誰にでも手に届く「星」はあるはず
桜花ゼミナール吉祥寺校の生徒たちの快進撃で、ドラマ版「二月の勝者」の幕は閉じた。しかし原作漫画はまだまだ続く。コミック最新刊の第14集で、島津順くんの1月受験での大金星がわかったところまで。その先のシナリオや合否結果はドラマとはまったく別世界になるはずだ。そして、「人生で一番長い一週間」へと突入していく……。
原作を読めば、ときに登場人物に自分を重ね自分を客観視できるようになるだろうし、さまざまな子どもたちの成長を擬似的に目の当たりにすることですでに何度か中学受験を経験したかのような気持ちになれるかもしれない。さらには、「中学受験とは何なのか?」という本質にも迫れる。これはどんな受験テクニック本よりも優れた機能だと私は思う。
ドラマでは毎回の放送で主人公となる子どもに焦点が当てられていたように、中学受験においてはすべての受験生がそれぞれの物語を生きる主人公だ。受験生だけではない。黒木や佐倉麻衣(井上真央)といった塾講師はもちろん、中学受験生の親たちも、それぞれの物語を生きている。
原作では、それぞれの登場人物の物語が同時並行で互いに影響しながら複雑に絡まっていく。その一人一人の成長が、恐ろしく緻密に描かれている。そのうえでさらに、中学受験のアナザーサイドとも言うべき、教育虐待と教育格差の問題にまで踏み込み、そこにもまた徹底的リアリティをもって問題提起する。
「二月の勝者」は、ただの中学受験漫画じゃない。中学受験というのぞき窓を通して、人間の未熟さと愛おしさ、そして社会の矛盾を描き、読者の教育観、子ども観、幸せ観、人生観に揺さぶりをかける壮大な作品だ。
私も揺さぶられた。黒木とはまったく違う立場からではあるが、黒木に強く共感する。ドラマでの灰谷同様、自分も自分の持ち場で「星投げびと」になってみようと思い、このたび、以前から構想していたオンラインサロンを開設する決意をした。
私が何かを指南するのではなく、会員同士が子育てや教育に関して、安心して情報交換や意見交換できる場所にしたいと思っている。ただしそれをビジネスにするつもりはない。ミニマム金額に設定した会費収入は全額、かねてより付き合いのあった無料塾と子どもシェルターに寄付する。寄付目的での入会も大歓迎だ。興味がある方はぜひ立ち寄って、「思うところ」だけでも覗いてみてほしい。
これはあくまでも私のなりの星の投げ方だ。それぞれのひとにそれぞれの持ち場での星の投げ方があるはずだ。
それに気づかせてくれた黒木蔵人、ありがとう。
文/おおたとしまさ
ドラマの最終回を見逃したというひと、もう一度見たいひとは、ネットサービス「TVer」で、視聴可能。ドラマ公式ホームページでは「第10回」のダイジェスト動画が。また、Huluでは過去の全話を視聴することができます。
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ビックコミックスピリッツで大ヒット連載中の中学受験漫画『二月の勝者-絶対合格の教室-』と気鋭の教育ジャーナリストのコラボレーション。「中学受験における親の役割は、子どもの偏差値を上げることではなく、人生を教えること」と著者は言います。決して楽ではない中学受験という機会を通して親が子に伝えるべき100のメッセージに、『二月の勝者』の名場面がそれぞれ対応しており、言葉と画の両面からわが子を想う親の心を鷲づかみにします。