【ベテラン講師が教える】素直な1年生、ターニングポイントの3年生…学年別子どもの特徴と子育て法

小学生の子どもを持つ親としては、我が子の小学校時代の子育てへの不安がつきものです。小学生の子育ての悩みを誰かに相談したいと思うことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、小学校教師として30年以上勤務され、保護者の育児相談に乗る『親塾』を主宰する教育の達人、多賀一郎先生に、小学校6年間の成長の見通しと、学年ごとの成長・生活(思春期・反抗・ピアプレッシャー)・学習(国語・算数・体育・社会科・理科)に伴う子育てのアドバイスをいただきました。

小学校6年間の成長の見通し

子どもの成長や生活の傾向、学習に伴う子育てのアドバイスを学年ごとに教えていただきました。

まっさらな小学校1年生(6-7才)

元気いっぱいの小学生
小学校6年間の子どもの成長・生活・学習

小学校1年生の特徴は素直なこと

小学校1年生の最大の特徴は、素直で、言われたことを言われた通りにしようとすることです。ですので、適当なことを言われたり、曖昧な指示をされたりすると、戸惑ってしまうことがあります。まだ、融通が利かない時期なので、なにかお願いするときには、具体的に丁寧に言うようにするとしっかり伝わります。

自己肯定感が最も高い小学校1年生の時期は、ほめると効果絶大

また、小学校1年生の時期は、“可能性の塊”です。やる気満々で、「自分はなんでもできる」と思っています。自己肯定感の最も高い時期なのです。この時期は、ほめることの効果が絶大。「すごいね」「やるじゃない!」「なるほどね」といったような言葉をかけ、やる気の子どもたちをさらに前進させましょう。

小学校1年生の時期に、生活習慣を習慣化しよう

1年生での生活習慣は、その後の学校生活をかなり決定づけます。自分で早起きしたり、時間割を見て必要な道具を揃えたり、帰ったらすぐに宿題をしたり、というような習慣は、1年生の時が最もつけやすいです。一緒にやってみて、できなければ手伝い、一人でできそうなら徐々に手を離すようにします。できたら認めてあげて、ゆっくり習慣化していくようにしましょう。生活力の個人差がとても大きい時期なので、自分の子どもに合わせたペースであわてずに。

小学校1年生の国語は「音読」が効果的

小学校1年生の国語で重要なのは、「音読」です。これは、後々の国語の学習の基本となります。「音読」は、低学年にとって読解そのものなのです。すらすらと読めるのなら、文章の意味がわかっていると考えて良いでしょう。もしつかかかって読むようなら、すらすらと読めるようになるまで音読を繰り返してください。お家の方が子どもが音読するのを聞いてあげると、力がつきます。

小学校1年生の算数は足し算・引き算の暗算を

小学校1年生の算数は、数とはどういうものか、足し算とは? 引き算とは? ということを、ブロックや絵などを使って学んでいきます。子どもがわからないようでしたら、視覚的効果のあるアイテムを使って説明しましょう。最終的に、足し算、引き算の暗算ができるようになれば問題ありません。繰り上がり、繰り下がりの計算の数は36個しかありませんので、反復練習して暗記すれば、暗算がスムーズにできるようになります。

小学校1年生の運動能力

指のすみずみまでの運動神経がうまく機能していないのが小学校1年生のころ。スポーツの細かい技術を要求してもできなくて当たり前です。「調整力」と言って、末端の神経までうまく使えるように、平均台やマット運動などのさまざまな運動遊びをして、機能を呼び覚ましていきましょう。

✔小学校1年生の子を持つ保護者へ、多賀一郎先生からの安心アドバイス

小学校1年生の時期は、「人様に遅れをとらせたくない」と焦ったり、不安になったりしがちですが、大切なことは「できない」ということをどうとらえるのか、です。できないことはコンプレックスを持つことでもあります。しかし、少しくらいできないことがあっても、自分を否定しないようにすれば良いのです。子どもに努力の大切さを教え、そのがんばる過程をほめるようにしましょう。

しっかり者の小学校2年生(7-8才)

