【プロに学ぶ子供の事故防止ルール】やけど、窒息は洗面所、台所、リビングなどで起こりうる

1~4歳の子どもが死亡する原因のトップは先天的な病気ですが、次いで多いのが今回取りあげる「不慮の事故」です。不慮の事故で毎年100人以上が亡くなっているのです

NPO法人Safe Kids Japan代表を務め、小児の傷害・事故予防を専門とする山中龍宏先生に、家の中で起こりやすい事故の実例を教えていただきました。

事故例はほんの一例です。安全対策を重ねて事故から子どもを守りましょう。

洗面所・トイレで起こった「誤飲・溺れ・転倒・やけど」

事故例

●ひとりでトイレに行き、アルカリ性のトイレ用洗剤を口に入れていた。洗剤はトイレの床に置いてあり、ふたは自分ではずしていた。(1歳)
●便器の流水を見て頭から落ちて溺れそうになった。(1歳)
●洗面所のコンタクトをケースごと口に入れていた。(1歳)
●ドラム式洗濯機の中に入り込み、閉じ込められて窒息。中からは開けられない構造になっていた。(7歳)
●歯ブラシをくわえたままママの背中に飛びついたが、泣きだした。見ると、ほおの内側に歯ブラシの先が刺さっていた。出血は少なかったが大きくはれた。(1歳)

洗剤の誤飲や、歯ブラシの事故も多発!

洗濯機や洗剤など大人のものが密集し、子どもの興味をひくゾーンです。ドラム式洗濯機の事故例は小学生ですが、幼児でも起こり得ます。きれいな色で子どもの目を引くゼリーのような洗剤の誤飲も発生しています。手の届かない所に置くのが鉄則ですが、製品の外観が子どもの興味をひくと危険性が増します。歯ブラシでのどを突いてケガをすると、軽く見えても細菌感染が起き、治療に時間がかかります。刺さらないように柄が柔らかい歯ブラシも市販されているので検討を。

 

台所で起こった「やけど・刃物・誤飲」

事故例

●入れたてのコーヒーをキッチンテーブルに置いたら、子どもの泣き声。リビングにいたはずの子どもが頭からコーヒーをかぶり、顔から上半身にやけど。(1歳)
●60cmの台に置いた炊飯器の蒸気吹き出し口に手を出し、右手の指や手のひらにやけど。(2歳)
●子どもが手にした後、キッチンタイマーの電池がないので、病院へ。いつもは冷蔵庫の高いところに磁石でつけていたのに電池を飲み込んでいた。(1歳)
●空のペットボトルに漂白剤を薄めた洗浄液を入れていたら、まちがえて飲んだ。(3歳)

勝手に立ち入れない ようにゲートをつける

主な重症事故はやけどです。調理台の高さから熱湯がこぼれた場合、大人なら腹部から下になりますが、子どもの場合はコップ一杯でも、頭や腕など広範囲に被害が及びます。炊飯器の蒸気によるやけどは継続して多発しています。手が届かないところに置き、買うときは蒸気が出ない製品を選びたいもの。調理中に包丁を落として足元の子どもがケガ、はねた油でやけどをした例もあります。小さいうちはゲートをつけて立ち入れないようにしましょう。

 

リビング・ダイニングで起こった「やけど・転倒・誤飲・感電」

事故例

●床に置いた電気ケトルを子どもが倒し、両手の手首から手のひらをやけど。水疱ができた。(1歳)
●バンという音と泣き声で見に行くと、体に線状のやけど。コンセントに針金を差しこんで感電していた。(2歳)
●薬は棚の上に置いていたが、子どもがバケツを踏み台にして、風邪薬を飲んでしまった。(2歳)

熱源はなるべく 台所に集める

医薬品は簡単に取れない所に片付け、調理の熱源はなるべく台所へ。電気ポットや電気ケトルを使うなら、ロック機能がつき、倒れても漏れにくい製品を選びましょう。フローリングの床では、ソックスをはくと滑りやすいのではだしで。カーペットを部分的に敷くとふちで転びやすいので、敷くなら敷き詰めるほうが安全です。

 

重くなりやすい 子どものやけど

やけどの重症度は広さと深さが関係します。子どもの皮膚は大人より薄いので、より深くなります。また、体が小さいので、10円玉程度の範囲でも手のひらの半分近くになります。4歳ごろまでは「アッチッチよ」と教えても自分で用心できないので、大人が環境を整えて。

 

子供が重いやけどに至る温度と時間

温度  時間
68℃ — 1秒
64℃– 2秒
60℃– 5秒
56℃– 15秒
52℃– 1分
51℃– 3分
48℃– 5分

 

■子供の窒息・気道異物を防ごう

事故例

●節分の豆を食べた後にしきりにせき込み、翌日呼吸がおかしい。かかりつけの医院から異物除去ができる病院へ運ばれた。(1歳)
●パンをたくさん口に入れた後、顔色が悪く白目をむいて震えていた。背中をたたいているうちに呼吸が回復した。(2歳)
●夕食のミニトマトや枝豆を食べながらイスから降りようとして、急に激しくせきこんで受診。その後もゼイゼイして声もおかしくなり、熱も出てきた。気道に異物が混入して気管支炎になっていた。(1歳)

のどにはまりやすい食べ物は用心を!

節分の豆まきは日本の伝統行事なのですが、毎年、子どもが豆をのどに詰まらせています。大豆やピーナツなど乾いた豆は気管支に詰まると窒息を起こし、かけらが気管支や肺にひっかかると時間がたってから誤嚥性肺炎を起こします。レントゲンでは確認できないので、診断にも手間取ります。なるべく5歳までは与えないほうが安全です。

ブドウやこんにゃくゼリー、ミニトマトのようにある程度の大きさで、すっぽりと口に入りやすく、芯が固いものも窒息を起こします。丸ごとではなくきちんと切って与えましょう。驚いたり泣いたりすると、のどにはまりこみやすいので、落ち着いてすわって食べるように教えましょう。

〈のどにつまりやすい食べ物〉

ぶどう、ミニトマト、 豆、白玉だんご、 こんにゃくゼリー

 

お話をうかがったのは

山中龍宏|NPO法人Safe Kids Japan代表
緑園こどもクリニック院長。NPO法人Safe Kids Japan代表。小児科医の立場から長年にわたり子どもの事故予防に尽力、安全な環境づくりを研究、提言している。

記事監修

Safe Kids Japan|

事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人。Safe Kids Worldwideや国立成育医療研究センター、産業技術総合研究所などと連携して、子どもの傷害予防に関する様々な活動を行う。


出典:『ベビーブック』2017年5月号

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