最近、さまざまなシーンで「オーガニック」という言葉を耳にするようになりました。直訳すると「有機的な」という意味ですが、洋服などに使われるコットンにも、オーガニックとそうでないものがあるのをご存知ですか? オーガニック・コットンブランド「プリスティン」を運営する株式会社アバンティの奥森秀子さんに、オーガニック・コットンについて伺いました。
オーガニック・コットンという選択が身近なモノの「由来」を知るきっかけになる
──オーガニック・コットンとは、どのようなものなのですか?
奥森秀子さん(以下、奥森)コットンは「ワタ(綿)」という植物から作られるのですが、農薬や化学肥料を使わず、太陽の恵みをたっぷりと受けて育ったワタの果実である綿花からできたものを、オーガニック・コットンといいます。
このワタは、栽培に手間暇がかかるため、一般的には農薬や除草剤、化学肥料、遺伝子組み換えのタネがたくさん使われています。そのため、オーガニックのワタを栽培している農家はとても少なくて、その割合は世界で1%にも満たないのです。
コットンは「ワタ」という植物の果実からできている
ライフスタイル提案ブランド「プリスティン」では、1996年のオープン以来、オーガニック・コットンを使用。やさしい肌触りのオーガニック・コットンは、3年以上農薬や化学肥料を使わない畑で栽培された「ワタ」から作られます。
──そんなに稀少なオーガニック・コットンを取り扱うようになったのは、どのような理由からですか?
奥森 31年前に、創業者の渡邊智惠子(現・相談役)が、あるナチュラリストの方から勧められたことがきっかけです。毎日使っているコットンが与えている環境へのダメージを知り、衝撃を受け、オーガニック・コットンを普及させることが地球環境を守る糸口になると考えました。
──環境へのダメージとは、先述された農薬や遺伝子組み換えなどのことですか?
奥森 はい。有害な農薬による健康被害や土壌汚染などです。さらに、主要な生産国の一つであるインドでは、児童労働も大きな問題となっています。学校へ行かず、劣悪な労働条件で働いている子どもが約40万人以上いて、そのうちの8割が女の子だといわれています。栽培する人の安全、児童労働の廃止といった働く人の環境も考慮に入れたものが、オーガニック・コットンです。
ワタ栽培から製品、その後まで循環するものづくり
インドやアメリカからオーガニックの原綿を直接輸入。そして国内で紡績→生地→製品→販売→ユーザー→再生→紡績…と、自社で一貫した循環型を追求。2030年までにノープラスティックとゼロウェイストを目指しています。
──アバンティで使っているコットンは、どこのものなのですか?
奥森 私たちが使用するオーガニック・コットンの原綿は、アメリカ・テキサス州やインド・タミルナドゥ州などで栽培されたもの。現地から綿花を直接輸入して、日本国内で糸にし、生地にし、製品を作っています。オーガニック・コットンで「地球と子どもが幸せになる」ことを目指していて、その思いを繫つなぐため、シームレス(顔が見える)な一貫体制のものづくりになりました。
なので、インドの原綿で最初に作ったアイテムが産着でした。ものづくりに関わったすべての人が「赤ちゃん」を思うことで、良好な関係性を築くことができ、愛にあふれた商品が生まれました。
自分と大切な人へ贈りたくなるプリスティンのアイテム
無染色、国内生産、顔の見えるものづくり、やさしい仕様など、プリスティンが大切にしていることの結晶であるオリジナルアイテム。産着、肌着、パジャマなど、直接肌に触れるものから、ワンピースやコートまで、幅広いラインナップ。
──おすすめのアイテムはなんですか?
奥森 実際に、身にまとっていただけるとわかるのですが、オーガニック・コットンは、本当に気持ちがいいのです。だから、肌に直接触れる肌着がおすすめです。それから、パジャマ。皮膚も呼吸をしているので、質のいいものに包まれていると、よく眠れます。オンオフの切り替えにもなって、いいですよ。
──オーガニック・コットンを暮らしに取り入れると、社会にどんな影響を与えることになりますか?
奥森 暮らしの中にあるモノが、いつ、どこで、どのようにして作られたのかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。これだけモノがあふれている時代、買い物でなにを選ぶのかは投票のようなものです。地球や社会をよくするための一票を投じることが、幸せな未来を創る一端を担っていると思っています。
プリスティン本店
東京都新宿区大京町31二宮ビル1F 営業時間 11:00~19:00 電話 03-3226-7110
オンラインショップ https://www.pristine.jp/shop/
親子で体験! アバンティコットン倶楽部
オーガニックの国産綿を育てるプロジェクトを進めているアバンティの活動をご紹介します。
春に種まき、秋に収穫!アバンティコットン倶楽部
「 始まりは土、そして種」という想いのもと、ワタの種をまき、綿花を収穫し、糸を紡ぎ布を織り、まとう服までを作る「国産綿復活プロジェクト」をスタート。繊維自給率を上げること、衣服と大地の繫がりを知ること、自社製品に国産綿を入れることなどを目的に、全国各地の畑で、綿花のオーガニック栽培をしています。
2021 年からは、「アバンティコットン倶楽部」と称し、耕作放棄地を活用した8つの畑が開かれました。5月の種まきから秋の収穫まで、親子で参加できるイベントなどを開催する予定もあるそうなので、場所とタイミングが合えば、ぜひ参加してみては? 詳しいインフォメーションは、アバンティのホームページなどでチェックを。
アバンティコットン倶楽部の拠点は、新潟県糸魚川市、福島県南相馬市(2か所)、群馬県みどり市、埼玉県狭山市、長野県佐久市、滋賀県大津市、高知県黒潮町の8か所。2030年までに、国産綿混率2%を目指しています。
記事監修
奥森秀子
株式会社アバンティ代表取締役社長。ファッションデザイナ-、百貨店研究所を経て、アバンティに入社。2021年秋より現職。オ-ガニックコットンの原綿を輸入し糸、生地、製品までを一貫して「メイド イン ジャパン」にこだわった企画製造販売を行っている。持続可能なライフスタイルを追求するブランドPRISTINE(プリスティン)のブランドディレクタ-も兼任。オーガニックコットンを通して、女性の幸せを広める活動にも尽力し、日本オーガニックコットン協会(JOCA)理事も務める。
『小学一年生』2022年1月号 別冊『HugKum』 構成・文/神﨑典子 写真提供/アバンティ
1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。