小学校2年生はちょっぴりお兄さん・お姉さんに

小学校2年生の時期は、小学校では最も安定した時期と言えるでしょう。初めての下級生である1年生が入学し、ちょっぴりお兄さん・お姉さんになります。このことは子どもたちにとって大きなこと。1年生のころとは比べものにならないくらいにしっかりとしてきます。また、自我がはっきりとしてくるのもこの時期。子どもたちは自己主張をするようになり、「秘密」や「ないしょ」を持ちます。これは自然なことですので、不安に思う必要はありません。まだ幼いので、きちんと対話すれば「秘密」を話してくれることも多いです。

小学校2年生の国語は「作文力」をつける

小学校2年生の時期は、「作文力」をつけるようにしたいものです。作文のポイントは、まず書き慣れるということ。おすすめの練習方法は、文章を1日10分視写するようにします。このとき、時間を区切り、字の丁寧さなどは気にしないで、たくさん書けたらほめます。2年生の国語の問題集を写すようにすると、読み取りの練習もできるのでおすすめです。

作文を書く上での子どもの悩みは「何を書いたらいいのかわからない」ということが多いようです。題材がつかめないことがだいたいの原因ですが、何か行事がないと書けないのでは、「作文力」があるとは言えません。何を書いてもよいということを、常に言ってあげることが大切です。

小学校2年生の算数は九九とひっ算

小学校2年生の算数では、九九とひっ算をしっかり学びましょう。完璧にできるように反復練習してください。学校でこなす計算の数では物足りないので、できればおうちでも計算の練習をすると良いでしょう。九九は2学期の後半に登場します。「うちの子は九九をおぼえるのに時間がかかりそう…」というのであれば、夏休みから遊び感覚で九九の練習をしてみてください。

✔小学校2年生の子を持つ保護者へ、多賀一郎先生からの安心アドバイス

小学校2年生になって不安なことは、初めてのクラス替えです。これは子どもだけでなく、親も不安なもの。子どもの前で不安を口に出さないようにし、子どものネガティブな考えをポジティブに言い換えてあげてください。たとえば、「友だちが誰もいないクラスになったらどうしよう」と言えば、「新しい友だちをつくるチャンスだよ」などです。子どもたちの気持ちが軽くなります。
また、子ども自身の成長に目を向けさせるようにします。「1年生のときはできなかったけれど、今はこんなこともできるようになったね」、などの言葉は、子どもをほっとさせる魔法の言葉です。自分自身の成長を意識させると子どもは不安が薄らぎます。

子どもが伸びやかに育つには、父性と母性の両輪が必要です。特にこの時期(1年生から2年生にかけて)は、母性が必要となってきます。子どもは甘えが足りないとき、いつも落ち着かず、不安です。甘え足りないようでしたら、膝に子どもを置いて絵本を読んであげてください。甘えられた気分になって落ち着きます。このとき、「甘えさせる」ことと「甘やかす」ことをけして間違えないように。

大きく育つ小学校3年生(8-9才)

生活も学習も大きく変化する小学校3年生

小学校3年生になると、子どもたちが学校内でグループ化し始めます。そのことでいろいろな問題が生じ、人間関係が難しくなり始めます。子どもたちは、そのような問題やもめごとを通じて成長することを忘れてはなりません。
他の子の悪口もたくさん言うようになります。外ばかり見て自分の内側に気持ちが向かないので、深い反省などできません。叱られても同じことを繰り返してしまいます。
また、パワーアップして良い方向にも悪い方向にもその力を発揮していきます。そのときキーワードとなるのは「責任」です。自分の考えを子どもに言わせて、言った通りにするように、責任を持たせるようにしましょう。

小学校3年生で迎える学習面のターニングポイント

小学校3年生になると、さまざまな学習のレベルが一気に上がります。学校での板書の量も増え、書き写すのにも時間がかかります。授業では、生活科が社会科と理科に変わり、負担が増えます。
国語では、教科書の文字の大きさが小さくなり、文章の書き方も「分かち書き」から、通常の文章のような書き方に変わります。算数では、分数や小数など、これから先ずっと大切な考え方が登場します。
この時期は、説明だけで理解することができません。低学年で使った算数セットなどを捨てずに残して置いて、具体物で考えさせると理解しやすいでしょう。

小学校3年生は、抽象的な思考へ移行する時期

3年生の時期は、具体的思考(目に見えるもの、聞こえるものをもとにして考えること)から、抽象的な思考(目に見えなくても頭の中で考えること)へと移行する時期だと言われています。抽象的思考というのは、主に言葉を使って考えるものですから、言葉を大切にするようにしていきたいものです。

