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「科学漫画サバイバル」シリーズで一番人気の「深海のサバイバル」が映画化!
子どもたちに大人気の「科学漫画サバイバル」シリーズ映画化第2弾『深海のサバイバル!』が、8月13日(金)より全国公開されました。本作でゲスト声優を務めたのが、“東大卒クイズ王”の異名を持ち、クイズプレーヤーとして活躍する伊沢拓司さんです。今回伊沢さんをお迎えし、本作の監修を務めたJAMSTEC(海洋研究開発機構)の高井研さんとのリモート対談を行いました。
深海調査のため、潜水艇アンモナイト号に乗り込んだサバイバルの達人ジオ、ピピとコン博士。ところが、水深数千メートルの深海を目指す途中で、アンモナイト号が故障してしまいます。さらに「アトラス」というスーツを着用して海中に出たジオとも連絡が取れなくなり、大ピンチ!果たして、ジオたちの運命とは?
アニメ映画の声優は初挑戦となる伊沢さんは、ジオたちが乗ったアンモナイト号をモニタリングする海洋調査船のオペレーター役を演じました。
最強!“深海アベンジャーズ”の面白さ!
――『深海のサバイバル!』に声優や監修として参加されることが決定した時の感想から聞かせてください。
伊沢「僕は2年間ぐらい『サバイバル』シリーズに関わらせていただいていたので、今回、声優としての出演が決まった時はありがたくて光栄な思いでした。でも、劇場版の声優をやったこともなければ、本職でもなかったので、プレッシャーはもちろんありましたが、とにかく自分のできることをやろうと思いました」
高井「実は僕は『サバイバル』シリーズのことは知らなかったのですが、仲間の研究者から子どもたちに人気の本だと聞きました。特に『深海』シリーズが1番売れているとお聞きしましたが、最初は知らなかったからこそ、リアリティばかりを追求しようとしすぎたことが反省点です」
――リアリティにどこまでこだわるかというさじ加減が難しそうですね。
高井「せっかくストーリーで冒険が描かれるのに、実際の深海調査のリアルばかりを持ち込みすぎても意味がない。それを上手く調整するのがなかなか大変でした」
――特に高井さんがこだわって提案されたシーンなどは?
高井「塩水湖やガスハイドレート、ダイオウイカ、マッコウクジラなどのシーンが登場しますが、実際には深さや海底の環境がバラバラの場所にあるので、そこをケーブルが切れて移動することで、位置関係のリアリティを出すのにかなり力を入れました」
伊沢「僕も塩水湖についてはよく知らなかったので、興味深く観ました」
高井「塩水湖は深海において、最後の秘境と呼ばれています。例えば、アマゾンの秘境は今やGoogleで見えちゃいますが、塩水湖は世界で誰も潜ったことがないんです。でも、『MEG ザ・モンスター』をはじめ、映画やアニメなどではどんどん取り上げられているので、僕らの研究の後押しになるかもと期待してます」
伊沢「今回は、そこまで長くない物語の中にも、トピックが盛りだくさんでした。例えば、ダイオウイカとマッコウクジラの組み合わせは、7~8年前に話題になりましたし、見ていてワクワクします。また、それらのシーンにも『サバイバル』シリーズならではのギャグ要素やジオたちがわちゃわちゃする感じが含まれていたので、子どもたちにとっても、より印象に残りやすいんじゃないかと思いました」
高井「実際にこの映画は、世界でトップの研究者たちが50年ぐらいかけて経験したことが40分ぐらいに詰まった内容になっているので、かなりお買い得だと思います(笑)。映画とはいえ、深海の世界を擬似体験できるわけですから。“深海オールスターズ”というか『アベンジャーズ』みたいな感じです」
伊沢「なるほど!確かに『深海アベンジャーズ』ですね」
もしも深海に行けたら、どんなことをしたいか?
――伊沢さんは、もしも深海に行けるとしたら、どんなことをしてみたいですか?
伊沢「できれば深海の温度を味わってみたいです。実際には外に出られないからこそ、海水の冷たさを感じてみたいし、砂をつかんでみたい。また、景色しか見られないとしたら、漂っているエビなど小さい生物を見てみたいです。今回はカニも登場しますが、こいつらは深海でも生きられるんだ!強いな!と思いました」
高井「だいたいどこの深海も、水温1度~4度なので、冷たいですよ。今回のアンモナイト号も有人潜水艇ですが、もしもJAMSTECの『しんかい6500』に乗っていたら、実際に海水に触れられなくても深海の寒さを感じることができると思います。
深海の海底は広くて何もないように見えるかもしれないけど、川で泳いだことがある人やスキューバダイビングをされる方なら、過去の経験と深海で見る風景が同化するので、海底で起きている現象が見えて、生き物の気配を感じることできるのではないかと。つまり勝手にイメージをすり合わせて、バーチャルで感じられるんです」
伊沢「すごいですね。触ってないものに関して、周辺情報から質感までを合成できるなんて、めちゃくちゃ面白いです!」
高井「なので、ぜひ伊沢さん、潜ってください」
伊沢「行ってみたいですが、かなり修行が必要ですね。僕は素潜りならやれますが、深海に潜るのはかなりハードルが高そうです。もちろんオファーをいただけるなら、万難を排してやらせていただきたいです(笑)」
――ちなみに、劇中で深海を歩ける「アトラス」というスーツが登場しますが、ああいうものは実際にあるのでしょうか?
