地震はどのようにして起きる? 防災教育は家庭から。子どもと一緒に防災意識を高めよう

地震が多い日本では国を挙げて子どもへの防災教育に力を入れていますが、いざ地震が起きたときに頼りになるのは家庭での教育です。地震の正しい知識や心構えを知り、親子で共有しておきましょう。地震発生の仕組みや家庭でできる防災対策を解説します。

地震が発生する仕組み

地震は、地下で大きな変化が起きたときに地表に振動が伝わり、揺れを感じる現象です。地震が発生するとき、地球の内部では何が起きているのでしょうか。地震がなぜ起きるのか、主な原因を見ていきましょう。

プレートの移動が原因の場合

ほとんどの地震は、「プレート」が動くことで発生します。プレートとは地表を覆っている、板状の固い岩石です。地球には十数枚のプレートがあり、ジグソーパズルのように組み合わさって地表を覆っています。

プレートは「マントル」と呼ばれる柔らかな物質に乗っていて、マントルの動きに合わせて地表を移動しています。移動といっても1年間に数cm程度なので、実感はないでしょう。

プレートはそれぞれが違う方向に動くため、地球上では必ずプレート同士がぶつかる場所が出現します。ぶつかったプレートが方向転換したり、移動を止めたりすることもなく、お互いが押し合って強い力がかかります。

プレートを形づくる岩石がぶつかってかかった力に耐えきれず、壊れたり位置がずれたりして起こる現象が地震なのです。

隣り合うプレート(濃い色の部分)が別の方向へ動き、プレート同士のズレや衝突エネルギーが地震となる。

火山活動が原因の場合

火山の活動によって、周辺のエリアで地震が起こるケースもあります。これは「火山性地震」と呼ばれており、噴火に伴うものと、火山内部のマグマや熱水の活動によるものに分けられます。

火山性地震はほとんどの場合、プレートの移動で起こる地震に比べて小規模です。ただし爆発的に噴火したときは、大きな地震になることもあるため注意が必要です。

火山の内部で起こる活動が原因の地震は、震源の深さや振動の周期によってさらにタイプ分けされます。観測で得られたデータは、噴火の予測に用いられています。

マグマの動きなど火山噴火活動にともなう地震のほか、プレート同士の境界やプレート内部が震源となる地震など、実際は複雑な仕組み・要因で起こる。

参考:火山性地震|地震本部

なぜ日本には地震が多い?

日本は世界でも有数の地震大国ということを知っている人は多いかもしれません。では、なぜ日本で地震が多いのでしょうか。その主な理由を見ていきましょう。

4つのプレートが接している

日本列島が乗っているのは、陸のプレートである「北米プレート」と「ユーラシアプレート」の上です。日本列島付近の太平洋側には、海のプレートである「太平洋プレート」と「フィリピン海プレート」があります。

日本の地下や付近の海底では、陸と海で二つずつ計四つのプレートがぶつかり、押し合っている状態なのです。プレートの境界で地震が多発することは明らかなので、4つのプレートが接する日本が地震大国と呼ばれるのは当然といえるでしょう。

4つのプレートが接している日本列島

火山の数が多い

「活火山」が多いのも、日本に地震が多い理由の一つです。現在日本には111個の活火山があり、世界にある活火山の約7%を占めています。活火山が多ければ、噴火による火山性地震が起こる確率も高まります。

また火山から噴出するマグマは、プレート同士の摩擦によって岩が溶けたものです。4つのプレートが接する日本では、摩擦によるマグマもできやすく火山内部の活動による地震が多く観測されます。

起きた地震は気象庁が発表

どのくらいの頻度で地震が起きているのか知りたいときは、気象庁の「地震情報」をチェックしてみましょう。気象庁では「震度1以上」の揺れを検知した場合、揺れた地点や地震の発生場所(震源)、地震の規模を発表しています。

地震情報のウェブサイトを見ると、ほぼ毎日どこかで震度1以上の地震が起きていることが分かります。大きな地震を経験していない子どもでも、データを見れば日本が地震大国であることや、自分のまわりでも地震が起こる可能性があることを実感できるかもしれません。

参考:地震情報 一覧

地震に関する用語をおさらい

地震について何となく分かったつもりでも、説明に使われる用語を理解できていない人は多いのではないでしょうか。地震に関するニュースや情報を正確に受け取るためにも、よく聞く用語をおさらいしておきましょう。

震度とマグニチュードの違いは?

地震のニュースでよく聞く言葉に、「震度」や「マグニチュード」が挙げられます。どちらも地震の程度を表していますが、意味は全く違います。

震度とは「場所ごとに観測される揺れの強さ」のことです。0から7までに分けられ、5と6にはそれぞれ「弱」と「強」の二つがあります。

マグニチュードは「地震そのものの規模を表す単位」です。マグニチュードが大きくても、震源地から遠い地点では震度は小さくなります。

子どもに説明するときは、電球を例にすると分かりやすいでしょう。電球自体が持つ明るさがマグニチュード、電球のまわりの明るさが震度です。

本震や余震、群発型とは?

