マイコプラズマ肺炎は、子どもがかかりやすい感染症です。風邪と症状が似ていて見分けがつきにくいですが、咳が長引いているようなら感染の可能性があります。
この記事では、マイコプラズマ肺炎の症状や検査・治療法、後遺症を解説。また、登園・登校の目安も紹介します。
目次
マイコプラズマ肺炎とは? 子どもや若者が多くかかるの?
マイコプラズマ肺炎は、細菌によって感染する呼吸器の病気です。以前はオリンピック開催の年と重なって4年に一度流行していたことから、オリンピックイヤーに流行する病気といわれていました。しかし最近では毎年流行するようになっています。
マイコプラズマ肺炎は一年中発症しますが、とくに冬から春にかけて増加します。患者は全体の80%が0歳〜14歳の子どもですが、若年層の大人も発症します。
詳しくみていきましょう。
マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?
ここでは、マイコプラズマ肺炎の病原体や潜伏期間について解説します。
病原体
マイコプラズマ肺炎の病原体は「肺炎マイコプラズマ」という細菌です。肺炎マイコプラズマは熱に弱く、台所用洗剤などに含まれる界面活性剤でも不活性化します。
潜伏期間
肺炎マイコプラズマが体内に侵入し、マイコプラズマ肺炎の症状を発症するまでは、一般的に2~3週間程度かかります。胸の音を聴診器で聞いただけでは、マイコプラズマ肺炎かどうかを診断することは難しく、診断に時間がかることもあります。
マイコプラズマ肺炎はうつる?
マイコプラズマ肺炎は感染症ですので、うつる病気です。どのようにうつるのか、免疫は持続するのかについて説明します。
咳やくしゃみでうつる
マイコプラズマ肺炎にかかった人が咳やくしゃみをし、その際に飛び出した肺炎マイコプラズマをまわりの人が吸い込むことによって感染します。いわゆる飛沫感染です。
また、マイコプラズマ肺炎にかかった人が触ったもの(ドアノブや蛇口など)に触れることで、手に肺炎マイコプラズマが付着し、さらにその手で目や口などに触れることでも感染します(接触感染)。
免疫は長続きしない
マイコプラズマ肺炎は感染しても免疫ができにくく、またできても長続きしません。つまり、一度かかっても再び感染することがあります。
マイコプラズマ肺炎の症状は?
マイコプラズマ肺炎の初期症状は風邪と似ています。そのため、「風邪をひいたのかな?」と勘違いすることも少なくありません。どのような症状があるのか、確認しておきましょう。
発熱
初期症状のひとつが発熱です。熱は夕方から上がりはじめ、朝には下がっていることも多く、注意が必要です。熱があまり上がらないこともあります。
頭痛
初期症状には頭痛もあります。頭が痛く、気分がすぐれないような状態が3〜4日続くこともあります。
だるさ
全身の倦怠感もあります。最初は少しのだるさですが、日を追うごとにだるさが増していくこともあります。
しつこい咳
発熱や頭痛、だるさのあとに出る代表的な症状が咳です。咳は基本的に乾性咳嗽と呼ばれる咳を伴わない咳ですが、少し遅れて痰を伴うようになることもあります。また、咳は、明け方や夜に悪化することが有り、咳症状だけでは、気管支喘息との区別が難しいこともあります。
咳は熱が下がったあとも約3~4週間続き、放っておくと1カ月以上長引くこともあります。咳や発熱が継続する場合には、マイコプラズマによる肺炎を合併している可能性もあり、時に重症化することもあるため注意が必要になります。
熱なし、症状なしの場合も
マイコプラズマ肺炎は、発熱せず、他の症状もない、あるいは症状が弱い場合もあります。そのような場合は、感染していることに気づかず、周囲にうつしてしまうこともあります。
マイコプラズマ肺炎の検査は?どう診断するの?
