お手伝いは無理にやらせる必要はありません
自分の子どもより年下の子が「お手伝いをしている」と聞くと、「うちもお手伝いさせなければ!」と焦ってしまうかもしれません。ただ、大前提として覚えておいていただきたいのは、おうちの仕事というのは本来大人がやるものであって、2~4歳が必ずしもやる必要はないということです。本格的にお手伝いをするのは、小学生からでも、まったく遅くはありません。
ですが、おうちで大人がやっていることに興味を持ち、自分から「やりたい!」と意欲を見せるのは、この世代ではよくあること。そんなときに本人のやりたい気持ちを受け止め、できることをできる範囲で少しずつ体験してもらうのが「お手伝い」の第一歩となるでしょう。
例えば、食事の前に「テーブルを拭きたい」と言うのなら、手が届く一部分だけを拭いてもらいます。残りのほとんどを大人が拭くとしてもそれは立派な「お手伝い」です。また、一度興味を示したからといって、毎日義務として続ける必要はなく、本人の気分がのって、大人も余裕があるときにだけやるので構いません。
お手伝いは家庭での「体験学習」
幼児期の「お手伝い」は、何より本人の「やりたい」という意欲を受け止めることがポイントです。たとえ不完全だとしても、失敗したとしても、ダメ出しはせず、「助かったよ。ありがとう」という声かけで終わりましょう。「ありがとう」で締めくくることで、子どもの「またやりたい!」という意欲につながります。
また、お手伝いが上手にできたかどうかの結果よりも、親子で時間や活動を共有すること自体が、その後に活かされる体験になります。例えば、一緒に野菜の調理をしながら「とうもろこしのヒゲって何のためにあるんだろうね?」「そら豆の房の中ってふわふわだね!」と投げかけることが、科学への興味の入口になることも。また、家事を通じて順序や手順を踏むことの大切さを知ることも、あらゆる教科で活きる体験学習となります。
ただ、実際にお手伝いをしてもらうときはそのような意識はせず、「遊び」の延長のような感覚で、親子一緒に楽しむことを心がけましょう。ハンカチをたたんでもらうときも「折り紙みたいに折るんだよ」と、子どもにとって親しみのある遊びとつなげてあげると、本人もお手伝いに興味を持ちやすく、楽しみながらできるでしょう。
楽しいお手伝いのためのヒント集
体も心も著しく成長するこの時期。年齢によって楽しめるお手伝いの内容は少しずつ変わっていくものです。親子でうれしい時間を過ごすための心がけとあわせて、オススメのお手伝いをご紹介します。
2歳~
オススメのお手伝い
■食事の前にテーブルを拭く
■ゆでた野菜(枝豆など)に塩をまぶす
■遊んだ後でおもちゃを片付ける
おうちの方の心がけ
様々なことに興味を持つ時期です。特に身近な大人が楽しそうにやっていること、食に関することは興味を持ちやすいのではないでしょうか。遊んだおもちゃをカゴの中に入れることも、自分のものを管理することにつながっていきます。
ただ、子どもにとってはおうちの仕事も遊びも同じ感覚です。大人が楽しそうに積み木を重ねているとやりたくなるのと同じように、家事も大人が楽しそうにやっていれば、「やりたい!」と思うでしょう。おうちの方も遊びと同じ感覚で、子どもの気が向いたらやってもらう程度で無理強いしないようにしましょう。
3歳~
オススメのお手伝い
■窓を拭く
■ 消毒シート(ノンアルコールのもの)で床やドアを拭く
■脱いだものを洗濯カゴの中に入れる
おうちの方の心がけ
手先が器用になり、拭き掃除もできるように。また、少しずつ「お手伝い」ではなく「仕事」として、自分のものを自分で管理することを伝えていきたい時期です。自分が脱いだもの、使ったものを洗濯機に入れるほか、園バッグから持ち物を出し入れするのも「これは○○ちゃんのお仕事だよ」と伝えます。
できたときには「ありがとう」「助かったよ」とお手伝いのときと同じ声かけをすることで、継続してやる気が出ます。どうしてもできない日は、「今日は私がやるね」と伝えてからおうちの方が代わりにやるのでもOKです。
4歳~
オススメのお手伝い
■ぞうきんを絞って拭く
■豆を房から出す
■野菜を洗う
おうちの方の心がけ
指先が器用になり、空間認知力も発達。ぞうきんの絞り方も「半分に折って、もう半分に折ったら、上を右手で、下を左手でそれぞれ指の先が見えるように持つよ。両手を反対にぎゅっと動かすと水が絞れるよ」と、手順を丁寧に教えると理解できる時期です。
食材の準備も楽しんでできますが、本人がやりたがるなら、包丁やピーラーを使わせても。その際は「左手は猫の手にして野菜の上に置くよ」など、使い方を丁寧に教え、使うのは大人の余裕があるときだけに。大人に余裕がないときは「○○ちゃんは、ままごとセットでサラダを作ってね」と遊びに誘導を。
教えて齋藤先生! 2〜4歳のお手伝い「こんなときはどう対応する?」
Q1.子どもがお手伝いをしたがるのですが、こちらに時間や余裕がないときは断ってもいいものでしょうか? せっかくのやる気を否定するようで悩みます。上手な断り方はありますか?
A.齋藤先生
まずは「そうなんだ。やりたいんだね」と、子どものやりたい気持ちを受け止めてあげてください。その上で「でも今はとっても急いでいるから、今度はお手伝いしてもらえるようにするね」と、正直に事情を話してみてはいかがでしょうか。
または「今日はテーブル拭くのをお願いしてもいいかな?」と、簡単にできる別のお手伝いに誘導してみてもいいでしょう。その場合も、最後は「ありがとう! 助かったよ!」の言葉で終わるのを忘れずに。
Q2.子どもにお手伝いをしてもらったときに、ごほうびは必要でしょうか? 毎回あげてしまうと、そのうち「ごほうび目当て」でお手伝いをする子になってしまいそうで心配です、
A.齋藤先生
お手伝いは、家庭のお仕事を家族でシェアするものなので、ごほうびは必要ないと思います。子どもにとってはお菓子やおもちゃをもらうよりも「助かったよ!」「ありがとう!」と家族から認めてもらったり、ほめてもらったりするほうが、ずっとうれしいはずです。
子ども自身も「家族の役に立ててうれしい!」という満足感や、「やりたいと思っていたことができた!」という達成感を味わうことが何よりのごほうびになっています。
Q3.友達のお手伝いはしたがるのに、自分のことは甘えてやろうとしないことがあります。人のことよりも、まずは自分のことができるようになるのを優先するべきでしょうか?
A.齋藤先生
2~3歳ごろは、どんどんできることが増えてくると同時に、お友達との関わりを持ちたくなる時期でもあります。自分の服のボタンは留められないのに、お友達のボタンは「留めてみたい」のと「やってあげたい」気持ちが高まって行動を起こすことが多々あります。
少しちぐはぐではありますが、それもこの時期特有の姿だと受け止めてあげてください。大人が手順や扱い方のコツなどを噛み砕いて伝えていけば、自分のことも喜んでやれるようになる日が来るものです。
教えてくれたのは
齋藤政子先生
臨床発達心理士・保育士、また幼稚園教諭・小学校教諭の資格を持つことから、乳幼児期から児童期までを幅広く視野に入れながら、保育・子育ての在り方についての研究を重ねている。
『めばえ』2021年9月号 イラスト/三角亜紀子 構成/童夢
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。