✔小学校3年生の子を持つ保護者へ、多賀一郎先生からの安心アドバイス

小学校3年生になると、言葉遣いが悪くなることがあります。しかし、いろいろと言いたい時期なので、あまり目くじらを立てないほうが良いでしょう。かと言って放置容認していると、悪い言葉遣いが定着したり、エスカレートすることもあります。叱らずに、そのつど言い直しさせるようにしましょう。根負けしないようにしてください。

大人びてくる小学校4年生(9-10才)

小学校4年生は前半と後半で大きく変化

小学校4年生の前半(夏休みぐらいまで)は、3年生の続き。後半(夏休み明け)になると、高学年ぽくなる子どもが増えてきます。見かけは小休止のように落ち着いて見えますが、心が自分の内面に向かっていく時期です。自分のこと、学校のこと、友だちのことを話さなくなります。隠し事も上手になってきますので、保護者には我が子の家の外での実態がつかめなくなるころです。

小学校4年生の女の子は早めに思春期を迎える

特に女の子は、しだいに思春期に入っていきます。大人びたことを話したり、女の子同士で固まって他の子どもを疎外したり、影で先生の悪口を言ったりするようになります。女の子の身長が急に伸びたと思ったら、初潮が起こる兆候かもしれません。体の変化にも気をつけておきましょう。
男の子は、女の子よりも精神的な成長が遅く、女の子がお姉さんのように男の子をリードする姿をよく見かけるようになるかもしれません。

努力が実る! 小学校4年生の学習面

小学校3年生で培った学習がベースとなり、開花していきます。今まで、努力していたのに実らなかった子どもでも、この時期にぐんと伸びます。その反面、3年生のときの学習内容が身についていないと、しわ寄せが4年生のときになってはっきりと出てきて伸び悩みます。3年生がいかに大切かということです。
また、論理的な思考ができるようになってくる時期です。論理的に考えるのが苦手な子どもは、「勉強が難しくなった」と強く感じてしまうことでしょう。こういうときこそ、基礎・基本が大切。算数の計算と国語の漢字力の学習をしっかりと反復練習し、セーフティーネットをつくるのです。

✔小学校4年生の子を持つ保護者へ、多賀一郎先生からの安心アドバイス

「9歳の壁(10歳の壁とも言う)」というのをご存知ですか。これは、ほとんどの心理学で言われていることで、3~4年生の時期にが子どもががらりと転換するという指摘です。このことから注意しておきたいのは、毎日子どもをよく観察し、変化に気づくこと。動作・行動様式・表情など、毎日ちゃんと見ているからこそ気づくことがあります。口出しする前に、じっくりと見ることを大事にしてください。
また、子どもとのコミュニケーションをとる時間を少しでもつくるようにしましょう。何か問題が起こったときだけ対話しようとすると、説教しかできなくなります。叱らず、大声を出さず、落ち着いて対話するようにしておけば、高学年の思春期のときの反抗もしにくくなるものです。このことで、相手を尊重する対話の仕方を教えるということなのです。

思春期突入の小学校5年生(10-11才)

思春期突入の小学校5年生│しつけ(躾)に役立つ先生の安心アドバイス
小学校5年生の学習面では学力差が如実に出る

小学校5年生は思春期に突入する時期

思春期というやっかいな時期に入るのが5年生です。
特に女子のほとんどは、もう思春期だと考えて接した方がよいでしょう。思春期は、子どもから大人に成長する過渡期。体の変化も表れ始めます。身長が伸び、男の子は顎をさすったり、女の子は胸を気にし出したり、ちょっと不自然な動作が始まったら要注意です。体の中でも変化が起きていて、ざわついたような気分で落ち着かず、不安定になります。

小学校5年生の反抗・反発は成長段階

この時期の子どもたちは、大人から離れて独立したいのです。しかし、実生活で独立などできず、大人もそれを認めるはずがありません。したがって、「反抗」という態度で表します。反抗は、口をきかなくなる、口答えが増える、ものにあたる、なにもしなくなるなどの形で出てきます。とりわけ、異性の親に倒しては反発が強くなりますが、これはまともな成長段階だと考えるようにしてください。

