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オンラインは主戦場。でも、全国各地にリアルな教室をつくり、人の輪を広げたい
探究学舎は、子どもたちの好奇心を刺激し、学びへの興味や探究心に火をつけることを目指した、今までにない教室。「宇宙編」「元素編」「科学実験編」「生命進化編」「人体医療編」「戦国英雄編」など、テーマ切りした学びの要素に多角的にアプローチしていくユニークな授業は、子どもたちはもちろん、保護者までもが驚きと感動の渦に巻き込まれてしまうと、好評を博しています。
現在、探究学舎は、オンラインを中心に授業を展開。受講者は全国各地に、また世界にも広がっており、「手軽に受講できていい」「家族で一緒に学べる貴重な時間になっている」など、喜びの声が数多く届いているそうです。
ただ一方で、「家での受講は子どもの集中力が保たれない」といった、リアルな授業を求める意見も。実は、リアルな教室の運営については、宝槻さんもずっと悩んでいたそうです。
宝槻「探究学舎は、2019年までは、拠点である東京・三鷹でリアルな教室を運営してきました。多くの保護者に支持されている「子どもたちが目を輝かせて学びに夢中になる授業」はそこで生まれたもの。リアルがあったからこそ、今、オンラインも軌道に乗りつつあります。
オンラインは、我々にとっての主戦場です。ただ、リアルな教室には、確かにオンラインには代えがたい重要な要素があります。それはコミュニティ。人間は、直接触れ合って、ケンカしたり仲直りしたりして、学び、成長するもの。それは普遍的な原理であって、オンライン上で、ましてや子どもたちの間では、なかなか成り立ちません。そう考えると、やっぱり全国の様々な地域に教室を作りたい。人と人との輪を広げていきたい。そんな風に考えてきました」
しかし、その夢の実現には大きな壁が。それは…「やっちゃんが足りない!」こと。つまり、人材問題です。探究学舎の最大の魅力は、宝槻さんをはじめとした名物先生たち=メインファシリテーターによる授業。とにかく熱く、テンション高く、子どもたちをあっという間に惹きつけていくその技は、一朝一夕に磨かれるものでなく、人材の育成はそう簡単ではない。でも、どうにかしてこの壁を乗り越えたいと、色々思い悩んでたどり着いたのが、「リアルとオンラインのハイブリッド」という仕組みだったそうです。
宝槻「僕が教室にリアルにいるかどうかは、実は、本質的には重要じゃないかもしれないと思ったのです。それよりも、その地域の子どもたちや大人たちが教室に集い、同じ時間と空間を分かち合いながら仲間になっていくことが大事。そこが、オンラインにはないわけですから。
子どもたちはリアルな教室に通い、5〜6人でテーブルを囲む。1テーブルに1人、グループファシリテーターがついて授業をサポートする。テーブルには実験道具やカルタなど、リアルな教材が準備されていて五感を使って学べる。ここまでは三鷹の教室と全て一緒。ただひとつ違うのは、メインファシリテーターがスクリーンの向こう側から授業をすること。でも、オンラインで繋がっていれば、工夫次第で、三鷹と同じ光景を繰り広げることはできる。この方法なら、全国で教室を運営していくことができる。そう思ったのです」
探究学舎とT-KIDSの思いが一致し、ついにハイブリッド教室の実現へ
そして、2021年12月28日、この宝槻さんの夢がついに実現。「探究学舎ハイブリッド教室」という名のイベントが開催されました。リアルな教室の会場となったのは、千葉県柏、石川県金沢、神奈川県湘南、大阪府梅田の4都市にあるT-KIDSシェアスクール。運営しているのは、誰もがよく知るあのTSUTAYAの母体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブです。
宝槻「T-KIDSさんは5年ほど前から子どもの学び事業にも取り組み、探究学舎のようなクリエイティブなプログラムを各地で展開。でも、T-KIDSさんも我々同様、事業を地方展開するには、講師という人材がボトルネックになると感じていたのだそうです。こうした背景から、探究学舎とT-KIDS双方の気持ちが揃い、一緒にやってみよう!ということに。これが、今回のイベント実現に至る経緯です」
当日は、4つのリアル会場と、探究学舎の軽井沢スタジオの5か所をオンラインでつなぎ、宇宙編、科学実験編、戦国英雄編の授業を、各回90分で行いました。もちろん、講師はやっちゃん(宝槻さん)です。
いつも通りの「やっちゃん節」がさく裂した、アゲアゲの授業展開。クイズや問題を投げかけ、エリア対抗で得点を競わせるなど、ハイブリッドならではの仕掛けもたくさん。会場の子どもたちの盛り上がりぶりは、スクリーン越しの授業とは思えないほどでした。
この日の参加者は総勢152名。子どもたちからは、「オンラインより楽しかった」「友達と話せたから楽しかった」「近くに探究の教室ができてよかった」という感想の声が上がったそうです。
幅広い可能性を秘めたハイブリッド教室に期待。世界平和にもつながるかも!?
ハイブリッド教室の初トライアル。イベントを終え、宝槻さんの感想は…「想像通り!完璧だった!」とのこと。
宝槻「サッカーに例えると、オンライン授業では、参加者それぞれがリフティングをすることになりますが、ハイブリッド教室だと、それもできるけど、みんなでパス回しもできる。やっぱりそれが良かったようで、教室も大いに沸いていましたね。
また、講師サイドとしても、オンラインよりもハイブリッド教室の方が仕掛け方に工夫の幅が出るので、今後の可能性を感じました。一方で、ハイブリッド教室は、現場で授業をサポートするグループファシリテーターの存在が非常に重要であることを再認識しました。場を盛り上げて子どもたちの参加を高めたり、無邪気な質問に答えたり、たまにおこる衝突を中和したりといった、ホールディングのスキルを持つスタッフの育成にも、今後より一層力を注いでいきたいと思っています」
では、今後の展開は?
宝槻「スポットでたくさんイベントを行っていき、レギュラーのクラスとしては今秋以降スターとさせたいです」
さらに宝槻さんは、その先の未来に向けた展望、妄想についてこう語ります。
宝槻「ハイブリッド教室というスタイルは、本当に幅広い可能性を秘めていると思っています。実際、全国各地の探究学舎通塾生の保護者の方々から、自分の地域で教室をやりたいという声も届いています。地域で教育事業をやりたい、子どもたちのために社会貢献したいと思っている人はいっぱいいるのです。
さらに、この仕組みは海外にだって波及できます。やっちゃんがしゃべったことを、一瞬にして多国籍語に自動翻訳するというテクノロジーはもう存在しているんですから。世界中の子どもたちが一緒に学び合い、笑い合う。僕にはもう、そんな光景がはっきりと目に浮かんでいます。これが実現し、常識になったら、世界平和も近いですよ(笑)」
大きな夢に向かい、一歩を踏み出した探究学舎。今後の展開が本当に楽しみです。
教えてくれたのは
強烈な父親の教育から、高校中退~大検取得~京都大学進学という特異な経歴を持つ。その後、2人の弟も同じ勉強法を駆使して高校中退~大検取得~京大入学を果たす。大学卒業後、私立高校や職業訓練校での指導経験を経て、2012年に東京都三鷹市で「子どもの好奇心に火をつける」学習をテーマにした探究学舎を開校。5児の父。その活動は「情熱大陸」(毎日放送)をはじめさまざまなメディアで取り上げられている。
文/鈴木友紀