もうすぐ運動会。そわそわしているご家庭も多いのではないでしょうか。
お子さんのお話だけでは、学校でどんな風に練習しているのか想像がつきにくいですよね。
筆者は、小学校教員として15年間勤めた経歴を持ち、毎年のように運動会のダンスを振りつけてきました。
この記事では、元教員が「運動会の目的」と、もっとも練習時間のかかる「ダンス」本番までのヒミツについてご紹介します。
種目は、運動会の目的に合わせて考えられている
小学校の最大の行事ともいえる運動会。学年に合わせていろいろな種目がありますが、どれも運動会の目的に沿って考えられています。学校によって多少違いがありますが、主なものをご紹介します。
体力や運動能力の向上
運動会の1番の目的は、体力・運動能力の向上です。運動会の練習期間はたくさん体を動かし、力を伸ばします。
また、子どもたちは「勝ちたい!」「上手に見せたい!」という目標をもって練習できるので、技能のポイントをどんどん習得します。
連帯感・一体感・協力
2つ目は、連帯感・一体感・協力です。「みんなで力を合わせて」のイメージです。
ダンスや玉入れ、綱引きや組体操でも、「みんなで」がキーワードになります。
日頃の成果を保護者の方に見せる
幼稚園や保育園と比べて、小学校ではお子さんの姿を見る機会が少ないですよね。運動会は、日ごろの学習の成果をおうちの方に見せる場としても機能しています。
かけっこやダンスなどの種目で活躍する姿はもちろんですが、整列するときの姿勢・友だちと協力する様子などもその1つと考えています。
運動会のダンス 学年ごとの特色
運動会ではどの学年でも、ダンス種目がありますよね。しかし、運動会のプログラムには「表現」と書かれることが多いのです。これは、小学校体育科のジャンルの1つに「表現」があり、その目的に合うものを運動会で披露しているからです。「6年生は毎年○○をやっている気がするな」と感じるのはそのためです。
ここでは、学年ごとに、運動会のダンス(表現)の特徴をご紹介します。
低学年(1・2年生)はノリよく楽しく!
低学年のダンスでは、音に合わせて体を動かすことを楽しむことがメインです。子どもたちが口ずさめるような聞きなじみのある曲や、ノリやすいポップな曲を使うことが多いです。
ポンポンやフラフープなどアイテムを使って踊ることもあります。これは、体育の活動の1つに「用具を操作する」というものがあるからです。
中学年(3・4年生)はイメージを形に
中学年では、花笠音頭・はねこ・よさこいなど日本伝統の民舞を取り入れることがあります。
また、「冒険」「忍者」などのテーマをもとにした創作表現に、体操やダンスの要素を取り入れたオリジナル演目を作ることも多いです。中学年くらいだと、自分たちで工夫することやイメージを形にすることを楽しむ傾向があるからです。
高学年(5・6年生)は学校の伝統を引き継ぐ
高学年のダンス(表現)は、各学校の伝統を引き継ぐものが多いです。例えば、ソーラン節・集団行動・地元の民舞などです。組体操は、その危険性が指摘され、現在は一人技・二人技だけの組体操や集団行動(日体大の動画で有名になった、団体で揃って歩いたり交差したりする)が増えています。
また、K-POPなどのダンスにみんなで取り組むことも増えてきました。今の子どもたちにとってダンスは身近なものとなっており、子どもたちだけで振付を考えて教え合うこともあるそうです。
運動会のダンス、学校での準備 3つのヒミツ
担任の先生たちが振付しているって本当?曲の編集は?
運動会のダンスは、毎年担任の先生たちが考えています。
マニュアルなどは特になく、完全に先生たちのセンスです。
様々な動きを習得できるように、回る・ジャンプ・友達と息を合わせるなどの要素を散りばめながら振り付けをします。
さらに、曲選びや曲の編集なども、先生が行っています。普段の授業では使わないスキルですので、先生たちもてんてこまい。
もちろん先生たちの中には、振り付けや編集に慣れていない人もたくさんいます。
そんなときは、違う学年の先生や音楽の先生に手伝ってもらったり、振り付け動画を見て子どもたちと一緒に覚えたり、音楽関係のお仕事をしている保護者の方にレクチャーしてもらったりします。
筆者は振り付けを考えるのが好きなので、多い時には3学年分の振り付けを考えたことがありました。
曲選びや振りつけには先生の個性が出るので、小学校の運動会を何度も見ているママ・パパさんの中には、「これはきっと○○先生の振りつけね!」と分かる人も出てきますよ。
校庭での練習はハプニングだらけ!
運動会の練習にはハプニングがつきものです。特に大変なのが、初めて校庭でダンスの練習をする日。
ダンスの練習をするときには、
体育館で振り付けを覚える→体育館で隊形移動を覚える→校庭で練習 という流れで進めます。
体育館だとステージがあるので振り付けを見て覚えやすいですし、声が届きやすいからです。
「振り付けは完璧!」と思っていざ校庭に出て練習してみると、それはもう大混乱です!
ひさしぶりの校庭というだけで、気持ちが開放的になり走り回る子が続出!
やっと練習できる状態になったと思ったら、立ち位置の目印が覚えられずどこに立てばいいのかわからない、マイクの声は先生と違う方向から聞こえて不思議、考えることがありすぎて“右”がどっちかわからなくなっちゃった・・・など、不安だらけな状態に…。
そんな日もありますが、1つずつ確認して、本番までにできるようにしていきます。先生たちは、この大混乱も予測して、練習計画を立てています。
子どものモチベーションを第一に考えて
運動会のダンスは、短くても3週間、長くて1カ月半くらいかけて練習します。
始めはノリノリで練習していても、練習期間が長いと途中でやる気が落ちてしまうことも。
毎日のように同じ曲を練習していたら、お子さんのモチベーションが下がるのも分かりますよね。そんなときは、かけっこの練習に力を入れて気分転換したり、他の学年の練習を見る機会を作ったりして、モチベーションのピークが本番に来るように、練習計画を立てています。
お家でも「最近やる気なくなっているのでは?」と感じる時期があるかもしれませんが、モチベーションを調整している時期と捉えて、見守ってあげましょう。
コロナ禍で運動会も変化している
ここ数年はコロナ対応で運動会も変化しています。
例えば、
・密を避けて学年ごとに実施する
・保護者の参観はなしで、動画配信にする
・お弁当はなしで、午前中だけで終わるよう種目を減らす
などが挙げられます。
また、種目の内容では、
・子ども同士の接触が多い種目は控える(組体操、騎馬戦、二人三脚など)
・ダンスの中で、ハイタッチや手をつなぐなどの振り付けは入れない
・距離感を保つために、旗やフラフープなどのアイテムを使う
というものも増えてきています。
先生の工夫を理解して家庭のフォローを大切に
今回は、小学校運動会とダンスの裏事情についてご紹介しました。
運動会のダンスは、子どもたちの発達や運動会の目的に合わせて、先生たちが作っています。練習期間にも、子どもたちの体力やモチベーションを考慮して、いろいろな工夫がされているのです。
先生の工夫や意図が少しでも分かると、親も安心ですし、家庭でのフォローもしやすくなりますね。
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文・構成/yurinako