幼児期にバランスのよい運動をすることで大切な力が育つ
幼児期にからだを動かすことはとても大切です。2020年の緊急事態宣言の後、骨折する幼児が増えたという調査結果があります。これは、自粛期間中にからだを動かす機会が減り、身体能力だけでなく危機を察知する力も育たなかったことを表しています。
からだも心も発達する幼児期には、「移動」「バランス」「操作」「非移動」という4つの基本的な運動スキルをバランスよく鍛えることで、危険察知能力や空間認知力、適応力など、様々な力が育っていきます。
親子ふれあい体操はからだを育てながら絆を深める
そこでご紹介するのが、成長のために経験してもらいたい動きに楽しく取り組めるよう考案した「親子ふれあい体操」です。
子どもは、大好きな大人といっしょにからだを動かすことで、心から「楽しい!」と感じます。からだだけでなく、心も動くのです。この体験を積み重ねることで運動に取り組む意欲やからだを動かす爽快感を感じる心が育っていきます。親子の絆が深まるとともに、健康なからだづくりの土台となる運動機能が育まれるのです。
4 つの運動スキル
以下にご紹介する4つの運動スキルは、運動能力を伸ばすうえで大事な以下の3点をカバーします。
協応性… からだの複数の部位がお互いにかみ合って働くこと
巧緻性… 動きの器用さ、巧みさのこと
身体認識力… 自分のからだとその動きを理解、認識する力
移動する運動(移動系運動スキル)
はう、歩く、走る、跳ぶ等、からだを移動させる運動スキル。全身の筋力を高めて瞬発力やスピード感覚を育み、自分のからだと、ものとの距離をつかむ空間認知力も育てます。
操作する運動(操作系運動スキル)
投げる、蹴る等、道具や用具に働きかけたり動かしたりする運動スキル。目と手と足を同時に動かす協応性や正確に動かすための巧緻性が培われます。
バランスをとる運動(平衡系運動スキル)
片足で立つ、高い所に立つ等、姿勢を維持する運動スキル。バランスをとることで平衡感覚が養われ、身体認識力の向上につながっていきます。
その場でする運動(非移動系運動スキル)
ぶら下がる、押す、引く、支える等、からだを移動させずに行う運動スキル。筋肉に負荷がかかる状態をキープすることで筋力や持久力が高まり、がんばる心も育ちます。
どうすればいい? コロナ禍の中の公園あそび
新型コロナウイルスの影響で外あそびを心配される方も多いかもしれません。確かに公園の固定遊具は不特定多数の人が触れるので、遊んだあとの手洗いや消毒など、感染対策が必要です。
しかし、互いの距離を取り、間隔をあければ問題なく遊べるので、空いている時間帯や混雑していない公園を選ぶといいでしょう。公園で密にならずに楽しめる、おすすめのあそびを紹介します。
おすすめ公園あそび
①なわとびジャンプ
自己スペースを確保できるなわとびは、コロナ時代にぴったりの外あそびです。片方の端を遊具などの柱の下のほうに結び、もう片方をおうちの方が持って、その上を子どもが跳び越えて遊びましょう。少しずつ高くしたり、ヘビのように動かしたり、波を作ったりと、いろんな跳び越え方に挑戦できますね。
②影ふみ
直接からだに触れるのではなく、影をふむことで「タッチ」する影ふみは、まさにコロナ時代に最適な「接触しないおにごっこ」です。普通のおにごっこだけでなく、「色おに」や「高おに」等を影ふみで行ってみるのもいいですね。影の長さや濃さの違いを楽しむのも、外あそびならではのおもしろさがあります。
おうちでできる親子ふれあい体操
あそびの中に、4つの運動スキルをバランスよく入れるのがポイントです。
からだを動かすあそびは、人によって得意や苦手などの偏りが出やすいものですが、親子ふれあい体操なら、普段あまり体験しないスキルにも楽しく取り組むことができるでしょう。
