を通って静岡市付近へ達する本州の中央部をほぼ南北に走る大断層で、いわゆるフォッサマグナの西縁をなします。これを境に日本列島の地質構造が異なるのです。
国語辞典では、中部地方以東を「東日本」、以西を「西日本」としている
ところで国語辞典での説明はどうかというと、「東日本」を中部地方以東、「西日本」を中部地方以西としているものが多いと思います。でも待ってください、これでは中部地方はいったいどちら側なんだ、と突っ込みを入れたくなるかもしれませんね。別に中部地方がどっちつかずの地域だということではなく、中部地方に境目があると考えるため、微妙に食い違いが生じてしまうということなのです。
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。最近は、NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。