野菜ソムリエママがお米と野菜でできたねんどを開発!【子どもの暮らしを紡ぐ人を訪ねて】前編

「ものづくり」ママたちを「しぜんの国保育園」の
齋藤美和園長が訪ねます

東京・町田にある「小さな村」をテーマにした、町田の認可保育園
「しぜんの国保育園smallvillage」。

こどもたちの「今日は何をしよう?」から生まれる保育を大切にしています。園長である齋藤美和さんが、子どもとの暮らしにつながる「ものづくり」をしているお母さんたちを訪ねる連載がはじまります。

第1回は「てててのて製作所」のヤサクトモコさんです。

「お米と野菜のねんど」を作っているのは、ふたりの男の子のママ

「こどものための米とやさいのねんど テテテ」を作っているヤサクトモコさんは、現在二人のお子さんを育てています。

初めて、「てててのて製作所」のねんどを手にした時に、その心地よい触感と優しい色味に思わず、匂いを嗅いで、思わず頬ずりをしてしまいました。「やさしく安心な素材を」というコンセプトにこだわったねんどは6色。ほうれんそう、ムラサキイモ、にんじん、かぼちゃ、大豆。すべて国産の野菜とお米からの天然色です。

どうしてこのねんどは生まれたんだろう?
この優しい風合いはどんな風に作られたのだろう?

ぜひお会いして、この心地よさの秘密を聞いて見たいと思ったのでした。

 

 

果樹園で育まれた「おいしい」に人が集まる暮らし

−ヤサクさんの作られるねんどは、触り心地や色味が本当に心地よくて。どんな方が作られているのかなあと思っていました。まずは、ヤサクさんの原点、子どもの頃の話を聞かせていただけますか?

「千葉のぶどう園で育ちました。3人兄弟の末っ子で、自然の中を走り回っていました。父が、ぶどうの他にも周りで野菜や他の果実も育てていたので、野菜を収穫したり、鶏やアヒルも飼っていたので一緒に遊んだり。おやつは、その時の旬の果物を兄弟や、近所の子どもたちと分けあって食べていました。」

ずいぶんと大らかな環境で育ったんですね。

「そうですね。肥料の馬糞の中に突っ込んだり(笑)、父が作ってくれたブランコで遊んだり。いつも周りに人がいました。父はサラリーマンを辞めて、ぶどう園をはじめたのですが、母は、その頃、病気で足が不自由になってしまって。父は、3兄弟を一人で育ててくれました。よく、母の病院に家族でお見舞いに行っていましたね。父は、みんなが楽しめるように実のなる木を育てていました。そんな風に、『食』が中心にあって、兄弟だけじゃなく、親戚やご近所さん、ぶどう園に来たお客さん、みんなで分け合っていました。」

CM制作会社で働いたのち、青果市場で働くことに

ヤサクさんの原風景というのは、私がいるしぜんの国でも大切にしたい風景です。季節のうつろいの中、おいしいものを大切に、大人も子どもも寄り集まって暮らしていく、という。

「両親が一からぶどう園を始めたということは大きなことでした。その姿を見ていたので、私も何かできることはないかな、人に喜んでもらえることは何だろうと考えるようになっていました。」

その後、ヤサクさんは、青春時代を経て、CM制作の仕事に着くんですよね? 子ども時代の、のどかな風景から想像がつかないです。

「ぶどう園で育った体力もあったので(笑)7年くらい働きました。その後、結婚して。ただ、朝、夫が寝ている間に出勤して、夜中に帰ってきて、また夫の寝顔を見るような生活だったので、よくないなあと思っていました。

−それで、「てててのて製作所」を始めたのですか?

「いえ、そこで、築地市場で働くことにしたんです」

え、あの?卸売の?

「そうです(笑)生活が、ガラッと変わり、朝7時に行って午後の2時、3時には帰れるようになりました。事務の仕事だったのですが、周りのおじさんたちも優しくて、両手に野菜、ネギを背負って帰る生活になりました。周りの皆さんが、ハーブなどをくれて、今まで知らなかった野菜やハーブの美味しさや魅力を教わりました。それをきっかけに菜園にも興味をもって。実家の畑でパクチーやバジルの種を植えてみました。みるみるうちに雑草のように生えてきて(笑)。生命力の強さに感心しました。そして、畑を通じて、改めて<食>と向き合えた気がしました。」

心にも体にも優しい食事を子どもたちに

−そこで、また「食」そして、「野菜」という原点に帰ってきたのですね。

「そうですね、それでその後、子どもを授かって。やっぱり自分が育ってきたように、食は子育ての中心にあると感じて、野菜ソムリエプロの資格を取ることにしたんです。食事って、子どもには選べないから、自分に責任があると感じたんですよね。それで改めて勉強をすることにしたんです。」

−思えば私も、子どもたちと暮らしていて、食べ物のことを1日中考えています。お給食何かな?おやつ何かな?それで、仕事が終わると、今日の夕飯何にしよう?なんて。

「確かにそうですよね! 今、上の息子が3歳で幼稚園に通っているのですが、バスから降りた途端に、「今日のおやつなあに?」と聞いてきます。その姿を見ると、やっぱり子どもには、なるべく心にも身体にも優しいものをあげたいなと思うんです。」

 

【取材を終えて】

自然の恵みをたっぷりと感じて大らかな子ども時代を過ごしたヤサクさん。

てててのて製作所の「米とやさいのねんど」を手にした時の、心地よさの秘密には、ヤサクさんの「食」に対する思いと、美味しいもので繋がる人の輪がたくさんつまっていたのでした。後編では、「こどものための米とやさいのねんどテテテ」の制作にまつわるお話をうかがいます。

ヤサクトモコ

1982年生まれ。江戸川区在中。 千葉県の果樹園に生まれる。CMプロダクション、飲食業、出版業などの様々な仕事を通じ、たくさんの人たちと出会うことの楽しさを学ぶ。 こどもを授かり、改めて<食>の大切さに気づき、野菜ソムリエプロに。 自分のこどもに使わせたいとおもう国産素材の<米と野菜を使用したねんど>を試作、約1年ほどかけて独自のレシピで商品へ。「てててのて製作所

 

齋藤美和(さいとうみわ)

しぜんの国保育園smallvillage園長。書籍や雑誌の編集、執筆の仕事を経て、2005年より「しぜんの国保育園」で働きはじめる。主に子育て支援を担当し、地域の親子のためのプログラムを企画運営する。2017年当園の副園長となる。また保育実践を重ねていくと共に『保育の友』『遊育』『edu』などで「こども」をテーマにした執筆やインタビューを行う。2015年には初の翻訳絵本『自然のとびら』(アノニマスタジオ)が第5回「街の本屋さんが選んだ絵本大賞」第2位、第7回ようちえん絵本大賞を受賞。山崎小学校スクールボード理事。町田市接続カリキュラム検討委員。齋藤美和 Instagram 「しぜんの国保育園

 

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