マイコプラズマ肺炎は、症状や心音を聞くだけでは診断できないため、検査を行います。どのような検査を行うのか、見てみましょう。
レントゲン検査
しつこい咳などでマイコプラズマ肺炎が疑われる場合には、まず胸のレントゲンを撮影します。レントゲン所見は気管支に沿った粒状影(粒のような小さい陰影)やスリガラス陰影を示すことがあります。ただマイコプラズマ肺炎のレントゲン所見は多様で非特異的であり、レントゲンのみでの診断は困難です。
マイコプラズマ抗原検査
マイコプラズマ抗原検査は、喉の奥の粘膜を綿棒でぬぐって、調べる検査です。マイコプラズマ肺炎の検査は、以前は時間がかかっていましたが、この方法では短時間で検査できるようになりました。ただし、感度が低いというデメリットがあります。
検査で陽性と診断されなくても、症状や経過からマイコプラズマ肺炎が疑われる場合には、マイコプラズマ感染症の診断に準じた治療が行われることもあります。
血液検査
血液検査を行うこともありますが、一般の肺炎とことなり、マイコプラズマ肺炎の場合には、白血球がそれほど上昇しないことが多くあります。また血中のマイコプラズマ抗体を調べる方法もありますが、この場合、症状を認める急性期と、症状が改善した回復期の比率で判断する(ペア血清といいます)ため、診断には時間を要します。
マイコプラズマ肺炎の治療法
マイコプラズマ肺炎と診断されれば、治療を行います。治療法にはいくつかあります。
抗生物質の投与
マイコプラズマ肺炎には、多くの場合、抗生物質の投薬で治療を行います。基本的には、マクロライド系やニューキノロン系とよばれる抗生剤の内服で症状は改善に向いますが、重症の肺炎の場合には、入院して点滴で治療を行うこともあります。
重症の場合は入院治療も
マイコプラズマ肺炎は一般に予後良好ですが、下記のような合併症を伴った場合には重篤化することもあります。
マイコプラズマ肺炎の合併症は?
マイコプラズマ肺炎の合併症は、副鼻腔炎、中耳炎などの比較的よく認めるようなものから、ギラン・バレー症候群(全身の筋肉の脱力が生じる)、スティーブンス・ジョンソン症候群(高熱や倦怠感を伴う全身の皮膚炎)など、溶血性貧血などのまれなものまであります。
無菌性髄膜炎も合併症の1つであり、長引く咳、倦怠感に加え、頭痛、嘔吐などの症状がある場合には受診をし、症状を細かく医師に伝えましょう。
マイコプラズマ肺炎後の登園・登校はいつから?
マイコプラズマ肺炎やインフルエンザ、百日咳といった感染症は、学校保健安全法によって出席停止の措置が取られます。
マイコプラズマ肺炎は、第三種の感染症に分類され、出席停止期間は「症状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでの期間」とされています。これをふまえて、登園・登校はいつからよいのか、解説します。
主要な症状がなくなったら
マイコプラズマ肺炎にかかった後、主要な症状が改善していれば、登園・登校は可能です。
具体的には、解熱して2日程度、咳が日常生活に支障がない程度に回復していれば問題ないでしょう。
咳が残っているなら体育はしばらく見学
マイコプラズマ肺炎は発熱などの症状が改善しても、咳がしつこく続くことがあります。
咳が残っているようであれば、激しい運動は控えた方がよいでしょう。体育は見学するようにしてください。
長引く咳は放って置かず、病院へ
毎年冬に発症のピークを迎えるマイコプラズマ肺炎。新型コロナウイルスが世間を騒がせてからは、「咳が長く続いているけれど、元気だし」といってそのまま放置するケースはなくなっていると思いますが、先述のように、マイコプラズマの感染経路も「飛沫感染」ですから、他者へ感染させるリスクになります。
初期は通常の風邪やその他感染症と見分けがつきにくいこともありますが、病院で検査を行うことで早期の診断が可能になりますし、抗生剤の治療によって回復が早まります。早めの受診を心がけるようにしましょう。
記事監修
文・構成/HugKum編集部