子どもが成長するなかで、親が把握しにくいのが「視力」です。子ども自身も見えていないことに気づきにくいという難しさもあります。今回は、特に子どもの「遠視」について解説していきます。
遠視の原因から治療法、放っておくとどうなってしまうのか。さらには治療に必要な眼鏡の選び方、かけ方を解説していきます。
子どもの遠視って治るの?
成長の途上にある子どもの目。この時期に遠視など、視力が悪くなる要因があると、見る機能の発達が妨げられることにもなりかねません。
子どもの視力の発達は、6〜8歳ごろにピークを迎えると言われており、早期に発見、治療することが求められます。早期に適切に対処できれば、身体の成長とともに眼鏡を外すことができるケースもあり、早めに医師に相談することが大切になります。
子どもの遠視の特徴
人の目は多くの場合、13歳くらいまでに眼球や角膜が成長し、「見る機能」が完成していきます。ですが、その過程で、なんらかの理由で遠視となってしまう場合があります。
子どもの遠視にはどういった特徴があるのか見ていきましょう。
遠視は屈折異常のひとつ
人の目はカメラと同じような構造をしています。外から入ってきた光は、角膜や水晶体で曲げられ、網膜上で焦点を結びます。
遠視の場合、こうした角膜や水晶体のピントを合わせる機能の異常や目の奥行き方向の長さとのバランスによって、焦点が網膜の後方で合ってしまいます。ピントが正確に合わないため、ものがぼやけて見えてしまうことがあります。
特徴1:遠視は気づきにくい
子どもはもともと軽度な遠視の状態で生まれてくるため、遠視があっても気づきにくいことがあります。特に外部からは判断することが難しいため、3歳児検診まで子どもの遠視に気づかないというケースも少なくありません。
特徴2:水晶体の調整力が強い
子どもの目は水晶体の調整力が強いため、遠視が進んでもピントをなんとか合わせられるため、普段の生活には支障がない程度に見えていることもあります。学校などで行う通常の視力検査では発見が難しいケースもあります。
特徴3:よく見えると判断される場合も
遠視はある程度の軽い度数なら、むしろ遠くも近くもがよく見えます。そのため「視力に問題あり」と認識されるのではなく、むしろ視力が良いと認識されてしまうことがあります。
子どもの遠視の症状
子どもの遠視では、具体的にどのような症状が見られるのでしょうか。子どもが遠視の場合に見られる症状を解説します。
集中力に欠ける
遠視の状態の目は、日常生活では常に無理にピントを合わせ、目に負荷をかけていることになるので、目が非常に疲れやすくなります。
お絵描きや勉強など、手元で細かい作業を行うときに集中力が続かないという場合は、遠視が原因で目が疲れやすくなっているのかもしれません。
頭が痛くなる
近くを見るときには、目にかなりの負担をかけることになります。大人でも目を酷使したときに、頭痛に悩まされることがあるように、子どもが遠視の場合、近くを見続けると目に大きな負担がかかり、頭が痛くなることがあります。
目つきが不自然
子どもが日常生活のなかで、上目づかいになったり、よく目を細めるなど、不自然な動きをしているときは、見にくさを補おうとしている可能性があります。
転びやすい
近くがはっきりと見えていないため、足元の障害物に気づかずに転んでしまうこともあります。運動神経の問題と考えがちですが、転んだり、つまずく回数が多いときは遠視の可能性もあります。
弱視、斜視につながる場合も
遠視をそのまま放置してしまうと、弱視、斜視などにつながる可能性があります。ピントを合わせようとして両目の視線が内側に寄ってしまう「調節性内斜視」や、目への刺激が不足して視力の発達が妨げられて「弱視」になってしまうなど、違う病気を引き起こしてしまいます。
成長が止まってからでは回復はかなり困難になってしまうので、早期発見、早期治療が大切になります。乳幼児健診、3歳児検診などで発見されることも多いので、しっかり受診するようにしてください。
子どもの遠視の原因は?
子どもの遠視は何が原因なのでしょうか。子どもの遠視の原因について見ていきましょう。
体質
体質も原因の1つとなります。体格に個人差があるように、眼球の長さや、角膜、水晶体の屈折率(光の曲がり方)にも個人差があります。そうした体質によって、屈折異常を起こしてしまうことがあります。
体質が原因の場合は遺伝的要因が大きく、両親が遠視の場合は、子どもも遠視になりやすいという傾向があります。
テレビ、スマホ、ゲーム
子どもが大好きなテレビやゲームが直接的な遠視の原因になっているかどうかはまだ明確にはわかっていません。ただし、長時間のゲームやテレビ視聴は目に負担となりますので、注意してください。
子どもの遠視は治る? 治療法は?
