口呼吸は、治したほうがいいの?
子供がいつも口を開けていたら口で呼吸をしているってこと?口呼吸は体に悪いの?病院で治療を受けるべきでしょうか。小児科専門医の粂川好男先生が口呼吸の影響と原因、対策をわかりやすく解説してくれます。
口呼吸をすると、こんなにも子供に悪影響が!
風邪を引きやすくなったり、口臭の原因にも
私たちはふだん、自然に、リズムよく鼻で呼吸しています。鼻は、外気のほこりを取り除いたり、乾いた外気を湿らせたり、冷気を暖めてのどや肺に送ったり。鼻粘膜の免疫が、細菌やウイルスの侵入を防いでくれてもいます。
鼻呼吸ができない時、代わりに口でするのが「口呼吸」です。しかし、口には鼻の持つ働きがないので、乾いた外気や冷気を吸い込んで、のどが痛くなったり、ウイルスが侵入して風邪を引きやすくなったり。また口の中が乾燥して雑菌が増加しやすく、口臭の原因になるなど、いいことがありません。
口呼吸のサインは、気がつくといつも口を開けている、口を閉じさせると苦しそうな呼吸になるなど。特に、睡眠時に大きないびきや無呼吸を伴うのは要注意です。子どもをよく見てあげてください。
子供が口呼吸をしてしまう主な原因は?
お子さんが鼻呼吸でなく口呼吸をしてしまっているなら、以下の原因が考えられます。
アレルギー性鼻炎
ハウスダストや花粉などにアレルギー反応し、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こります。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
鼻の周囲にある副鼻腔の粘膜が、慢性的に炎症を起こして副鼻腔に膿がたまると、鼻がつまり、鼻呼吸ができなくなります。
アデノイド肥大・口蓋扁桃肥大
アデノイドは、咽頭扁桃ともいいます。鼻の奥にあり、口を開けても見えません。口蓋扁桃は、いわゆる“のどちんこ”の左右にある隆起で、「扁桃腺が腫れた」と言うのは、これのことです。
「扁桃」はアーモンドのこと。形がアーモンドに似ていることが、名の由来です。両方ともリンパ組織で、細菌の侵入を防いでいます。生理的に3歳頃から大きくなり始め、6歳頃最大になって、その後徐々に小さくなります。肥大して空気の通りが悪くなると、口呼吸に。いびきや睡眠障害が起こるのも問題です。
歯が出ていたり、歯並びが悪い
意識して口を閉じないと、開いてしまいます。
癖で、習慣的に口呼吸になっている
子供の口呼吸が心配な時はどうしたらいい?
耳鼻科や歯科、小児科を受診し、原因を究明しましょう
風邪を引いて、一時的に口呼吸になっても、心配ありません。何か月も口呼吸が続き、心配な時は、まず耳鼻咽喉科を受診するといいでしょう。
一番問題なのは、アデノイドや口蓋扁桃の肥大です。多くは、6歳を過ぎるとしだいに小さくなるのですが、気道がふさがれ、大きないびきや、睡眠中に無呼吸になることがあると、子どもでも睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
睡眠時無呼吸症候群から低身長につながることも
睡眠時無呼吸症候群になると、正常な睡眠がとれないため発達が遅れたり、成長ホルモンの分泌が低下して、低身長につながる危険性も出てきます。そのような場合は、3~6歳の間に、アデノイドと口蓋扁桃の摘出手術が行われることが多いようです。しっかりと手術治療が行われれば、再発はまずありません。
歯並びが気になる時は、歯科へ。耳鼻咽喉科や歯科で異常がない場合は、癖などが原因のこともあるので、小児科を受診してください。
癖で習慣的に口呼吸になっている時は、無理やり口を閉じて鼻呼吸をさせようとしても、ストレスになることがあります。3歳過ぎて言葉の理解が進んできたら、手洗いやうがいの練習と一緒に、お母さんが手本になって説明をしながら、口を閉じて鼻呼吸の練習をしましょう。
ママ、パパへ先生からのアドバイス
おおかたの口呼吸は、年齢とともに自然に少なくなっていく傾向があります。6歳過ぎてアデノイドや扁桃が小さくなったり、鼻の病気も成長とともに軽症化することが多いからです。また、口を開けていても、実際には鼻呼吸しているケースも多いという報告も。よく、テレビを見ながら口をぽかーんと開けている子どもを見かけますが、口は開けているものの、鼻呼吸している場合も多いです。
粂川好男 先生 くめかわ よしお
杉並堀ノ内クリニック院長
立教大卒業後、出版社に勤務した後、信州大医学部入学。国立国際医療センター、愛和病院で小児科全般の臨床経験を積む。安心と笑顔を持ち帰れるクリニックを目指す。小児科専門医。
イラスト/松木祐子 出典/めばえ