小学校5年生の11月は学級崩壊や不登校に注意

学校生活では、活動範囲と責任が広がります。委員会活動など公共奉仕的な仕事が増えるのです。また、「小学校5年生の11月は荒れやすい」とよく言われます。学級崩壊や不登校も発生します。原因はさまざまですが、子ども自身の問題というよりは、周りとの関係性の問題が多いように思われます。
とにかく、子どもの情報が入りにくくなるので、何か心配事があればすぐに担任の先生と連絡をとりあったり、他の保護者と情報を共有するようにしましょう。

小学校5年生の学習面では学力差が如実に

小学校5年生の学習内容は、子どもたちになじめないものが中心となります。テストでは多くの記憶を求められることが多く、勉強しない子とする子では、学力の差がはっきりと開いてきます。
そんなときこそ音読をしましょう。音読は、意味をつかみやすくする最適なものなのです。国語だけに限らず、算数でも社会科でも理科でも、少なくとも習っている単元の教科書のところはすらすらと音読できるようにさせましょう。

✔小学校5年生の子を持つ保護者へ、多賀一郎先生からの安心アドバイス

この時期の子どもとは、ちょっと距離を置いた付き合い方をしたほうがうまくいきます。少し離れたところから眺めるような感覚で子どもを見つめ、あまり細かくは口を出さないように、あくまでも見守るという感覚が必要だと思います。

最高学年、小学校6年生(11-12才)

責任と自覚を求められる学年、小学校6年生

小学校6年生は、責任と自覚を求められます。しかしながらこれは、過大な要求です。子どもにはそれぞれ特性がありますから、「あなたはあなたなりの目標でいいんだよ」と、個人に合わせた目標をつくるとよいでしょう。それでも、6年生になるとどの子も最高学年という意識はあります。そのプライドも大切にしてあげてください。

小学校6年生の「ピア・プレッシャー」とは?

小学校高学年から中学校の子どもたちの多くが「ピア・プレッシャー」に取り込まれていきます。ピア・プレッシャーとは、簡単に言うとみんなと同じことをしなければ怖いという感覚です。先生や親は「そんな人は相手にしないようにしなさい」と仲間を否定して離れさせようとします。それは正論なのですが、正しいからこそそれができない子どもは苦しみます。そのことを知っておいてください。

小学校6年生の学習面は「自分でする」ことを主眼に

小学校6年生は小学校の総まとめの時期です。算数でも国語でも、これまで積み重ねてきたことが重要になってきます。社会科では、日本史と政治の学習が入ってきます。歴史マンガを読んだり、遺跡、博物館に行ったりして、歴史に興味をもたせるとよいですね。

6年生の学習では、「自分でする」ことに主眼をおくようにしましょう。放っておいて勝手に学習をすることはほとんどありません。ですので、親との約束によって学習する時間を決めるとよいでしょう。この約束は、親に都合の良いものではなく、親も我慢しなければならない約束にしてください。それをお互いに守る努力をすることで効果があります。

✔小学校6年生の子を持つ保護者へ、多賀一郎先生からの安心アドバイス

小学校5、6年生の思春期は、親としても少し憂鬱になります。しかし、この状態が永遠に続くわけではありません。つきものが落ちたようにすっと抜けてしまうのです。大切なのは思春期の間に子どもにダメージを残さないことです。「こんなことをしていたら、ろくな人間にならないよ」、「どうせできもしないくせに」というような言葉を子どもに浴びせないようにしてください。親子関係まで損ねてしまいます。また、信頼と対話も大切です。「この子なら、大丈夫」と、子どもの将来を信じることです。それが子どもに伝わり、子どもの背中を後押します。

参考書籍「小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本」

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「小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本」について

30年以上の現場経験を経て、全国で教員育成&保護者相談にあたる著者が、現代の小学生保護者が幸せな子育てをするために必要な知恵を伝授。読めば読むほど、子育ては「学校と一緒にできる」ということに気がつき、子育てに閉塞感を感じている人はそこから解放されていきます。新一年生の保護者はもちろん、どの学年であっても、いま心の中にある不安を解消する手立てが見つかる本です。

小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本(著/多賀一郎 定価:本体1100円+税/小学館)

「小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本」著者・多賀一郎プロフィール

多賀一郎(たが・いちろう)
追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校で指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。
多賀マークの教室日記

 

文・構成/HugKum編集部

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