幼児向けの番組を親子で見る、料理中にビデオを見せるなど、ほとんどの家庭でテレビはおなじみです。でも、見せないほうがいいの?となんとなく疑問を持つ人も多数。スマホも気になりますね。発達心理学が専門で、子供とメディアの関わりに詳しい菅原ますみ先生にお聞きしました。
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「テレビに子守させる」という言葉、実は当たっていない?
「子守」と言えるほどひとりでテレビを見たり、集中していない
1歳から3歳ごろの子供は、家族との温かい信頼関係を作る大切な時期です。そのため、テレビを見せていると、「テレビに子守させている」と批判されたりします。しかし、調査(下記「1日にテレビを見る時間は?」)によると、「子守」と言えるほどこの時期はひとりでテレビを見たり、集中しているわけではありません。
子どもにとってテレビは、どんな効果や影響があるのでしょう。テレビに限らず、今の生活はスマホなどの電子メディアもなくてはならないものになってきており、この傾向は将来さらに進むはずです。親として、電子メディアの基礎知識を知っておきましょう。
上手に選んでつきあえば、良い効果も!
時間や内容、親のかかわり方によって教育的な効果を得られることも
しばしばテレビは子どもに良くないように言われますが、教育的な効果も知られています。例えば、アメリカの番組「セサミストリート」は、十分なしつけや教育を受けられない貧困層の就学前の子どもに対して、文字や言葉、基本的なモラルが身につけられるように開発されたもの。その教育効果が認められ、40年以上にわたって世界中で愛されています。
子どもは家庭が作る環境で育ちます。テレビも環境のひとつ。見せる時間や内容、親のかかわり方によって楽しみや教育的な効果を得られることもあれば、そうでないこともあります。この特集を参考に上手につきあっていきましょう。
子供にテレビを見せるのに適した時間は?
1~3歳がテレビを集中して見るのは30分以内
テレビを見せる時間は、どれくらいなら問題がないのでしょうか?そしてその基準はどの辺にあるのでしょうか?まずは調査結果から見てみましょう。
乳幼児期のほとんどの子どもはそれほどテレビを見ていない
日本の子どもがテレビを見る時間は上のグラフのとおり。0歳と1歳はほぼ3時間ですが、2歳以降は減少。そのうち大人と一緒がほとんどで、子どもだけでは30分程度。
また別の調査では、テレビへの集中度は、1~3歳が集中して見るのは30分以内。「他の事をしながら見る」「ついているけど見ていない」時間が多くを占めました。つまり、興味のあるものには集中しますが、そうでないものは見ていないという結果に。小さい子どもでも興味によって選択しているのです。
一日に遊べる時間は5時間程度。いろいろな遊び時間を確保して
子どもの発達には、手指や全身を使う遊びや、親や子どもたちとかかわる体験が必要です。テレビの時間の長短を考えるには、さまざまな遊び体験の時間が確保できているかどうかが大事なポイントです。一日24時間のうち、睡眠や食事などの時間を除くと、子どもが自由に遊べるのは5時間程度しかありません。
テレビの時間が心配なときは、グラフの平均的な時間も参考になりますが、他の遊びが十分できているかを見直してみましょう。1週間程度、遊び内容とテレビの時間を記録すると、わが子の生活を客観的に見ることができるのでおすすめです。
テレビは「つける」「消す」のメリハリをつけよう
追跡調査によると、テレビを長時間見る家庭では子どもも長く見ています。ついているだけで見ていないこともありますが、つけっぱなしは騒音になります。特に室内にいる時間が長い0歳、1歳のおうちは、テレビを消すことを忘れないで。
どうなの?子どもとスマホの関係性
テレビよりも身近なので、コントロールがさらに大事
テレビのように一方的に流れてくるのではなく、タッチで反応し、興味をひかれやすいので利用が増えています。基本的には絵本と同様に、親も一緒に幼児向けアプリを楽しむことができますが、テレビよりもさらに意識的にコントロールすることが大切です。テレビは室内だけですが、スマホは親に密着しています。子供はそれを知っているので、いつでもどこでもせがむようになります。どんなときにどんなふうに使って遊ぶかを、パパとママで決めておきましょう。
大人用と子供用の機器を分けておくのも有効
大人用のスマホを持たせて遊ばせると、いつのまにか通信するなど、さまざまなトラブルのもとに。使用がNGの飛行機内でせがまれて困ったという話もよく聞きます。
1~3歳は言い聞かせだけでなく、物理的な対策が必要な時期。“大人のもの”と“自分のもの”に機器を分け、大人のおさがりなど子供専用のものを用意し、通信機能をつけないのもひとつの方法です。
子供のスマホ、どんな内容をどう見せる?
大人のガイドのもと、対話しながらがベスト
テレビの良い効果、悪い影響は、実際のところはどの程度あるのでしょうか!? 良い効果なら、ぜひ実践してみたいですね!
子供に見せたくないものの線引きをしっかりと
テレビの悪影響について長年多数の研究がされていますが、確実といえる調査結果は出ていません。暴力的なものを見てまねすることはありますが、それは一時的なことであり、まねしたときの大人の対応によっても違ってきます。しかし、親なら「子供には見せたくない」ものがあるはず。その感覚は大事にしましょう。
アメリカの調査で判明!親と一緒に、が最も子供の脳を育てる!
0~2歳がテレビの物語をどの程度理解するかについて、アメリカの興味深い研究があります。まず親子を次の4つのグループに分けます。
A・語りかけ方を練習したママが、一緒に見ながら語りかける。
B・ビデオの中で時々出演者がママの代わりに語りかける。
C・ママが時々「よかったね」のような感想を言う。
D・単純に子供に見せる。
最後に物語の理解度と物語に出てくる言葉をどれくらい覚えているかを調べたところ、一番効果があったのはA、次はBでした。親が見せたい内容でも、ひとりで見せたときは子供の記憶にあまり残っていないのです。
絵本の読み聞かせのような対話が効果的
アメリカの研究はAとCの違いが気になりますね。Cのママの言葉は感想なので、子供は考えなくても答えられます。しかしAのママは「なぜ~したのかなあ?」「何したんだっけ?」のような、いったん考えないと答えられない対話的な質問をしたのです。絵本の読み聞かせでも、このような質問で教育的な効果が出ています。子供の答えはナゾだらけですが、答えてくれたことを喜びましょう。
子供の脳のスイッチを入れる「絵本的」な見せ方に挑戦!
一緒に見て子供と対話し、子供の答えに喜ぶ!
①一緒に見る
テレビも絵本のように親子遊びのひとつ。考えて答えるように親が語りかけると、脳がよく働きます。
②絵本のように止めて、会話をする
③どんな回答でも子どもの言葉を喜ぶ
ポイント1
勉強ではないのでしつこく聞かない。絵本を楽しむのと同じ感覚で。
ポイント2
子どもが脳で考えて、しかも積極的に言葉にして話したことを喜ぶこと。
教えてくれたのは
菅原ますみ 先生
お茶の水女子大学教授。専門は発達心理学、パーソナリティ発達。NHK〝子どもに良い放送“プロジェクトで共同研究を務め、子どもとメディアの関わりに詳しい。2人の息子さんをもつお母さん。
イラスト/市川彰子 構成/童夢 出典/『ベビーブック』