こんにちは!ロンドンでふたりの息子の子育てをしているYukoです。このコラムではイギリスの教育や子育てをしながら、日本との違いを感じる部分をレポートしていきますね。
イギリスの学校のスクールトリップってどんなもの?
7歳の息子が通う学校では、年に何回かスクールトリップがあります。
遠足と社会科見学の間のようなもので、行き先や回数はほぼ担任の提案で決定されるので、先生の個性によって内容は様々です。
息子のクラス(1学年1クラスのみ)は、なんと9月に新学期が始まってから今までに5回そして12月末に冬休みが来るまでにあと2回スクールトリップが! 大抵は学期ごとに1回あるかないかなので、この「ほぼ週一」のハイペースに思わず「What?!」と父兄たちが顔を見合わせるほどです(笑)。
トリップ自体の引率も、オーガナイズもたくさん手間暇がかかるというのに、それを厭わず子供達にたくさんの体験をさせてくれる担任の先生には頭の下がる思いです。
最近は私が子供の頃とは違って、趣向を凝らした図鑑の数々が溢れ、何かあればすぐにネットで調べられる時代。それらも勿論素晴らしいツールの一つですが、やはり実際に見て触って体験したものとは異なるのです。五感で受け止め脳裏に焼き付いた体験が、楽しく過ごした友達との時間に包まれれば、それはかけがえのない思い出と強い記憶に変わっていきます。
そしてその豊かな経験は、必ずやこれからの人生で幾度となく思い出される事でしょう。そして、その時々に姿形を変え、各々の糧になっていくのだと思うのです。
スクールトリップには父母ボランティアも同行
さて、スクールトリップには担任とアシスタントティーチャー、当日参加できる父兄ボランティアが3、4人サポーターとして同行します。 国も文化も違い、好奇心旺盛な7、8歳が30人。とにかくワイルドで、想像を超えてパワフルです。この子たちの興奮がマックスに達するトリップ当日は、てんやわんやの大騒ぎ。でも、そんな子供同士の関わり合いを覗けたり、先生や父兄同士の情報交換も出来るので、フルタイムで働く私のような親にとってはとても貴重な時間になっています。
これまでにどんなスクールトリップがあったかというと、
● 珍しい植物の特徴などの観察に、世界最大の植物園キューガーデンでのガイドツアー
● 肖像画からイギリス王室の歴史を学ぶ、ナショナルポートレイトギャラリーのガイドツアー
● 秋を見つけに王立公園、リッチモンドパークへ(野生の鹿があちらこちらに生息)
● ピータラビットを映画館で鑑賞
● ウエストミンスター大聖堂見学 等々
なんだかまるでロンドン観光みたいですね。
「橋」を作るまでのプランニング過程を体験
その中でも先日のトリップ、EE(Enabling enterprise) (http://enablingenterprise.org)のワークショップは最高でした。
それは、EEと携帯している国内外100を超える企業の中から、ロンドン・オリンピックスタジアムなど環境に優しくデザイン性の高い世界の建築物に携わっている「Burohappold Engineering 」(という企業を訪問し、「橋」を作るまでのプランニング過程を体験するというものでした。
実際に働いているスタッフの方々と5、6人1組でグループを作り、例として出された町の地図や環境などの情報を元に、どこに、どんな橋を、どうやって作るのかをアイディアを出し合い考えて行きます。アイディア交換の後は、オフィスを見学しながらエンジニアの方々に質問をしたりして、そこで得た情報を手がかりに再びグループで集まって「橋」の模型を新聞紙などで作りプレゼンする。というところまでがワンセットになっています。
(余談ですが、ロンドンの中心部、2つのビルに跨るエリート企業で働く皆さんはスタイリッシュでフレンドリーで、ミーティングの最中でもガラス越しに子供達に手を降って下さったり。このなんとも言えないワクワク感。働いている方々のポジティブオーラ。わたしもここで働きたい!と思わせるエネルギッシュなパワーに溢れていました)
小さいながらも、大人顔負けのこのプロセスに目を輝かせながら取り組み、個々のアイディアとチームワークで個性溢れる橋が次々に完成しました。
「どうやって、橋の形って作るの?」
「新聞紙、丸めてみたらいいんじゃない?それとも折るの?」
「いいね、じゃあわたしはテープを切る係する。」
「橋の下は川だから、青い色塗るね。魚も描く。クジラっているの?」
「いないでしょ。川だよ。あ、信号も作ろっか」
「赤、青?どっち??」
と、多少の脱線をくり返しながらも、なんだかんだと会話が途切れることなく全員で一つの橋を完成させました。
プレゼンの時には学芸会風にセリフと動きを入れたグループもあったりと、楽しんでいる様子がひしひしと伝わってきました。何と言ってもクラス全員、一人一人自分の言葉でプレゼンし、諦めることなくこのプログラムをやり遂げたことに大きな拍手を送りたいと思います
最後には「楽しかった!」の声がたくさん聞こえて、エンジニアリングという分野に興味を持った子たちがたくさんいました。そして彼らが思っている以上に今回のプログラムからは沢山のことを学んだことでしょう。
本物を体験する時、子供達はこんなにも生き生きとするのだと、改めて思い知らされる1日になりました。
今後も美しい公園が有名なフラムパレスでの考古学体験、スペシャルニーズの子供達へのセッションに力を入れている乗馬クラブでのポニーとの触れ合い等、興味深いスクールトリップが目白押しです。
今はサッカー選手になることばかりを考えている息子ですが、こういった一つ一つの体験がどう彼の中のエッセンスになっていくのかがとても楽しみです。
氏家祐子