高井「さすがに、アトラスのようなスーツはありませんね(笑)。まさに夢のような道具かと」
――もしも、伊沢さんがアトラスを着用して深海に行けるとしたら、どんなことをやってみたいですか?
伊沢「まずは砂を踏みしめたいです。月面にフットプリントを残した人類はいるけど、かつて数千メートルもの深海の砂の上でそれをやった人類はいないので。僕は仕事柄、南の島に行くことが多いのですが、そこに広がるのは岩場やサンゴ礁なんです。でも、深海は砂だらけという感じがするので、そこを踏みしめてみたいです」
子どもの知的好奇心を伸ばすにはどうしたらいいか?
――子どもの頃から深海の世界に憧れていて、その夢を叶えたコン博士のように、おふたりも好奇心の赴くまま、チャレンジされてきたからこそ今があると思います。最後に、子育て中のママたちに、どうすれば子どもたちの知的好奇心を伸ばせるのか、アドバイスをいただけたらと。
伊沢「僕はけっこう好き嫌いが多いタイプで、何にでも好奇心を抱いていたわけではないです。算数は大嫌いで、九九も苦手でした。でも、自分が興味のあることをやっていく中で自尊心が育っていき、他人に負けられないと思うようになって、苦手な分野にも挑むようになりました。その結果、やってみたら『これって意外と面白いじゃん』と感じるようになっていきました。また、大人になってから始めたことでも、面白いと感じたことがたくさんあります。
そういう意味で、自分の興味に自信を持つための自尊心は大切だと思います。また、自分が好きなことや興味を持ったことに突き進んだ結果として、何かが報われることや、自分の意見が尊重されることが、結果的に知的好奇心、すなわち興味のあることを突き詰めることに繋がるような気がします。それらは自分の体験でしかないんですが」
――例えばお母さんの立場だったら「これを絶対にやりなさい」とつい強要してしまいがちなんですが。
伊沢「僕もよく勉強しなさいと言われましたが、それは別に悪いことじゃないんです。どうしても学校との契約関係の中で生じることだから。お母さんも学校から電話が来て怒られるのは嫌でしょうし。でも、そのなかで、大事にしなきゃいけないことは、気を落とさないようなタイミングで声をかけることかなと。自分を卑下してしまうと、結果的に何もできなくなってしまうから。落ち込まない、自暴自棄にならないような、遊び終わったタイミングとかでの声がけをしてもらっていました。結果論ですけど興味の芽が摘まれたような経験はなかったです」
――高井さんはいかがですか?
高井「おばあちゃんから続く我が家の教えは、石原(慎太郎と裕次郎)兄弟になれというものでした。すなわち何者かになれというもので、要するにミーハーでした(苦笑)。とにかく目立てと、お前はちょっと顔が可愛いから、アイドルでもいいんじゃない?とも言われました(笑)。また、僕の場合、年上の兄や姉にばかり親が期待をかけていたから、逆に反骨心が湧いて、見返してやるという気になった気がします。
大事なのは、僕の母親は、毎日どんなにしんどくても、いつも仕事から帰ってきた後に、夜の8時から10時ごろまで机に向かって小説を書いていたんです。そんな姿を小さい頃からずっと見てきたことで、今の僕が作られたんじゃないかとも思っています。すなわち、学びというものは大人になってもずっと大事で、子どもだけが勉強するわけではないし、親たち自身が努力して勉強する姿が子供たちに伝わっていくと思います。実際に、何歳になっても学ぶことは楽しいことだと思います」
伊沢「そういう意味では、クイズなどは手近な学びなのかなと。こんなことを覚えて何になるんだ?と言われることもありますが、学びの姿勢を身につければ、それがどこかで結果に結びつくのではないかと。勝った、負けたの話ですが、そこも面白いところだと思います」
監督:入好さとる 原作:「科学漫画サバイバル」シリーズ(朝日新聞出版)脚本:村山功
監修:JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)
声の出演:松田颯水、潘めぐみ、石田彰、山口勝平、岩崎ひろし、東地宏樹/伊沢拓司…ほか
公式HP:toei-mangamatsuri.jp
取材・文/山崎伸子