嘔吐の時は牛乳パックちりとり!発熱、下痢など子どもの冬の病気まとめ【国立国際医療研究センター監修】

インフルエンザをはじめ、さまざまな感染症が流行しやすくなるこれからの季節は、お子さんの体調管理に気をつけたいですね。予防とホームケアのポイントを、感染症対策の専門家である、堀 成美先生に伺いました。この冬を元気に過ごすために、今から予防を心がけましょう!

まず予防。かかってしまったら、無理させずに安静に

ウイルスや細菌による感染症にかかった場合、薬で病気そのものを治せるケースは一部に限られ、多くの場合は安静にしながら、体が自然に回復するのを待つことになります。そのため、日頃から下に挙げるようなことを心がけて、かかる前に予防することを第一に考え、かかった場合でも重症化させないようにしましょう。

子どもには病気になることで免疫を獲得していくという面もあります。今は体調を崩すことが多くても、成長するにつれて丈夫になっていくのです。病気になってしまったときは、「今は体に免疫をつけているんだね」と前向きにとらえて寄り添えるといいですね。

 

冬の健康管理3つのポイント

ポイント1 病気になる前にしっかり予防する

感染症対策では「予防」が重要です。人の多いところへの不要な外出はなるべく避け、外出する機会の多い大人が家の中にウイルスや細菌を持ち込むのを防ぐため、おうちの方もしっかり手洗いを。また、日頃から十分な栄養と睡眠をとり、生活リズムを整えて、親子ともに病気に対する抵抗力を高めておきましょう。

ポイント2 具合が悪そうなときは無理をさせず安静に

体調が悪いときは外出をせず、家でゆっくり休ませることが大切です。子どもが感染症にかかっていた場合、無理やり登園させたり、人の集まる場所に出かけたりすると、周囲の人にうつしてしまうおそれもあります。年末年始に帰省や旅行を計画している場合も、体調が悪いときは無理をさせずに予定の見直しを。

ポイント3 「いつもと違う」
と思うときは病院へ

「今日はいつもより機嫌が悪い」と思っていたら夜になって熱が出たというように、普段お世話をしているおうちの方が「いつもと違う」と感じるときは、子どもの体調不良のサインであることが多いもの。食欲がない、苦しそうで眠れないなど、いつもどおりの生活が送れないときは早めに受診しましょう。

 

予防とホームケアの基本をおさえよう

感染症にかかるリスクを減らすには、家族全員で予防を心がけることが大切です。また、かかってしまった場合に備えて、本人のつらさをやわらげ、家庭内での感染拡大を防ぐホームケアの方法も覚えておきましょう。

 

予防

1 手洗いの習慣をつける

手洗いは感染症対策の基本です。外出先から帰ったとき・トイレのあと・食事やおやつの前には、必ず手洗いを。外出時など、流水で洗うことができないときは、アルコール消毒をするのでもかまいません。ウェットティッシュを使うときは、手を濡らすだけでなく、ふき取るようにしましょう。

 

2 まずは大人から咳エチケットを

感染症には、咳やくしゃみの(飛び散るツバや鼻水など)により広まるものが多くあります。咳をする人と真正面から向き合うことは避け、人ごみに出かけるときはマスクを。咳をするときは人のいないほうや下を向く、マスクをするといった「咳エチケット」を大人が心がけ、子どもにうつさないことも大切です。

 

ホームケア

咳が出るとき

本人が楽になる姿勢をとらせて

横になると咳がひどくなるときは、縦向きに抱っこをしたり、頭と背中の下に枕や丸めたバスタオルなどを入れて上体を少し高くしたりして、本人が楽になる姿勢をとらせましょう。咳がひどくて食事が飲み込みにくいときは、のどごしのよいものを与えます。水分は本人が飲みたがるものを少量ずつこまめに飲ませましょう。

 

熱があるとき

こまめな水分補給を

水・お茶・ジュースなど、本人が飲みたがるものを少量ずつこまめに与えましょう。水分を全く受けつけない場合は、早めの受診を。食事は元気になれば食べられるようになるので、無理に食べさせる必要はありません。食事がとれない場合は、経口補水液を飲ませると水分のほかに塩分や糖分も補うことができます。

汗をかいたら着替える

汗をかいたら濡れタオルで体をふいて、着替えさせましょう。子どもが暑がっているときは、薄着にしてもかまいません。解熱剤を処方されたときは、どのような場合に、1日何回まで使用できるのか、医師によく確認しておきましょう。

おう吐・下痢のとき

吐く前の準備が大切

食欲がなくなるなど胃腸の具合が悪そうな様子が見られたら、子どもがいつ吐いても大丈夫なように準備をしておくことが大切です。牛乳パックにビニール袋をかぶせた「おう吐物入れ」を寝室や通院時に使う車などに用意しておくと、おう吐物をまき散らさずにすみ、おう吐物を見ることでおうちの方の気分が悪くなるのも防げます。おう吐物の処理に使うペーパータオルやビニール手袋も用意しておきましょう。下の図のようにして牛乳パックで処理用のちりとりを作ると役立ちます。