移動する運動
手つなぎぴょんぴょん
【おすすめの時期】1歳4か月〜
親子で向かい合って両手をつなぎ、子どもをピョンピョンとジャンプさせます。なるべく両足でジャンプできるようにサポートしましょう。初めはゆっくりでも構いません。高く跳べるよう、上に持ち上げると、子どもはワクワクしながら夢中で跳ぶことでしょう。慣れてきたら、左右に跳ぶ横跳びにも挑戦してみましょう。
トンネル&ジャンプ
【おすすめの時期】2歳0か月~
親は両足を伸ばして床に座り、足の上を子どもに跳び越えさせます。子どもが跳んだら、親は腰を持ち上げてトンネルを作って子どもにくぐらせます。「跳び越える→くぐる」を何度も繰り返しましょう。片足ジャンプでOK ですが、両足ジャンプで跳び越えられるか挑戦してもいいですね。
操作する運動
キャッチごっこ
【おすすめの時期】1歳6か月〜
向かい合って床に座り、ボールを投げ合ってキャッチして遊びます。初めは「転がして受け取る」でもいいでしょう。必ずしもボールである必要はなく、新聞紙を丸めたものやタオルをぐるぐる巻いたもの等、おうちにあるもので楽しく遊んでみましょう。
風船ぽんぽん
【おすすめの時期】2歳0か月~
親子で向かい合って風船をついて遊びます。力の加減を学んだり、親がわざと風船を左右や前後に飛ばすと、「目測してその下に追いつく」という動きから、子どもの空間認知力の育成につながります。
ゴム風船だけでなく、紙風船でも楽しいですよ。
バランスをとる運動
ビュンビュン飛行機
【おすすめの時期】1歳6か月〜
親は子どもの胸と太ももを手で支え、子どもを持ち上げます。
親が上体をひねりながら、子どもが前後に動くようにすると、親のウエストのエクササイズになります。その姿勢のまま、子どもを上下に動かすのもおすすめ。重力を感じたり、日常あまり体験しない垂直方向の動きや視界の変化を楽しめたりします。
おひざの上でこんにちは
【おすすめの時期】3歳0か月~
子どもと向き合って立ち、両手をつなぎます。そのまま階段をのぼる要領で親のひざの上に足を乗せ、太ももの上に立たせます。手をしっかりと握り、落ちないようにバランスを取り合いましょう。どれくらい長く立っていられるかをいっしょに数えたり、変顔をしながらにらめっこしたりして遊んでもいいですね。
その場でする運動
うでにぶらぶら
【おすすめの時期】2歳0か月〜
大人の手や腕につかまらせて、子どもが自力でぶら下がります。最初は足が少し上がる程度の高さから始めましょう。だんだん高さを上げていったり、何秒間ぶら下がれるかを数えてみたりするのもいいですね。親にとっても筋肉への負荷の高いトレーニングになるでしょう。
丸太たおし
【おすすめの時期】2歳0か月~
「力試しをしよう!」と声をかけ、親は仰向けに寝て両足を垂直に立て、両手を横に開いて足が倒れないよう支えます。子どもは親の足を倒そうと、押したり引いたりします。足を倒せたら子どもの勝ち。親がおおげさに踏ん張る表情を作ると、盛り上がりますよ!
教えてくれたのは
早稲田大学人間科学学術院教授、医学博士。国際幼児体育学会会長。
大学で教鞭をとるかたわら、「親子ふれあい体操」を全国に広げる活動を積極的に行っている。著書に『子
どもにもママにも優しい ふれあい体操』(かんき出版)、『保育の運動あそび450』(新星出版社)など多数。
『ベビーブック』2021年10月号 イラスト/ニシハマカオリ 文/洪 愛舜 構成/童夢
小学館の知育雑誌『ベビーブック』は、毎月1日発売。遊び・しつけ・知育が一冊にぎっしりとつまっています! アンパンマン、きかんしゃトーマス、いないいないばあっ!など人気キャラクターがお子さんの笑顔を引き出します。はってはがせるシール遊びや、しかけ遊びでお子さんも夢中になることまちがいなしです。