子どもとのスキンシップの効用を科学者に聞いた!キーワードは「オキシトシン」と「自己肯定感」

何事にもポジティブに取り組み、良好な人間関係を築くためにも大切な自己肯定感。実は、子どもの自己肯定感にはスキンシップが関係していた!?  スキンシップを科学的に研究する第一人者・山口創先生に聞きました。

親子の信頼の絆が深まり、自己肯定感につながる

 

自己肯定感を育てる鍵は、「愛着関係」にあります。「愛着関係」とは、子どもと身近な大人との、信頼の絆のこと。親子間に愛着関係が築かれていると、子どもは「自分には価値がある」と実感し、自分の存在を肯定することができるのです。

スキンシップをすると、脳内で「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。オキシトシンには愛着関係を強める効果があるため、スキンシップは自己肯定感を育てるうえで大切な役割を担っているのです。

子どもとのふれあいでママ・パパも充電できる

疲れたときに子どもをぎゅっと抱きしめると、心がふわっとほぐれるような気持ちになった経験はありませんか?  これも、オキシトシンによる作用です。オキシトシンは「ふれられるほう」だけでなく、「ふれるほう」にも効果があるのです。

ストレスを感じることが続く日々の中で、スキンシップは親にとってもストレスを軽減させる「癒やし」であり、エネルギーをチャージできる「充電」です。ぜひ、親子で楽しくスキンシップをしてみましょう。

愛情ホルモン「オキシトシン」にはこんな効果も!

オキシトシンは、愛着関係の形成以外にもさまざまな効果があります。別名「愛情ホルモン」「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンの効果を紹介します。

①ストレス耐性を高める

ストレスに負けない作用が大人になっても続く

オキシトシンはストレスを減らす効果があるだけでなく、不安や恐怖を和らげて安らぎを高める働きもあります。この相乗効果でストレスに強くなり、その作用は大人になっても続きます。

②コミュニケーション能力を高める

社会性や共感性が高まり、人と関わる力が育つ

オキシトシンには、人と積極的に関われるようになったり、人の気持ちがわかるようになる効果もあるので、社会性や共感性が高まります。これによりコミュニケーション能力が高まります。

③学習効果が高まる

集中力、記憶力が高まる

オキシトシンによって記憶力がよくなり、学習効果が高まります。また、心身をリラックスさせる効果もあるので、目の前のことに集中できるようになり、学習の促進にもつながります。

日常の中で簡単にできる!おすすめスキンシップ術

抱きしめたり頬ずりしたりするだけでなく、日々の子育ての中には、たくさんのスキンシップが隠れています。がんばらなくても日常の場面で簡単にできる、おすすめのスキンシップ術を紹介します。

1 手つなぎ・抱っこ・おんぶ

求められたタイミングで応えるとさらに効果アップ

外を歩くときに手をつなぐ場面は多いと思いますが、これも立派なスキンシップです。ただ機械的に手をつなぐのではなく、手と手を通して愛情が伝わるようイメージしながらつなぐといいでしょう。

子どもが求めてきたときに応えると、オキシトシンの分泌が促されるので効果アップ。抱っこやおんぶも、もちろんスキンシップです。短時間でも十分に効果があります。

2 入浴・着替え

肌のふれあいができる貴重な時間。声をかけながら楽しんで

入浴や着替えは、素肌同士のスキンシップができる貴重な機会です。お風呂で体を洗うときは、手で洗うといいでしょう。また、ただゴシゴシ洗うだけでなく、話しかけながら優しくふれることで、スキンシップのコミュニケーションになります。

毎日の着替えも、スキンシップのチャンスです。余裕があれば、意識して手足や体にちょっとふれてあげるといいですね。

3 添い寝

呼吸や睡眠のリズムが同調し、安眠にもつながる最高の習慣

欧米では親子別室で寝るのが一般的ですが、日本では添い寝文化が根付いています。添い寝をすると、寝ている間も無意識のうちにお互いふれあうことになるので、たっぷりスキンシップすることができます。

また、添い寝して子どもと大人の呼吸や睡眠のリズムが同調すると、安心感に包まれながら眠ることができます。添い寝は、最高の習慣といえるでしょう。

4 アイコンタクト

コロナ時代に大切な心のスキンシップ。見つめあいながら話そう

コロナ禍の中での生活は人とのふれあいが制限されてしまいますが、広い意味でいうと、子どもの気持ちに応えて愛情をもって接することはすべて「心のスキンシップ」に当たると考えています。

温かい目線で見つめて優しい声で話しかける、目線を合わせてニコッと微笑むなど、それだけでも十分、オキシトシンの分泌につながります。

遊びながら自己肯定感を育てる!ふれあい遊び

オキシトシンを分泌させるには、「楽しい」と感じながらふれあうことが大切です。それにぴったりなのが、親子でできる「ふれあい遊び」。親も子も思わず笑顔になってしまう楽しいふれあい遊びをご紹介します。

足の橋を渡ろう

大人は両足をまっすぐ伸ばして座ります。その上に子どもを立たせて、足首から太ももまでゆっくりと行ったり来たり、歩いて遊びます。倒れないよう、子どもの両脇を支えましょう。「パパ(ママ)のところまで、渡ってきて~!」「次はバックでーす」など声をかけると楽しいですね。

不安定な場所に立ち、足の裏でグラグラした感覚を覚えながら歩くことで、触覚が刺激されて平衡感覚も鍛えられます。

とことこロボット

大人の足の甲に子どもを立たせて手を握り、「いち、に、いち、に」と一緒に歩きます。「前に進め!」「後ろ!」「次は横!」など、子どもの指示どおり歩くのも楽しいでしょう。子どもの思いのままに親が動くことで、親子の信頼関係も深まります。

向かい合って立って歩いたり、速く歩いたりゆっくり歩いたり、大股で踏み出したりなど、変化をつけるのもいいですね。

ぎったんばったん!

子どもと背中合わせに座って腕を組みます。「ぎったん、ばったん」のかけ声に合わせて、背中を押したり引いたりを繰り返して遊びましょう。「ぎったん」「ばったん」と親子で交互に声を出してもいいですね。

「思いっ切り押してごらん!」「ママ(パパ)もいくよー!」と強弱をつけるのも楽しいでしょう。最後は背中に乗せたままゆらゆら左右に揺らすと大喜びです。

保育園でのスキンシップが子どもにもたらすもの

スキンシップで強まる愛着関係は親子間に限られたことではありません。祖父母や保育士など、愛情をもって接してくれる大人であれば誰であっても、スキンシップから愛着関係が深まることがわかっています。

また、親子間での愛着関係は情緒を安定させる効果がある一方で、保育士さんとの愛着関係は社会性を高める効果があります。保育士さんにたくさん抱っこされて愛のあるスキンシップができる保育園は、子どもの社会性を高めるうってつけの場所であるといえます。

記事監修

山口 創先生

桜美林大学教授。専攻は臨床心理学・身体心理学。オキシトシン研究の第一人者。著書に『幸せになる脳はだっこで育つ。』(廣済堂出版)、『子供の「脳」は肌にある』(光文社)など多数。

『ベビーブック』2021年4月号別冊 イラスト/ヒビユウ 文/洪 愛舜 構成/童夢

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