おう吐した場合は

ビニール手袋とマスクを着用し、おう吐物をきれいにふき取ります。

ふき取った雑巾などはビニール袋に密封して捨てます。消毒をする場合は、水ぶきのあと、市販の家庭用消毒剤(ムースタイプのものなど)で消毒を。家庭用消毒剤の購入にあたっては、薬局などで相談しましょう。

吐き気があるときの水分補給は少量から

吐いた直後に水分を飲ませても吐いてしまうので、吐き気が少しおさまってからスプーン1杯程度を飲ませ、吐かなければ少しずつ量を増やしていきましょう。食事は無理に食べさせず、シャーベット、プリン、アイスなど、食べやすいものから少量ずつ与えます。体内から失われる電解質を補うものとしては、経口補水液も市販されています。

牛乳パックちりとりの作り方

牛乳パックとビニール袋におう吐物を入れよう

小児科を受診するときに心がけることは?

かかりつけ医をもちましょう

病気になってからあちこちの病院で受診するのではなく、予防接種などの機会を活用して、普段から継続的に通う「かかりつけ医」をつくっておきましょう。いざというときも、わが子の病歴や体質などをよく把握している医師に診てもらうことができれば安心です。薬の飲ませ方について悩んだときは、薬局にいる薬剤師に相談するとよいでしょう。

 

症状経過をメモしておく

「いつから、どんな症状があるのか」「体温の変化」「おう吐や下痢の回数と時間」などをメモしておくと、問診のときに症状を説明しやすくなります。薬を使用した場合は、薬の名前と飲ませた時間も書いておき、お薬手帳も持参しましょう。家族や身近な人がかかった病気がある場合は、そのことも医師に伝えると診察するうえで参考になります。

 

「様子を見ましょう」と言われたときは

症状をやわらげる治療をしながら経過を見守っていく場合、医師からは「様子を見ましょう」と言われることがあります。こんなときは、「どのような症状や変化が見られたら(あるいは同じ症状が何日くらい続いたら)もう一度受診すべきか」、「急いで受診したほうがよいのはどのような場合か」を医師に確認し、適切なタイミングで再受診できるようにしておきましょう。

 

これからの時期によく見られる病気

インフルエンザ

高熱や関節痛など普通の風邪よりも重い症状が多く見られ、中耳炎、肺炎、脳炎・脳症などを起こすことも。症状の出方はさまざまで、高熱が出ない場合もあります。けいれんや意識障害が起こることもあるため、発症後2~3日は注意深く見守りましょう。

 

RSウイルス感染症

鼻水や軽い咳などの症状から始まりますが、咳がひどくなり、呼吸がゼーゼーと苦しくなることもあります。重症化すると入院が必要なことも。RSウイルスに効く特効薬はないため、症状をやわらげる治療が中心となります。

 

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルスやロタウイルスなどが原因で、おう吐に続いて水のような下痢が起こり、発熱を伴うこともあります。おう吐は1~2日、下痢は1週間ほど続くケースが多く、何度もくり返すときは脱水症状に注意が必要です。

 

溶連菌感染症

のどの痛み、発熱、発疹、舌がイチゴのように赤くなるといった症状が多く見られます。腎炎やリウマチ熱の合併を防ぐために、10日間ほど抗菌薬(抗生物質)を飲む必要があります。

※

秋から冬以外の時期にも、
これらの病気にかかることはあります。

 

こんなときはすぐに病院へ

⃝意識がない、おかしな言動が見られる

⃝けいれんが止まらない、1日に何度も繰り返す

⃝顔色が悪くてぐったりしている

⃝呼吸が苦しそう、ゼーゼー・ヒューヒューといった音がする

⃝何度も吐き続ける

⃝水分を全く受けつけない、おしっこが出ない

※持病やアレルギーがある場合、熱性けいれんを起こしたことがある場合は、どのようなときに受診すべきか、事前にかかりつけ医に相談を。

受診すべきか迷ったときは

こどもの救急ホームページhttp://kodomo-qq.jp/

気になる症状を選択すると、「救急車で病院に行く」「自家用車・タクシーで病院に行く」「おうちで様子をみましょう」といった対処法が表示されます。

・小児救急電話相談#8000

夜間や休日に、子どもの症状にどう対処すればよいかを小児科医や看護師に電話で相談できます(受け付け時間は都道府県ごとに異なるため、事前に厚生労働省のホームページなどで確認を)。

 

監修:堀 成美先生

国立国際医療研究センター感染症対策専門職。看護師としての勤務を経て、感染症対策の教育活動に取り組む。1児を育てたママでもある。

 

 

 

イラスト/きつまき 取材・文/安永美穂 構成/童夢 出典/『ベビーブック』 2018年12月号

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