PM2.5とは?子供に及ぼす影響を医師が解説
中国の大気汚染の映像とともにPM2.5が報じられて以来、多くの人がPM2.5に不安を持っているようです。何が体に悪いのか、小さな子供がいる家庭ではどんな対策をとればいいのか、小児科医の久米川先生にお話を伺いました。
PM2.5とは?
PM2.5というのは、空気中に漂う粒子状の物質を、大きさの違いで振り分けた時、2.5μm(髪の毛の太さの1/30程度)以下の「粒子状物質」をいいます。それが名前の由来です。大きさだけでの区分ですから、含まれる物質は多種多様で、地域や季節によっても異なります。
発生する原因
発生源は、二つに分けられます。
①物が燃やされたりすることによって発生する(一次生成)
例えば●ボイラーやから出る(すす)●車、船、航空機の排気●調理、喫煙、ストーブ、野焼きの煙●、、火山の、などに含まれる。
②主に①で発生するさまざまなガス状の物質が、太陽光やオゾンの影響で化学反応を起こして発生する(二次生成)
つまり、PM2.5は人間の生活や自然現象と切っても切れないものなのです。大気中にはいつでも漂っており、太古から存在していました。問題は高濃度になった場合です。そのため国は、環境基準(健康を守るうえで維持されることが望ましい濃度)を定め(表参照)、全国の測定局で常時測定・監視しています。
PM2.5に関する環境基準
健康への影響は?
PM2.5は、とても小さな粒子なので、肺の奥深く入り込み、血液に入る恐れもあります。また有害物質も含まれるため、や気管支炎などの呼吸器系や、などの循環器系疾患を引き起こしたり、悪化させるリスクが高まることが懸念されています。しかし、まだ調査や研究が進行中の日本では、健康被害のまとまったデータはないようです。
国は今のところ、「健康への影響が出る可能性が高まると予想される濃度」は、環境基準の2倍である「1日の平均値が1立方メートルあたり70g」と設定しています(必要に応じて見直される)。さらに、この数値をもとに「注意をする判断基準値」を示し(表参照)、その数値を超える時は、各自治体が「注意喚起」を行うことがされています。
国内では環境汚染対策が進み、年間の平均濃度は減少傾向にあります。中国大陸からPM2.5が風で飛来しても、映像で見るような、中国での濃度がそのままやってくるわけではありません。過剰に不安にならず、できれば分の生活圏の濃度を知り、国の指針を目安にして対応するのが大切だと思います。
大気汚染のPM2.5より問題なのは、身近なたばこのです。副流煙には高濃度のPM2.5が含まれ、その中には発がん性物質も。子どもを受動喫煙から守る対策には、親ばかりでなく、社会全体で取り組んでいく必要があります。
子供への影響や対策は?
対策として、マスクや空気清浄機の使用もあげられますが、性能によって効果に差があります。使うなら、そのことをしっかり見極めましょう。農作物への付着を心配する人もいますが、環境省によれば、これまで食べ物による健康影響の報告はありません。PM2.5に関しては、明らかになっていないことも多いので、今後の調査や研究に基づく、新たな情報に注意してください。
*1 1µmは1000分の1mm。つまりPM2.5は400分の1mm。
*2 1µgは1000分の1mg。
*3 地域の濃度の速報値は、環境省「そらまめ君」(http://soramame.taiki.go.jp/)や各自治体のサイトで確認できる。
粂川 好男先生
杉並堀ノ内クリニック院長
立教大卒業後、出版社に勤務した後、信州大医学部入学。国立国際医療センター、愛和病院で小児科全般の臨床経験を積む。安心と笑顔を持ち帰れるクリニックを目指す。小児科専門医。
イラスト/松木祐子 構成/河又えり子 出典/『めばえ』