大きな地震の発生前後に、小さな地震が起こるケースがあります。この場合、最初の地震を「前震」、大きな地震を「本震」、続いて起こる小さな地震を「余震」と呼びます。

余震は基本的に本震よりも小規模ですが、本震によって家屋や地盤がダメージを受けるため油断は禁物です。本震と同規模の余震が起こり、被害が拡大することもあります。

なお本震や余震の区別がなく、特定の地域で集中的に多発する地震は「群発型」と呼ばれます。群発型地震は主に火山の周辺で見られるものの、はっきりとした関係は分かっていません。

日本で予想されている大きな地震

日本では近いうちに、大きな地震が発生すると予想されています。特に警戒したい、2大地震について見ていきましょう。

南海トラフ地震

「南海トラフ」は、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでできた浅い溝です。関東南部から九州方面の沖合に、700kmにわたって伸びているといわれています。

南海トラフでは100~200年に1回の間隔で、大きな地震が発生しています。前回の地震から70年以上が経過した現在、いつ大地震が起きてもおかしくない状況です。

政府の発表によれば、30年以内に南海トラフでマグニチュード8~9の地震が発生する確率は、70~80%です。範囲が広く震源の特定が難しい上に、震源が海底で津波の被害も想定しなければならず、危機感が高まっています。

首都直下地震

「首都直下地震」は、今後30年以内に70%の確率で起こるとされる、マグニチュード7クラスの地震です。東京周辺では過去に関東大震災をはじめ、大規模な直下地震がいくつも起こりました。

今後も似たような大地震が発生する可能性は否定できず、政府も広く警戒を呼びかけています。直下地震はプレート境界の地震とは異なり、陸地で起こります。震源が近く、建物の倒壊や火災発生の危険性が高いのが特徴です。

東京には人口が集中しているため被害の規模が大きく、首都機能や企業活動の停止による社会的な混乱も懸念されます。東京だけでなく、茨城・千葉・埼玉・神奈川・山梨の各県も震源になる可能性があるので注意しましょう。

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地震に備えて家庭でできること

日本に住んでいる以上は、家庭でも地震への備えを万全にしておかなければなりません。子どもと一緒に取り組みたい、家庭での対策例を紹介します。

家の中の安全な場所を確認

小さな子どもは家で過ごす時間が長いため、地震発生時に家にいる可能性も高くなります。まずは家の中の安全な場所を確認し、揺れたときはそこに移動するようにしましょう。

安全に過ごせる条件は、主に以下の三つです。

・落下物や転倒物が少ない
・窓が少ない
・閉じ込められない

一般的には、リビングの中央やテーブルの下・玄関が安全とされています。窓のないトイレはドアがゆがむと完全に閉じ込められてしまうため、地震の際に逃げ込むのは避けましょう。

生活必需品を備蓄

避難所生活に備えて、非常持出品を常備する家庭も多いのではないでしょうか。ただし避難するほどではないけれど、電気や水道・ガスが止まり、生活に支障を来すケースも考えられます。

そのため数日間は生活に困らないよう、非常持出品とは別にさまざまなものを備蓄しておく必要があります。おすすめの備蓄品は以下の通りです。

・飲料水(1人当たり1日3l)
・調理しなくても食べられる食品(カンパンやチョコレートなど)
・簡単に食べられる食品(インスタント麺やレトルト食品など)
・簡易トイレ、トイレットペーパー、流すための水、生理用品
・マッチ、ローソク、懐中電灯、ラジオ、電池
・カセットコンロとガスボンベ
・スマホのバッテリー
・ばんそうこう、傷薬、その他常備薬
・軍手や下着類
・カイロや熱中症予防グッズ

家族の人数や子どもの年齢に合わせて、最適な量を用意しましょう。

避難や連絡の方法を家族で共有

平日の昼間のように、学校や会社にいる時間に地震が発生した場合、家族の安否が気になります。子どもだけで避難するケースも想定されるため、避難所や待ち合わせ場所・連絡先は常に共有しておきましょう。

最寄りの避難所までは、子どもと一緒に歩いてみることをおすすめします。避難経路に危険な場所があった場合は、より安全な経路を検討しましょう。

また地震発生直後は、携帯電話がつながらなくなることもあり得ます。固定電話・公衆電話はもちろん、災害用伝言サービスの使い方も練習しておくと安心です。伝言サービスを使う方法や会社の電話番号・避難所の名称などはメモにまとめ、子どもに持たせておきましょう。

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地震が起きたときの心構えも再確認

地震を何度か経験した大人でも、次の地震で何が起こるかまでは予測できません。地震を知らない子どもは、なおさらイメージがわかないはずです。どのようなときでも落ち着いて行動できるよう、心構えを再確認しましょう。

安全な行動をシミュレーション

地震が発生する時間帯や場所によって、命運が大きく分かれることもあります。まずは子どもの行動範囲を洗い出し、それぞれの場所別に安全な行動パターンをシミュレーションしましょう。

例えば通学路では、ブロック塀や自動販売機など、物が倒れてくる危険性のある場所に近付かせないことが重要です。エレベーターに閉じ込められた場合、インターホンで外部と連絡できることも教えてあげましょう。

もちろん子どもだけでなく、自分自身も会社やよく行くスーパー・利用する交通機関の状況などをチェックしておく必要があります。

地震によって崩れたブロック塀。普段の道にも危険な場所が。

火事や津波のことも考えて

地震発生直後は転倒した家具などに火が燃え移り、大火事に発展する危険があります。余震が続くことも考えられるので、揺れが収まっても油断せず、常に火の元を確かめる習慣を付けましょう。

子どもだけで留守番しているときに、火を使わないよう言い聞かせることも忘れてはいけません。

海岸に近い地域では、津波にも注意が必要です。震度が小さく家が壊れていない場合でも、念のため高い場所への避難を徹底しましょう。津波は何度も押し寄せることがあるので、避難後もしばらくは家に戻らず安全な場所で過ごすようにします。

地震の基本を知って正しく備えよう

地表はいくつかのプレートに分かれており、長い時間をかけて移動しています。地震は地球の活動の延長上で起こる現象なので、人類が止めることはもちろん、予測すらも難しいのが現状です。

世界有数の地震大国で暮らす私たちにできることは、被害を最小限に抑える行動だけです。いつ地震が来ても慌てないよう基本知識を押さえつつ、親子で防災意識を高めておきましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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