目次
子どもの肺炎とは
子どもの肺炎には、どのような特徴があるのでしょうか。原因とあわせて解説します。
特徴
子どもの肺炎は、
・大人の肺炎と症状が異なる
・子どもにかかりやすい肺炎がある
・年齢によって原因が異なり、かかる肺炎の種類が違う
などの特徴があります。
原因
子どもの肺炎の原因は年齢によって異なることがありますが、多くの場合は、細菌、ウイルス、マイコプラズマといった微生物が原因となっています。
これらの微生物が、肺の奥にある肺胞に入り、炎症を引き起こすことで、肺炎になります。
子どもの肺炎の症状
子どもの肺炎の症状にはさまざまあります。ここでは、なりかけのときの症状、肺炎の特徴的な咳、痰、発熱などの症状を解説します。
なりかけのときの症状
肺炎になりかけのときの症状には、咳や発熱、鼻水、頭痛、身体のだるさといった風邪のような症状があります。
風邪の症状と似ているので、肺炎と見極めることは大変困難になります。
咳や痰
子どもの肺炎の主な症状に、咳と痰があります。痰がからんだような湿った咳が長引くことが特徴です。肺炎の種類によっては、乾いた咳が出ることもあります。
40度前後の熱
肺炎では、38~40度前後の熱が出ることも症状のひとつです。症状によっては、微熱程度だったり、熱が出ないこともあります。
胸痛
肺炎によって咳が長期間続いたり、激しい咳による筋肉の痛みによって、胸に痛みを感じることもあります。胸痛が起きると、息苦しさを感じることもあります。
脱水症状
発熱によって体の水分が失われ、脱水症状を引きを起こすこともあります。
また、咳が続くために、水分をうまくとれなくなることもあり、脱水症状を起こしやすい状態になります。おしっこの回数や量が少なくなったり、泣いているのに涙が出ないなどの症状に注意してください。
熱なしや咳なしの場合もある?
一般的に子どもの肺炎では、発熱、咳、痰が見られますが、原因となる細菌、ウイルス、微生物の種類によっては、肺炎にかかっていても熱が出なかったり、咳が出ないこともあります。
赤ちゃんの肺炎の症状
赤ちゃんが肺炎にかかった場合の症状には、どのようなものがあるでしょうか。
細菌性肺炎が多い
肺炎には、いろいろな種類がありますが、赤ちゃんは「細菌性肺炎」にかかることが多くなっています。
細菌性肺炎の原因となる細菌には、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌があります。なかでも肺炎球菌、インフルエンザ菌は赤ちゃんが特にかかりやすいといわれていますが、予防接種の普及によりかなり数は減りました。
ウイルス性肺炎の原因となるウイルスは、RSウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどがあります。(RSウイルスは急性細気管支炎になることが多いです。)
高熱や激しい咳
細菌性肺炎にかかった場合、38℃以上の高熱と、痰がからんだ湿った咳が見られます。咳は激しい咳になることが多く、次第にゼロゼロとした深い咳になることがあります。
呼吸が浅く、脈が早くなる
呼吸が浅くなり、脈が早くなることがあります。重症化した場合には、呼吸困難になったり、夜眠れなくなることもあります。
熱は上がらないことも
赤ちゃんの肺炎は、高熱が出ることが多いのですが、熱が上がらないケースもあります。そのような場合には息苦しさや食欲がないだけのことがあります。
赤ちゃんの不調は早めの受診を
赤ちゃんの肺炎は、重症化しやすいことも特徴です。熱があり、激しい咳が続くなど、いつもと様子が違うようなら、すぐに病院を受診するようにしてください。
子どもの肺炎の治療法・予防法
子どもの肺炎の治療法と予防法を見ていきましょう。
治療法
治療法は、肺炎の種類によって異なります。
肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌が原因の「細菌性肺炎」や、マイコプラズマやクラミジアによる「非定型肺炎」では、抗菌薬(抗生物質)が処方されます。
ウイルスが原因の「ウイルス性肺炎」は、抗菌薬が効かないため、基本的に対症療法となります。痰を取り除く薬や咳止め薬、気管支拡張薬など、肺炎の症状を和らげる薬が処方されます。
予防法
肺炎の予防法の基本は、手洗い、うがい、マスクです。肺炎は感染症ですので、菌やウイルスを取り除くこと、体に菌やウイルスを入れないことが一番の予防法になります。
また、睡眠や食事に気をつけ、体の免疫力をアップすることも大切です。
子どもの肺炎、症状が治まるのはいつ?
子どもが肺炎にかかると、咳が長く続いたり、高い熱が出たり、つらい日が続きます。肺炎の症状が治まるのはいつからなのか見ていきましょう。
治るまでは1週間〜1か月ほど
肺炎の種類や個人の免疫力などにもよりますが、治るまでには1週間〜1か月ほどかかります。ただし、薬が効けば、治る時期は早くなります。
咳はいつまで出る?
肺炎による咳は、2〜3週間ほど続くことが多くなっています。これは、肺炎の原因となる病原体がいなくなっても肺や気管支の炎症が修復されるまでに時間がかかるという意味です。
赤ちゃんは早めの受診を
赤ちゃんの肺炎は重症化しやすいため、咳や発熱が見られたり、いつもと様子が違うようなら、早めに病院を受診してください。
症状が軽いときの保育園・幼稚園・小学校への対処法
肺炎の症状が軽い場合、保育園や幼稚園、小学校に行ってもよいのでしょうか。登園、登校の目安を解説します。
保育園
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」によると、
・感染力が低下して、集団発生や流行の恐れがほとんどなくなった
・保育園での集団生活に適応できるまで身体が回復している
の2点を考慮して登園してもよいかどうか判断します。
幼稚園
幼稚園では、文部科学省が定めた「学校保健安全法」により、登園の目安が決められています。肺炎の種類にもよりますが、多くの場合症状が治まっていることが登園の目安となります。
代表的な肺炎の登園の目安は以下のとおりです。
・マイコプラズマ肺炎:激しい咳、発熱が治まっていること
・RSウイルス感染症:呼吸器症状が消失し、身体の状態が良いこと
・溶連菌感染症:抗菌薬の服用し、24時間~48時間以上経過していること
小学校
小学校も、幼稚園と同様に多くの場合、症状が治まっていることが登校の目安となります。
熱・咳・痰が子どもの肺炎の3大症状
子どもの肺炎の症状は、一般的に熱・咳・痰です。しかし、熱や咳がないケースも見られます。また、赤ちゃんの肺炎は重症化しやすいため、早めに病院を受診してください。
肺炎はとてもつらい病気です。肺炎を予防するためにも、日頃から手洗い、うがいなどでしっかり予防しましょう。
記事監修
塚田 佳子
けいこ豊洲こどもクリニック院長。小児科専門医、子どもの心相談医であり、年子二児の母親でもある。
略歴│獨協医科大学医学部卒業 獨協医科大学附属病院勤務 那須赤十字病院勤務(小児神経外来) 獨協医科大学医学部 小児科学教室 非常勤助教(小児神経)
資格・所属学会│小児科専門医 子どもの心相談医 身体障害者福祉法指定医 医学博士 日本小児科学会 日本小児科医会 日本アレルギー学会 日本小児神経学会 日本てんかん学会
文・構成/HugKum編集部