「師走」はどう読んでる?しわす?しはす?【知って得する日本語ウンチク塾】

「しはす」でも間違いではない

多くのかたは「しわす」でしょう。でも、実は「しはす」でも間違いではないのです。

一般の社会生活で使われる漢字の目安として国が定めた「常用漢字表」では、どちらの読みも認めているのです。そのため、国語辞典の多くは、「しわす」を解説のある本項目とし、「しはす」も空見出し(参照見出し)として立項しています。この語の歴史的仮名遣いも、「しはす」なのです。

どうして12月を「師走」というのかは曖昧

ただ、陰暦12月のことをどうして「師走」というのか、その語源は、残念ながらよくわかっていません。

「師走」の語源説は、経をあげるために師僧が東西を走り回る月であるところからシハセ(師馳)の意味だという説、四季の果てる月であるところから、シハツ(四極)月の意味だという説、トシハツル(歳極・年果・歳終)の意味だという説など、諸説あります。

これらの中では、最初の師僧が東西を走り回る月だという説が、年の暮れの慌ただしいようすと一致することから、もっともよく知られていると思います。それが語源だと思い込んでいるかたもきっと多いでしょう。

確かにこの語源説に従えば、「シハセ(師馳)」が「シハス」となり、これに「師走」という漢字が当てられるようになったと考えられなくもありません。でもそれも、諸説ある語源説のひとつでしかないのです

 

 

記事執筆

神永 暁|辞書編集者、エッセイスト

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。最近は、NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。

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