残念ながら遠視そのものを直す治療方法はありません。ですが、斜視や弱視につながっていたり、日常生活に影響のある場合は病院での治療が必要になります。
何歳までに治療が必要?
生まれたばかりの赤ちゃんは明暗がわかる程度の視力ですが、まわりを見ることで目の機能が鍛えられて、だいたい6歳ごろまでに目の機能は完成します。
つまりこの時期までに適切な治療を行わないと効果は小さくなってしまいます。詳しい説明をした記事がありますので、参考にしてください。
目薬を使用する
目薬を使用する場合もあります。ただし、遠視を改善するための目薬ではなく、目の筋肉を休ませる目的で使われます。副作用もありますので、使用時は注意してください。
眼鏡で矯正する
眼鏡で見え方を調節することによって、周囲がしっかり見えるようになります。まずは眼科でしっかり検査を行い、眼鏡を作るようにしましょう。
眼鏡での矯正は早い方が効果的です。早めに眼科を受診してください。
子どもの遠視用眼鏡の選び方
眼科で検診を行い、処方箋をもらったら眼鏡屋さんで眼鏡を作ります。眼鏡の選び方について解説します。
選び方1:実用性が高いもの
フレームは実用性が高いものを選びましょう。子どもはまだ身長が低かったり、教室で黒板を見上げるなど、上方を見ることが比較的多くなりますので、フレームは上下幅の広いものがオススメです。
選び方2:疲れにくいもの
かけ心地はとても重要です。顔の形や大きさにフィットしていないと、すぐにずれ落ちたり、鼻や耳が痛くなって、眼鏡をかけなくなってしまうこともあります。
テンプル(柄)や鼻パッドがしっかり合っているか、十分、フィッティングして選んでください。
選び方3:補助金が使える場合も
治療用眼鏡は条件を満たしていれば、助成金や健康保険が適用され、自己負担額が軽減される場合があります。
薄くて軽いレンズは高価になりがちなので、一度、加入している健康保険組合に問い合わせてみてください。
子どもの遠視用眼鏡のかけ方
遠視用眼鏡の使い方は? いつまでかけるのが良いのでしょうか。適切なかけ方を見ていきましょう。
いつまでかける? 使わなくなる場合もある?
子どもによって経過はさまざまですが、中学校卒業ぐらいまでは眼鏡をかけることが推奨されるようです。嫌がる子どももいると思いますが、しっかりと見えることが大切です。
まれに成長するにつれて症状が治まり、眼鏡を使わないで済むようになることもあります。
かけ方1:遠視用眼鏡は常にかけておく
遠視用眼鏡は、お風呂や寝るとき以外は常にかけておくことが大切です。長い間外してしまうとピント合わせする機能がうまく働かなくなり、度が合わなくなってしまいます。基本的には、かけ続けて生活するようにします。
かけ方2:眼鏡生活を前向きにとらえる
子どもが嫌がったり、親が「かわいそう」「いじめられるかも」などと考えて、眼鏡に消極的になるケースも見られます。ですが、子どもの未来を考えて、しっかりと眼鏡をかけることが大切です。
将来、見えにくいまま過ごすことにならないようにと、前向きに取り組んでください。
かけ方3:おしゃれな眼鏡を選ぶ
遠視用眼鏡のデザインは大切です。先述したように、毎日長い時間かけ続けることになるので、子どもが気に入らない眼鏡だと、どうしても敬遠されてしまいます。
子どもの好みにあった、おしゃれな眼鏡をかけさせてあげてください。親が眼鏡をかけているときは、お揃いものを選ぶのも素敵ですね。
早期発見、早期治療が大切
子どもの遠視について解説してきました。遠視は放置しておくと、斜視や弱視につながってしまう可能性があります。少しでも気になるときは早めに眼科を受診するようにしてください。
遠視は早期発見、早期治療が大切です。まわりの大人が注意深く見守ってあげてください。
記事監修
川名 啓介
1999年筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、日製日立総合病院、総合病院土浦協同病院勤務を経て、2006年から筑波大学大学院 人間総合科学研究科 講師となる。2009年千葉県松戸市でかわな眼科を開設。“快適な眼で、人生に潤いを“を目指し、患者さんにわかりやすい医療を提供することを目指している。専門分野:白内障、緑内障。
文・構成/HugKum編集部