小学生の我が子は、学校でちゃんと授業を受けているだろうか、真面目に学習しているだろうか、きちんと学校生活を送っているのだろうか…。保護者としては心配することもありますよね。子どもの学習態度や学習環境を整えてあげるのも親と学校の役割です。
そこで今回は、小学校における学習のしつけの基本的な考え方・椅子の座り方や文字の書き方・学習用具とその整理の仕方から、家庭学習の手引き・家庭学習の内容と時間の目安まで、前文部科学省視学官の田村学先生(現・國学院大学教授)に教えていただきました。実際に小学校で行われている学習のしつけを理解して、ご家庭でも役立ててみてください。
「学習のしつけ」の考え方と学習環境
「学習のしつけ」で「生きる力」を育む
教育には、どんなに時が流れても、変わらず大事にすべきものがあります。小学校における「学習のしつけ」もそのひとつです。子どもたちが集団の一員であることに誇りをもち、互いに認め合い、仲間として協力し合うことによって人間関係も良好になります。
そのような学級集団で学習することによって、一人ひとりの能力や個性が発揮され、豊かな「発想」「学び」が生まれる授業へと高まっていきます。また、「学習のしつけ」が共有されている環境は、子どもたちにとって安心・安全な場所であり、自主性、社会性、協調性、自制心、責任感、善悪の判断など「生きる力」としての資質を育みます。「やる気」をもって取り組むことが保障される場所となるのです。
基本的な学習のしつけ
椅子の座り方
正しい椅子の座り方であれば、子どもにとって疲れにくく、そのため集中力が持続します。ポイントを抑えれば、簡単に正しい姿勢で座ることができます。
正しい椅子の座り方のポイント
・机と体の間は、にぎりこぶしひとつ分ぐらいの間隔を取り、背筋を伸ばして腰かけましょう。
・足の裏を床につけて安定させます。足を投げ出さないようにしましょう。
文字の書き方
長時間にわたって無駄な力を入れずに書き続けたり、鉛筆の先の動かし方や字の形を確認しながら整った文字を書いたりすることができるようになります。
書くときのポイント
・利き手でない手でノートをさえ、ノートから30cm程度目を離して書きます。このとき、ひじが机につかないようにしましょう。
・本は、基本的にノートの左側に置きます。ノートが常に右側にくるように、ノートを移動させて書くようにします。(なお、左効きの子どもは、右側に本を、左側にノートを置きましょう)
鉛筆の持ち方のポイント
・手は、小さな卵を握るようにします。
・中指・薬指・小指 は軽く丸めましょう。
・指に力を入れすぎないようにしましょう。
・鉛筆が傾きすぎないように気をつけてください。
・手首を机上につけます。
・中指の第一関節で 鉛筆を受けるようにします。
学習道具とその整理
学習用具を統一したり、置く場所を決めたりすることで、次に使うとき、効率的に準備をすることができるようになります。
筆箱の中
・ 鉛筆は、5本程度筆箱に入れておきます。鉛筆には名前を書いておきましょう。
・ 鉛筆以外に、赤鉛筆(赤ペン)、消しゴム、15cmくらいの定規、フェルトペン(黒) を入れておくとよいでしょう。
・ 低学年、中学年は、3Bの鉛筆、高学年は2Bの鉛筆がおすすめです。
下敷き
・ 硬筆用ソフト下敷きなどで、無地のものがおすすめです。
・ ノートに文字を書くときは、必ず下敷きを使いましょう。
道具箱
・のり、はさみ、セロハンテープ、色鉛筆、クレヨン等を入れておき、すぐ使えるように整理しておきます。
机の中の整理(引き出しを使う)
・引き出しの左側に教科書・ノート類を時間割順に重ねておき、右側に道具箱や筆箱を置きます。
・使った教科書類は、順に下の方に入れ込むようにしましょう。
家庭学習の手引き
家庭学習を進めるときに気をつけること
家庭学習を実りあるものにし、子どもに習慣づけていくためには、家庭と学校が連携して実践することが大切です。
・ 毎日一定時間、決まった場所で、学習に取り組むようにしましょう。
・ 保護者が学習の様子を見届けるようにしてください。
・ テストや学習に関するプリント等は、しっかりとファイルさせ、その後いつでも復習しやすいように整理させておきます。
・ 子どもが集中力を高めて学習できるように、 テレビを消したり、机の上を片付けさせたりしましょう。
家庭学習の内容と時間の目安
家庭学習の時間は、あくまでも標準であり、個人差を考慮する必要がありますが、家庭学習の時間・内容は、学年に応じて次のように設定しています。参考にしてみてください。
家庭学習の主な内容
生活ノート(日記)、漢字ノート、音読、自宅学習ノート(計算、授業の復習や予習、自主課題)など、基本的には、教師が毎日の授業の復習のために、漢字の書き取りや計算のドリル学習を出します。中学年・高学年からは、子どもが自ら課題を設定して取り組む学習を増やしていきましょう。
家庭学習の時間の目安
低学年:45分程度(教師の課題45分)
中学年:60分程度(教師の課題45分+自分の課題15分)
高学年:90分程度(教師の課題45分+自分の課題45分)
子どもがやる気になる声掛け
家庭学習において、子どもへの声掛けはとても大切です。保護者は、子どもがやる気になる「3H(ほめる、はげます、ひろげる)の声掛け」をしましょう。
3H(ほめる、はげます、ひろげる)の声掛けの例
ほめる:「こんなにきれいに書けるんだね」「すごいね、◯◯さん」
はげます:「計算が速くなってきたね。この調子で 毎日続ければもっと速くなるよ」
ひろげる:「たくさんの熟語を覚えてすごいね。他にどんな熟語があるか、国語辞典で調べ てみるともっといいね」
参考書籍「各教科・領域別 考える力を育てる 学習のしつけ」
「各教科・領域別 考える力を育てる 学習のしつけ」について
創立150年近い鹿児島市立田上小学校の不易の「学習のしつけ」が、各教科・領域ごとに1冊のムックにまとまりました。いま、21世紀型学力の考える力を育てるためにも、「学習のしつけ」がもう一度見直されています。学習環境を整えることを明確に打ち出し、物的環境、人的環境、心理的環境の3つの視点から整理しています。
また「思考スキル」「見える図」を活用しながら、基本的な「学習のしつけ」「家庭学習の手引き」「学習環境」も具体的かつ効果的に、写真や図解をいれながら、一般の公立小学校でも取り組め、すぐに活用できる内容が満載です。このムックを読めば、なぜ「学習のしつけ」がいま重要なのか、より具体的にわかるでしょう。
各教科・領域別 考える力を育てる 学習のしつけ(監修・田村 学 著・編/鹿児島大学教育学部代用附属田上小学校 定価:本体1600円+税/小学館)
文・構成/HugKum編集部